Side effect

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✂待機スレ12、>>127からの流れを汲んでいます。

✂特殊設定・途中から始まり途中で終わる・鰐の好感度が57より上の様な描写にご注意下さい。






やっと、という一言を呑み込んでクロコダイルはカウチソファに座り俯くキャメルの瞳を覗き込んだ。

横長の瞳孔は兄以外に見たことはない特徴だと思っていたがただ自分が相手の目などに興味が無いだけでいたかもしれないと思いいたり、すぐに他人の目などどうでも良いと思考を切り替えた。

今はまだ兄になっていないキャメルが、クロコダイル目下一番の問題なのだ。



毒の入手は砂になる事よりも簡単だったがその先が厄介だった。

キャメルは“弟”は誰よりも信用しているが“ボス”は“弟”ではない。不用意に皿を出してバレたら一人で元の世界に帰る方法を探す手段を選び二度と自分の前には現れないだろう。そんな事になったら全てが水の泡だし⋯⋯そうなった時クロコダイル自身どうなるか想像もつかなかった。

毒をどうするか。

最終的にとった手段はスマートとは程遠いものだったが上手くいったのだから問題はない。

「暇潰しにお前の話を聞かせろ」

と食事に誘い全ての皿に──勿論自分の皿にも──毒を混ぜて話を聞いていれば良かった。

自分の話をしろと言っているのに出てくる話題が別世界の自分やショコラの思い出話ばかりなのはクロコダイルを苛立ただせたがいずれ消える記憶だと聞き流すことに努めた。途中挟まる

「ボスだって兄弟がいたら楽しいと思うでしょう?」

「クロはもう私がいなくても大丈夫だって分かってはいるんだけどつい構い過ぎるというか⋯⋯ボスを見てると改めてそう感じたんだけどね」

などという話題に何かしらの反応を返さなくてはいけなかった事の方が鬱積がいつ憤懣するのか恐ろしかったろう。適当な相槌を返す男が心中砂嵐を起こしていたと知っていたら流石のキャメルも何かしらに勘づいたかもしれないが兄は身内の事にしか興味はないので他人の気持ちを推し量るなどできないししようともしない。

それをクロコダイルは、よく心得ている。

兎に角全ては上手くいきこうして治療と称しての薬物注射の段階までこぎ着けた。

この薬だってただではないどころか関わりたくもない奴と交渉しキャメルから

「え、ボスってドフラミンゴと知り合いなんだ⋯⋯? ふーん⋯⋯」

などと言われてドン引きされる被害を受けた。裁判なら精神的苦痛を理由に勝訴できるに違いない。

誰のせいだと言いたかったが誰のせいもなにも自分の為だと自分がよく理解しているので反論はしなかった。できる状況でもしないが。



「キャメル」

確認の為の呼びかけに返事は返ってこず安堵する。

暇潰しを探す静かな表情ならともかくぼんやりとしていた時などあっただろうかと自分の記憶にある兄の二十六年を掘り起こしてみたがやはり何処にも見つからず、“あちらの”クロコダイルなら見たかもしれない、という思考までおよんだところで打ち切られた。

『どうだって良い』

薬は用量を守れば副作用もないと聞いている、毒は切欠作りに過ぎないので二度と話し相手などしなくてすむだろう。週に一回いや一月に一度必要量を接種させればいい。そうして少しずつ記憶を

そこまで考えていたところにキャメルの微かな呻く声が耳に入り目線を落とす。

そっと顔を上げさせたが薬はいまだに効いている事は一目瞭然だったので手を離そうとして、

「クロ?」

クロコダイルの手が止まった。

それは今まで散々この男から発せられていた言葉とは大きく異なっていた。

初めて弟を目にした瞬間の感動、親を殺した時からの過ごした時間、暇潰しから帰って来たらお土産が無かったので不機嫌だったという的外れな印象。

それらを語る時出てくる“クロ”は決して己に向けられたものでは無かった。

この男にとって弟は世界でたった一人だけであり目の前の人間は同名異人だ。クロコダイルだって二十六歳以降の兄など存在していなかった。

今、この瞬間まで。

「なにか、あった?」

「なぜ」

返事をすればバレるのではないか、という不安を抱く前に答えていた。

昔はそうしていたからだ。

「だって。なんだか嬉しそう」

薬で前後不覚な男の言葉など大して意味を持たない。だがキャメルの弟への感情の機微はどういうわけか鋭いので当たっているのだろう。

──弟だから?

クハ、というなにかを堪える様な声を漏らしてクロコダイルは穏やかに笑う兄に応えた。

「海賊になったからには絶対に⋯⋯」

「全て奪うと決めている」 


「アニキは、ただそこにいれば良い」


兄が目覚めた後機嫌を良くする手段など弟は何通りも知っている。

まずは準備しておいたキャラメルシフォンケーキとそれに見合う酒を持ってこよう。


部屋から出ていく足取りは軽く、残りの薬剤の減りが早くなる事だけは兄弟でなくとも明確だった。

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