【TEST】PURE "HEAL" FACE

【TEST】PURE "HEAL" FACE

「恋を自覚したポケモントレーナーの反応」196

【概要】このSSは「恋を自覚したポケモントレーナーの反応」スレで

196に書いた「恋を自覚したビワ」の話です。ひとまず最初の部分だけ。

【注】CP注意です。

   年齢や名前等など、もしもが大いにあります。


【決意】


ある日の13時半。

昼下がりのスター・トレーニング・センター「チーム・カーフ」のアジト。

チームを率いる「ビワ」と、その親友「タナカ」が、何やら込み入った話をしている。



ビワ(ふぅ…… トレーニング 楽しかった けど……)


ビワ(…… なんだろう 何かが 違うような……)


タナカ「どうしたの? せっかくカレと喋れたのに

浮かない顔しちゃってさー」


ビワ「な なんでもないよ……?」


タナカ「……そう? あんま思い詰めちゃダメよ なんでも言ってよね」


ビワ「うん ありがと タナカちゃん」



ビワは最近、恋を自覚した。



その相手とは、同じアカデミーに通う、11歳の少年「ハルト」。

2ヶ月前、「スターダスト大作戦」の中で、ビワが率いたチーム・カーフこと

「スター団かくとう組」にカチこみ、4度の挑戦の末にボスであるビワを倒し、

先ほどもビワとトレーニングを行った少年である。


ハルトがその時にスマホロトムで撮ったツーショット写真はビワも持っており、

とても大切にして、時折見返しては頬を赤らめている。自分よりずっと年下の

あどけない笑顔に、いつしか見事に心を射抜かれてしまった。


ビワは持ち前の優しさで、時々トレーニングをしにやってくるハルトとは

気軽に話もでき、「ハルトちゃん」と呼ぶほどに親しくなったが、まだどこか

相手が気おされているような雰囲気が漂っていて、自分でもそれに勘づき始めた。


そしてその「最大の問題」もまた、彼女は自覚していた。



ビワ(…… やっぱり 『コレ』…… だよね……)



いかついフェイスペイントである。自分を鼓舞するため、なめられないため、

端正な顔立ちと穏やかな性格にはあまりにもかけ離れた「化粧」を施してきた。


しかし体格は身の丈2メートルに迫り、幼少から格闘技に打ち込み鍛え上げられた

美しい筋肉をまとうもの。この化粧がもたらした効果は抜群であった。

遠くから見れば、まさしく鬼の形相である。



ビワ(あれから2ヶ月 もう こんなことしなくても いいんだけど……)


ビワ(なんだか 『コレ』も含めて わたし自身 なんだよね……)



その目的だったスターダスト大作戦が終わってもなお、

「この化粧をひっくるめて自分」

であると言い聞かせ続けてきた。

クラベル校長の寛容さもあり、スター団幹部の面々もSTCの運営に尽力する

代わりに、今までの変形学生服の着用をそのまま継続できていた。


もちろんビワの化粧も例外ではない。インパクトもあり、タナカと立ち上げた

プロレスサークルからイベントにエントリーするときにも一役買っていた。


しかし同時に、「鎧を脱ぐ」タイミングを失ってしまっていたのだ。

もう容姿を妬む者もいない。塗り直しも正直、かなり時間がかかる。


冷静に考えれば、四六時中このメイクありきの心持ちだと、いつかどこかで

弊害が出てしまうかもしれない。もし意中の相手と出かけるとなればなおさらだ。


このままでは、目の前で涙を見せることすらできない。元々、人の前では

涙を見せないような性格だったにせよ、好きな人の前では堂々と泣きたいものだ。

そういった面でも、素顔でいることにも慣れておかなくてはならないと思った。



ビワ(タナカちゃんも 「無理して変わる必要なんてないよ」

って言ってくれる…… でも 変わるなら 今……!)



