Sesquihoral.

Sesquihoral.

#宇沢レイサ #メイド概念

 しんと静まり返った夜を月明かりが照らす。レイサが昼間に手入れした庭木は夜露に濡れ、白白とした光を照り返していた。

 そんな、ところどころ煌めく夜景を窓から臨む宇沢レイサの主人は薄手のランジェリーに身を包み、鼻歌を歌いながらナイトティーで唇を湿らせていた。

 しばらくして寝室のドアがノックされる。入室してもよろしいでしょうか、と僅かばかりに張り詰めた声音がドア一枚隔てた向こうから主人の耳に届いた。



 天蓋付きのベッドに薄手のランジェリーを着た少女が深く腰を掛ける。ドアの前で姿勢よく佇むメイドに目をやると軽く足を開いてその合間を手でポンポンと叩き、そこに座るように促した。

 メイドはその幼い顔立ちには少々不釣り合いなセパレートの改造メイド服を着させられている。上着は鎖骨を隠す程度でしかなく、胸は黒い三角のビキニで胸の膨らみを3割程度を隠すばかり。スカートはエプロンの刺繍が施され、屈めば臀部が顕になってしまうであろうほど極端に短い。残りは形ばかりのカフスと薄桃色と薄青色の縞ニーソであり、15歳の少女が着るには過激な代物である。

 指示のまま主人の前に座るレイサ。スカートで覆いきれない臀部の肉が、主人の太腿にピタリと密着する。

「さあ、今日はどんなご奉仕をしたのかしら」

 浮ついた声で主人が尋ねる。

 同時に、レイサの桜色の突起がビキニの上からカリカリと焦らすように主人の指先で慰められる。甘い刺激に「んっ……んっ……」と切ない声を漏らすレイサは快感に震えながら口を開いた。

「は……ぃ。ほ、本日は、あっ……杏山っ……」

「キャスパリーグ」

 楽しげな声は怒気を含んだ低いものに変わり、胸から離れた手は左手を握りしめ下腹部に添えられる。残った右手は握り拳を包み、背後から抱きしめるようにして宇沢レイサの下腹部に押し込まれる。

 ぐり……ごり……。腹部に沈み込む拳はその形に子宮を歪ませ、耐え難い重苦しい快感がレイサの脳に響く。

「おぐ……ぅ……っ♡申し訳っ、ござっい゛ませ゛ん……♡」

 ぐるりと一瞬白目を剥いたレイサは全身を小さく跳ねさせながら謝罪する。

 殴られても痛めつけられても表情一つ変えない、完璧なメイドとして躾けられた彼女だが、こと快楽責めに関しては、むしろ何一つとして我慢できないように丹念に丁寧に念入りに開発されていた。

 “お叱り”の最中であるというのにカチカチと奥歯を鳴らし顔を赤らめながら悦楽に浸っているのが何よりの証拠である。

「次やったら女の子で居られなくしてあげるから」

「はひっ♡すみまっ……!?」

 最後のおまけと言わんばかりに握り拳が離れる瞬間、ごりっと腹を抉られる。間の抜けた声を上げながらレイサはあえなく絶頂した。

「んお゛っ……?ほぉ゛ぉ゛ぅ゛ぅ゛〜〜ッッ♡♡」

 舌を出しながら押し絞るように喘ぐ品のないレイサ。その表情を背後から見ることは叶わないはずだが、密着させた皮膚から伝わる痙攣が主人の支配欲を充分に満たしていた。

 気をよくした主人はまたレイサの胸元に手を伸ばし、先の質問を繰り返す。

「それで?どんなご奉仕をしたのかしら」

 じっとりと汗ばみ始めたレイサのうなじに舌が這わされる。かりかり、さわさわと乳首が弄ばれる。

「はぁっん……んぁっ……。……はい、本日は、キャスパリーグとっ……んっ、メイク用品を買い……その後、お化粧のお手伝いをっ……ぉ、おおっ……んっ♡致し、ましたぁっ……あっ♡摘まんじゃッ……はぁうっ……!ぁ、イクゥ……ッ♡」

