シロコif_いぬ

シロコif_いぬ



「はぁっ……はぁ……っ……」

『クッソ、手間ァ掛けさせやがって……どんだけやられた? なあ、おい』

『こんだけ暴れてやっと大人しくなるとか、ただの野良犬じゃねぇな』


暗くて、狭くて、埃っぽい場所。

それが、私の憶えている中で一番古い記憶。


『ま、鬼ごっこもここで終いさ。悪ぃな、嬢ちゃん』

「はぁ……っく……ぅ」

『……おっと』

「——ッ……ぁ、が……っ」


目が覚めて、よく分からない集団に追われて、無我夢中で抵抗して、逃げて、袋小路に追い詰められて。

それでも何とか逃げ出そうとして、見抜かれて、撃たれて。

隅に積まれた穴だらけのゴミ袋に倒れ込めば、異臭が中身と一緒に溢れ出た。


『オイ、あんまり怪我させるなよ。さっきまでの戦闘で、丈夫なのはイヤってほど分かったが……』

『わーってるっつーの! 手間も弾薬もかけたんだ、少しでも高く売っ払ってやらなきゃ元が取れねェ』

『……で、どこに売る? そこらのテキトーな業者でも良いが、どうせならもっと吟味してぇよな』


そいつらが何を言っているのかはよく分からなかった。

だが、このままじゃマズい。それだけは、よく分かった。

だから、隙を見て逃げようと思って、グッと足に力を込めて——


「——っ」


足元にあったゴミ袋の切れ端を踏んで、滑った。


『ッ! こいつ!』

「が、っふ……ぁ……——」


当然、見つかって。当然、対処されて。

頭に走った強い痛みと衝撃が、とどめになった。


『やれや 、油断も もあったもん ゃねェ 全く……』

『  際だ、適  ロープか何 縛っ  か』

『 手  れて   れても   ねぇ   する 』


景色も、話し声も、臭いも、全部が遠くなっていって。

私の意識は……記憶は、そこで途絶えた。



─ ─ ─ ─ ─ ─



『えーと……そうだ、まず聞かなくちゃね。君、名前は?』

「……」

『……あー、その……聞こえてる? 大丈夫?』

「……」


薄暗くて、狭くて、埃っぽくはないけど、妙な匂いのする部屋。

そこで、相変わらずよく分からない人物と二人きり。

それが、二番目に古い記憶。


『……まあ良いか。正直今の君みたいな反応になる子も多いし』

「……?」

『あ、反応があった。てことは聞こえてるね……聴力問題なし、と』

「……」


後ろ手に手枷か何かで拘束されて、首輪に繋がった鎖で引っ張られて。

連れられてきた部屋にいたのが、目の前の人物。

私を連れて来たヤツが私を椅子に座らせると、元々いた方のヤツは机を挟んで反対側に着いた。


『ここに来た子は……まあ結構な割合で訳アリでさ。君みたいに売られて来た子も少なくない』

「……」

『だから、そういう反応になるのも珍しくないってワケ……なんだけど』

「…………なに」


何かを言いたげな言葉に、思わず問い返すような言葉が漏れる。

すると、目の前のそいつは驚いた顔になった後、安心したような表情を浮かべた。


『ぅわビックリした、喋れるんだね……それもメモしなきゃ。会話は可能……と』

「……」