そこで彼女は、プロレスサークルの様子を時々見に来るうえ、先生としては自分と

そこまで年齢も離れていないので、普段からとても接しやすい「キハダ先生」に

相談を持ち掛けることに。



ビワ「失礼しますっ」


キハダ「押忍っ! 直接教官室に来るとは珍しいな ビワ」


ビワ「うふふ…… ちょっと 相談があるんです……」


キハダ「どうした?」


ビワ「授業やサークルとは あんまり関係ないんですけど……」


キハダ「いいぞ 大歓迎だ」



ビワは、その躯体から溢れる威圧感とは裏腹の、たどたどしい声で

キハダに心の内を打ち明けた。



ビワ「……というわけ なんです」


キハダ「それで ずっと そのフェイスペイントを な……」


ビワ「はい……」


ビワ「わたしでも 変われるのかなって……」


キハダ「……変われるさ! そう思った時が始まりだ!」



キハダはビワの顔をまっすぐ見据え、笑って肩をバシバシと叩き、励ました。

明朗快活な性格のキハダは、悩む生徒にも全力で、それでいて根性論だけでは

済まさないように、寄り添うように接するため、校内でも人気が高い。



キハダ「そうだ わたしの幼馴染に すごく腕のいい

メイクアップアーティストがいるんだ」


ビワ「えっ 本当ですか!?」


キハダ「ああ! 日常生活でも 手軽にできるメイクなんかも

教えてくれるかもしれないぞ わたしも教えてもらったんだ」


キハダ「もちろん…… その デートのときにも バッチリ効くメイクだって……」


ビワ「わあ……!」


キハダ「どうだろう? 会ってみたくないか!?」


ビワ「会ってみたいです…… お願いします……!!」


キハダ「わたしから言っとけば だいぶまけてくれるはず……

おっと! そんな野暮な話はあとだ! この後 時間は!?」


ビワ「だ だいじょうぶです!」


キハダ「そうと決まれば 押忍っ! 『善は急げ』だ!

タクシー代は出すから ベイクタウンへ行こう!」


ビワ「先生 ありがとうございます!」


キハダ「……っと その前に 電話しとかないとな

予定詰まってるといけないからな~~…… ちょっとそこで待っててくれ!」



キハダが教官室のドアを豪快に開け放ち、外に出て「押忍っ!」の声が聞こえるや否や、

ビワの中で自ずと「腕のいいメイクアップアーティスト」の正体に行きついた。



ビワ(…… やっぱり…… 「あのひと」だよね……!?)



ベイクタウンにいて、アカデミーに入る前よく読んでいた雑誌にも出ていて、

ハッコウシティに遠征に行った時見つけた街の看板にも化粧品のモデルとして

起用されている「超有名人」。アカデミーの購買部に並ぶ本の表紙にもなった――



ビワ(サークルでも 宝探しに行ったコが ベイクタウンでキハダ先生と

エクササイズしてて…… その街のジムリーダーが っていう……)


ビワ(ええ~~ どうしよう…… すっごく有名な人だよね……)



ベイクタウンでジムリーダも務めている、メイクアップ・アーティスト

「リップ」である。

キハダとリップは幼馴染であり、親交も深い。パルデアでは2番目に強い

ジムリーダーとしても名が知れており、宝探しでのジム巡りにおける難所に

なっている。


ほどなく、教官室のドアが開かれ、ニヤリと白い歯を輝かせて嬉しそうに笑う

キハダの姿があった。



キハダ「押忍っ ばっちりOKだそうだ! まずはベイクジムに今日16時

カウンセリングからということで 話をしようかと言っていたぞ!」


ビワ「えええっ 本当ですかっ!? わたしのために……!?

リ リ リップさん…… ですよね……!?」


キハダ「ああ! 知ってるんだな!」


ビワ「有名人ですから…… というか 今日!?

すごく忙しいんじゃないんですか……?」


キハダ「教え子の頼みだって言ったら 秒で予定立ててくれたぞ

リップは ビワのように すごくストイックないい子は 好きだと思うからな!」



目の前で、1対1で、まるで自分の事のように先生が喜んでくれた。

会ったこともない自分のために、先生の友人として動いてくれる大人がいた。

嬉しさのあまり、ビワは勢いよく、全力でキハダに抱きついた。



ビワ「せ 先生……っ ウオォオオ~~……!!」


キハダ「うわあっ いて いてててて……! ちょっ わたしは 何も……!!」


ビワ「うれしい…… うれしいんです…… 先生~~っ!!」


キハダ「ぐわああっ で でも 喜んでもらえて何よりだっ」



スター団が解散に追い込まれる危機の最中で、倒されても何度もカチこんできた

ハルトはもちろん、校長がみずから立ち回って自分たちを救ってくれて以来、

他の誰かも信じてみようと考えを改めてきた。

それが今、また報われようとしている。



キハダ「さ もうすぐタクシーが来る! 行くとしようか!」


ビワ「…… でも このメイクと 制服は……!?」


キハダ「このままで行こう! 『今』のビワは……

『そのメイクも含めて丸ごと自分』だろう!?」


ビワ「…… わかります……?」


キハダ「というか リップも そのメイクで来て欲しいと言ってたぞ!

どう変わっていくのか…… リップも見てみたいそうだ」


ビワ「……はいっ!!」



ベイクタウンへ向け空を飛ぶタクシーの中で、ビワは晴れやかな表情をしていた。

キハダは眼下に広がる景色に、子供のように大喜びしている。



キハダ「おっ 見てみろっ オリーブ畑だ!」


ビワ「すごーい! いい眺めですねっ」



とはいえ、地方、いや世界的に活躍するメイクアップアーティストが、今から

自分の目の前に現れる。


自分など足下に及ばない競争……それこそ、尋常ではないイジメなども、たくさん

目の当たりにしたかもしれない。



ビワ(…… リップさん いったいどんな道を歩んできたんだろ……)


ビワ(どんなことを 教えてもらえるのかな……)


ビワ(先生は 『話してみたら面白いぞ』って 言ってたけど……)



ビワの胸の高鳴りを乗せて、タクシーはベイクタウンの上空に差し掛かる。


【つづく】



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