『いやね、ここに来る子も色々だけど、流石に君ほど経歴も何もない子はいなかったしさ』

「……」

『本当にイチから……言葉っていうものを教えるところからかも……なんて懸念も真面目にあったんだ』

「……」


眉間に皺を寄せながら、ただ黙って座っているだけの私に対して、怒りもせずにただ話を続ける。

アレコレと喋りながら時々手元の資料に書き込むソイツは、どうにも私のような存在に慣れているらしかった。


『それが杞憂だと分かったのは大きいよ。ゼロから教えるよりかは、矯正する方がまだ楽だろうし』

「……」

『……あ、そうそう。喋れるなら聞いておかなくちゃね。そういう訳で、話を戻すけど』

「……」

『……君、名前は?』


そう、問われて。

いつまでも、君、と呼ばれ続けるのも鬱陶しく思ったから。


「——シロコ」

『……ぉ』

「砂狼、シロコ……それが、私。私の分かる、私のぜんぶ」



─ ─ ─ ─ ─ ─



ゴチャゴチャとした部屋の、中央に置かれた寝台の上。

布切れみたいなペチャンコのマットしかないそこへ裸で仰向けに寝かされて、両手足と首とを拘束されて。


「っあ、ぁああ゛あ゛ぁあ゛ああ——ッ!」

『るせェな、焼き印刻むくらいで騒ぐんじゃねェよ』

「いっ、ぎ、あ、ああがああ゛ぁッ! う゛あぁあ゛ッ!」

『ほらほら、暴れんなよ犬コロ! あンまり騒ぐと、余計なとこまで焼けちまうぞー?』


下腹部に押し付けられる、赤熱した金属の熱と痛み。

申し訳程度に着けられた目隠しの布は、絞らなくても雫が滴りそうなくらいにずぶ濡れだった。


『よ、っと。どうだ、こンなもんで』

『んー……悪くないんじゃね?』

「あ゛、あ……はぁ、うぅう゛っ……ぎ、ぃいい……ッ、が、あ、は、ふーっ、ふーッ」


やっと除けられた焼き鏝が当たっていた場所を、確認するように指でなぞられる。

空気に触れるだけでも痛いのに、直接触れられる。その痛みで、拘束された四肢がビクビクと跳ねた。


『さァて、お次はっとォ……お待ちかねの耳、行きますか』

「————ッ!」

『イっちゃいますかァ! どーするどーする、ゼータクに4つ全部ヤっちゃう?』

「あ、あ、ぅあ……っ」


聞こえて来た言葉は、あまりにも恐ろしい響き。

皮膚を直接焼く痛みとは、また違うソレを想像して……あんなに熱かったお腹にさえ、寒気が走った。


『あー、ヤっても良いけどハメるモンが2つしかねェんだよなァ……』

『2つゥ? なンだよ仕方ねェな……で、デカい方? 小せェ方?』

『一つずつだよ。テキパキやろーぜ』

『あいよー……あ、そーだ折角なんだしさ! このコに聞いちゃおうぜ!』

「……っ」


相も変わらず、ずぶ濡れの布切れで覆われた視界。

その向こうで、ガチ、ガチ、と音が聞こえる。


『何、選択の自由ってヤツ? イイじゃんイーじゃん、選ばせたれ』

『そーいうコトで、さ! ねえねえお嬢ちゃん! ……どの耳に穴、増やされたい?』


怖い。恐い、こわい、コワい、怖い! イヤだ、嫌、いや!

これ以上痛くしないで! 熱いのも、痛いのも、苦しいのも、もうイヤ!


『おっとと! だァから暴れンなっつーの! ヘンな傷付いたらどーすんだ!』

『はー、ったくよォ……しゃーねェ、薬ブチこむか』

「……!」


恐怖で一杯になった頭にも、その言葉の響きは入って来た。

薬。クスリ。くすり。この部屋に来る前にも、その前にも、何度も何度も使われたモノ。

頭の中がグチャグチャになって、何も考えられなくなって。私を私でなくさせる、そういうモノ。


……いや。アレも、もうイヤ。


「ひ、ぃ……ゃ、ぃや、イヤぁ!」

『あ?』

「ヤだ、もうイヤだ! いたいのも、くすりも、もう全部いやぁ!」

『……だとさ。どーするよ』

『決まってんだろ』


『——飼い主に逆らうイヌには、躾けをしてやらなくちゃな』

「……ぁ、ああ、あ、ああああああああぁぁぁぁッ」


いやだ、ヤダ、もう嫌、いや。

おねがい。ゆるして。ごめんなさい。なんでもする、なんでもします。だから。

たすけて。



─ ─ ─ ─ ─ ─



『……』

「……」

『……百鬼夜行のこういうお店は、二度目以降の来店じゃないとキャストは喋ってくれない……とは聞くけど』

「……」

『ここも、そういうシステムなの?』

「……別に」


最初に取った客は、気のよさそうな人だった。

どれくらいかと言えば、こっちが黙ってても大して文句言わないくらい。


『ああ、そうなんだ……じゃあ、キミが特別そういう子、ってことかな』

「……」

『……みたいだね』

「…………で、するの」


知りたくもないことを、文字通りに嫌と言うほど、身体に教え込まれて。

この時の私は、気が立っていた。仮にもお客様を相手に、こんな態度をとるくらいに。


『うーん……いや、今日はシないでいいかな』

「……ぇ……?」

『嫌がる子を無理やり……っていう気分でもないしさ。出直すよ』

「…………」


ここに来て、私はあることに思い当たった。

それは、もしもこの客が、このことを店にバラしたら、ということ。

そんな簡単なことにも気付かないくらい、私はいっぱいいっぱいだったということでもあるのだけど。


でも、気付いてしまった。

お客様が私に酷いことをしなくても、店側はそうじゃないということを。

となれば、次に考えるのは——もしそうなったら、何をされるかということ。


『そうだねえ、予定だと次に来られそうなのが……』

「——待って」

『うん?』

「待って、ください……」


熱い。痛い。苦しい。重い。痛い。気持ち悪い。痛い。痛い。不味い。痛い。痛い。痛い。痛い——

身体が覚えさせられた経験が、来るとも限らない未来を想像させて、精神を蝕んで。

私が何かを考える暇さえなく、私の意思を介さず、私の口は言葉を発していた。


「何でも、します。言われたことは、何でも……だから、だから……」

『……』

「……私、を。使って、ください……」

『…………そこまで言うなら、そうしようか』



─ ─ ─ ─ ─ ─



「……最初に相手した時のこと?」

「……ん、憶えてるよ。あの時のことは、特別だから」


お客様に問われて、思い出してみる。

忘れる筈もない、あの時のことを。


「色々拙かったし、素直じゃなかったし……正直、今思い返しても恥ずかしい」

「でも、どうしてお店に言わなかったの? 私、粗相ばっかりだったと思うけど」


反対に問うてみれば、朗らかな笑いが帰って来た。

——終わってみれば、満足だったから。ああ、その言葉を聞けて良かった。

安堵と一緒に、仄暗い熱が、広がっていく。


「あの時は、ごめんなさい」


言いながら、口付けをしていく。

唇に、頬に、首筋に、胸に、お腹に、腰に、そして——


「ん……ちゅ、ぅん……ぷは……っ」

「……今日も、素敵……❤」


私の頭に、手が置かれる——また、使ってもらえる。


「あの時のぶんまで、沢山、使ってください——❤」



------



「んっ❤ ちゅう、んむ、ぅ……❤ はぁ、あ、む❤ ふーっ、んぅ❤」

「ふーっ❤ ふーっ❤ ぷは、はぁ❤ はぁ……っ❤ ん、どろどろ……❤」


薄暗い部屋に鎮座する、大きくて柔らかなベッドの縁。

そこに座ったお客様の足の間に潜り込むように跪いて、夢中になってご奉仕をする。


「ん❤ そう、今の私は……シロは、あなたの犬だから……っ❤」

「こうやって……っ❤ はぁ、あぁ、んむっ❤ ん、ちゅぅ❤ ぇ、るぅ……っ❤」


首輪を嵌められて、ただ一心に、飼い主に褒めてもらいたいと媚びる、一匹の犬。

首輪を嵌められて、ただそれだけなのに、逃げるなんて考えもしない、一匹の牝。


「ふぅ❤ ん、うぅ、む❤ ちゅ、ん、はぁ❤ ふーっ❤ んぅ、うううっ❤」

「ぁう、頭、撫でてもらうの、すき……❤ ん、もっろ、がんばるから……ぁむ❤ ん❤」


ご奉仕の最中に、頭に置かれた手でゆっくりと撫でつけられる。

その動きが時々ぎこちなくなったり、微かなうめき声が聞こえたり。

その度に私のお腹の奥が、何かを求めるように、切なく、熱くなる。


「ふぅっ❤ ん、ちゅぅっ❤ んむ、ぅう……ぷはぁっ……❤ ん、準備できた……❤」

「それじゃ、今度は……私の番……❤」


熱く火照る体をゆっくり動かして、サイドテーブルから、小瓶とふわふわしたモノとを手に取る。

それは、お薬の瓶とテイルプラグ。

脳みそまでイヌになって気持ちよくなるためのとっておきと、注がれたものを溢れないようにする蓋だ。


「ふーっ❤ ふーっ❤ ……ん、ぅ……❤ もう、準備、できちゃってる、けど……❤」

「でも、最後は……ぁ❤ ……ふぅ、仕上げは、シてもらいたい、から……❤」


それをお客様に手渡しながら、そっとベッドに上がって。お客様に背を向けるように、ぺたんと座る。

そのまま上半身を前に倒して四つん這いになって、少しだけ腰を持ち上げる。


「あ、ぁんっ……ふーっ❤ ふぅ、んん……❤ 見えちゃってる、見せちゃってる❤ 私の、ぜんぶ……❤」

「はやく、欲しくて……ぇ❤ ひくひくして、トロトロな、わたしの……はずかしい、ところまで……❤」


ゆるゆると腰を左右に振る。それは期待に満ちた挑発であり、慈悲を求める懇願だった。

そして——縁に指が添えられて、次いで冷たい感触が宛がわれる。


「……ぁ、は❤」


直後。部屋に響き渡った嬌声と共に、私と『お客様』は、『雌犬』と『ご主人』になった。



------



——シロ、と呼ぶ声が、荒い息遣いと一緒に後ろから聞こえる。

強く肉に打ち付けられる音。それに合わせて響く粘っこい水音。

その合間に、何度も。何度も、何度も、繰り返し、確かめるように。


「はーっ❤ はーっ❤ ぁ、うんっ❤ ご主、人っ❤ ごしゅじん❤」

「しろは、ここれす❤ ここに、ぃっ❤ あっ❤ ごしゅじん、の❤ ひゅご、ぃい……っ❤」


嵌められた首輪を引かれて、伏せていた上体が起こされる。

背中が反って、腰が浮いて。より深く、強く、『ご主人』を、身体の奥で感じる。


「しろは、ぁ❤ ごひゅじんの、シロは❤ ぁん、ぐぅう……❤ ここに、いまひゅぅ❤」

「おっ❤ ぉく、つよぃ❤ つよい、れす❤ イっ……ぐ、あ、はぁっ❤ もっと、もっろ❤」


背筋を駆け上がる、痺れるような快楽。成すすべなく、されるが侭に、ぶつけられる肉欲。

薬でモヤのかかった『私』の脳髄が、もっと強いモノたちによって灼かれ蕩かされていく。


「あぁっ、は、ぁ❤ はぃ、きひゅ……ん、ちゅ、んぅうっ❤ ぷは、ぁんむ、ぅ❤」

「ん、ちゅ❤ むぅ❤ んっ❤ んっ❤ んぅ❤ ふぅ❤ ふーっ❤ ふーっ、ん❤」


私の全部を蹂躙するような動きに、歓喜と快楽で全身が震える。

どうしようもない発情に沈んだ私の中の牝が、ソレを感じ取った。


「あ❤ ぁはっ❤ はい❤ は、ぃいっ❤ しめ、ますっ❤ ひめま、ひゅ、ぅうっ❤」

「がんばぃ、まひゅ❤ らから、ぁ❤ ごほうび❤ ごほーび、くらひゃっ❤ っあ、ぐぅ❤」


今にもトびそうな意識を集中させて、抜けてしまった力を精一杯こめて。

上手く回らない口で、ご褒美を懇願すれば。

メスを屈服させようと、一層力強く、激しさを増したその動きが、答えだった。


「くら、さぃ❤ シロの❤ いちばん、らいじなっ、ところ、に、ぃ❤ ごほう、びぃっ❤」

「ごひゅじん❤ せんよぉっ❤ ら、って❤ きざみ、つけて❤ ぉぼえ、させへ……っ❤」


そうして、また一つ。


「ぁっ❤ アっ❤ くる❤ くる、くる、きちゃ、ぁ❤ いっしょ❤ いっひょ、に……ぃ❤」

「いく❤ ィく❤ イぐっ❤ ィくイくイくイぐイ゛っ、ぐ、ぅ゛う゛う゛う゛————ッ❤」


『私』の中の何かが、塗り潰された。



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「はぁっ……はぁ……はぁ……❤」

「はーっ……ふぅ、んぅ❤ ……はぁ、ん……っ❤」


身体全体を揺するようにしながら、荒い呼吸を繰り返す。

自然、交わっていた部分は再び擦れ、熱を持ち……鎮まりかけた牝の情欲を、煽っていく。


「ぁん……❤ ん、ぅ、ちゅ、ちゅぷ……❤ ぁ、ん、ちゅっ❤ ちゅぅ……❤」

「ぅん、ん、んー❤ ん、ちゅ……ぷ、はぁっ……❤ あぃがとう、ごぁいまふ……❤」


深く教え込まれた"教育"の成果か、少女の開花させた本能の昂りか。

無意識下で行われた、静かでねちっこい『ご奉仕』は、しかし相手を焚きつけるには十分すぎた。


「ふぅっ❤ く、ぁ、はぁ……っ❤ わたしの、なかれぇ❤ また、かっこ、よく……ぅ❤」

「はーっ❤ はーっ……く、ふぅーっ❤ ……ふーっ❤ ひゅごい❤ ひゅごい、れす、んぅっ❤」


銃と友の手を握る筈だった手はお客様の体を這い、世界を思うまま駆ける筈だった足は鎖に繋がれて。

無垢だった銀色の狼は、砂と誇りではなく薬と情欲に塗れて、白濁に染まった犬になった。


「んんぅ……ふぅ、ん……ぁれ、ご主人……私の、くびわ……?」

「……ぇ? ……外に、興味はないか、って?」


得る筈だった仲間たちと一緒に、青空の下で、春を謳歌する。その筈だった。

そうして、この犬は今、そのチャンスを目の前にぶら下げられた。

心優しい『ご主人』が、檻の扉を開いてくれようとしている。


「…………」


「……ん、別に、ないかな」


——それでも。一度徹底的に躾けられた犬は、それ以外の生き方を選べない。


「私の憶えてる、ほんの少しの、外の思い出は……暗くて、狭くて、埃っぽくて、痛くて、苦しくて、辛いばかり」

「暗くて狭いのは、ここも同じだけど……ここなら、『ご主人』がいるから」

「たくさん躾けて、甘えさせて、思い出をくれる、すてきなご主人が……」

「そうでしょ? ご主人……❤ ん、ちゅ……っ❤」


枷を外されてなお、犬は主人の傍を離れない——離れられない。

媚びて、甘えて、餌をもらう。それ以外の生き方を、ぜんぶ忘れてしまったから。


「ん、でも……首輪が外されちゃったら、もう『ご主人』じゃないのかな?」

「それなら……いつもの呼び方に、する……?」


ゆっくりと、しなだれかかる。柔らかく温かな牝の、発情しきって火照る肢体を、押し付ける。

途端、ムクムクと膨らんでいく欲望に、頭の先まで蕩けた雌犬が、淫らに微笑んだ。


「いつも思うけど、本当にいいの? もっとカッコいい呼び方じゃなくて……」

「……っあ❤ ん……っ❤ ふーっ❤ ……はい、わかりました……ぁ❤」


「それじゃ——」


「あなたのシロを、たくさん可愛がってくださいね——


 ——『おじさん』❤」






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