 ただの悪戯か、それとも嫉妬心か。後半に行くにつれて激しくなる乳首責め。最後にはきゅっと凝り固まった乳首を摘まれたレイサは甘イキしながら報告を完遂させる。

「へえ、あの子、顔立ちは整っているものね。結構楽しかったんじゃない?」

「え、と……その、はぁっ……んっ」

「ん?ああ、正直に答えていいわよ?」

「楽しかった……です。……んっ?!やっ!あっ、あっあっあんっ♡♡激しッ、ちくびやぁッ♡♡らめっ……っっっ〜〜〜!!♡♡♡♡」

「へぇー、そっかぁ、楽しかったんだー」

 少し怒りを孕んだような声音の主人に、こしゅこしゅと先ほどよりも更に激しくレイサの乳首が扱きあげられる。

 泳ぐのには向いていない、滑らかなビキニの布に乳首を擦られればレイサは簡単に達してしまう。

 主人は更に続けた。

「そうだ、キャスパリーグと私、どっちが美人だと思う?私も結構自信あるのよ」

「それはっ……もちろん」

 早口で答えようとするレイサの口元にピタッと指が添えられる。

 されるがままに黙ったのを見てから、主人はレイサの髪をかきあげ唇を耳元に寄せ──

「比べ物にならねーよこのブス、と言いなさい」

 そう囁いて命令をした。

「あっ……えっ、あっ……」

 主人の命令は守らなければならない。

 主人を罵倒すればお仕置きが待っている。

 片や守らなければならない絶対の義務。片や自身に降り注ぐ災難への恐怖心。どちらを選ぶかは従順なメイドである宇沢レイサにとってそう難しくない問題であった。

 ……言えば何をされるかわからない。それでも、私はメイドだからと喉の奥に詰まりそうな言葉をレイサは必死で振り絞った。

「くっ、比べ物にっ……ならねーよ、このブスっ……!」

 言った。言ってしまった。

 この後を考え、胃が冷たくなり指先が痺れ額と頬から血の気が引くのを感じる。

「へぇ~~、そんなこと言うんだ。女の子で居られなくするって言ったのに。お馬鹿な子」

 ニタリと悪辣な笑みを浮かべた主人は、レイサの髪を掴みベッドに引き倒す。

 そしてレイサのヘイローの写しであるイヤリングをプツリと外して下腹部に投げ置き、両手首を押さえつけ、イヤリングを子宮ごと押し潰すように膝でのしかかった。

 ぐにゃり、と、筋肉でできた生殖器は簡単に形を変える。ゴリゴリ、グリグリと膝頭の動きに合わせて歪まされる。

「ゔぁ゛っ!はぎゅっ……ぅ゛……ん゛ぉっ♡♡……ほぉ゛っ♡♡♡おやめ゛っ、くださいっ!……こわ゛れっ、こわれちゃいます゛っ……♡♡おな゛かぁっ!……ばかになる゛ぅ゛っ……♡ごじひを゛!おゆるじっ……!あぎゅぅっ……?!♡♡だめっ!だめだめだめ゛ぇっ!!♡♡お゛ゆ゛る゛し゛く゛た゛さ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!♡♡♡♡」

「口の悪いっ!メイドはっ!こうやってぇ……!躾けてっ!あげないとっ!」

 過ぎた快感は拷問に等しい。忍耐不可能な快楽を調教された身体に叩き込まれ、そしてヘイローから直接快感を流し込まれる。

 喉が裂けるほどの嬌声上げ、干涸びるほどの体液を上から下から零し、溢れ、噴き出しては、絶頂の波から降りることを許されない。

 ヘイローには幾つものノイズが走り今にも消えかけで、宇沢レイサという存在の限界をすでに超過していることは明白であった。

「ごめんなさい゛ッ♡♡ごめんなさい゛ッ♡♡もゔいぎだぐありません゛ッッ♡♡♡こわ゛い゛!!♡♡♡こわ゛い゛でずっっっ!!!♡♡おがじぐな゛る゛!あがぢゃんのお゛へや゛ぁ゛!♡♡おかしぐなるの゛ぉ゛ぉ゛ッッ!!♡♡♡♡♡」

 おかしくしてやっているんだ、何が悪い。目を白黒させ壊れたオートマタのように全身を痙攣させるレイサに、主人が尚も責め続けようとした瞬間、ピシリとヘイローにヒビが入り砕け始める。

 その様子にはたと冷静になった主人は早々に行為を止めた。

「おおっ……と、しまった。危ない危ない……腹上死させちゃうところだったわね」

「ゼヒューーー……ゼヒューーー……」

 浅い呼吸を繰り返すレイサは目も虚ろで、顔は涙と汗と唾液に塗れ、下半身はスカートが潮と愛液でぐしょぐしょに濡れそぼり、頭上のチカチカとヘイローを明滅させている。

 あどけない少女を責め抜いた主人はその様相を見てクツクツと笑む。その笑みをぼんやりと視界の端に捉えながら、宇沢レイサのヘイローの光が、ふっ、と失われた。


「ん、んん……」

 星型のヘイローが灯る。一眠りしたせいかヒビは無くなっていた。

 意識を取り戻したレイサが眼を開くと目の前に主人の端正な顔が。

「あら、起きちゃった?」

「こっ、これは一体……!?」

 慌てて身体を起こそうとしたレイサは、自身が主人用の大きなベッドの上で横になり、ふかふかの羽毛布団を被っていることに気づきさらに困惑する。

「添い寝よ添い寝。たまには、ね?」

「そんな!しっ、使用人がご主人様と同じ寝具で眠るなど……!」

「いいから、寝なさい」

「し、しかし……」

「わかったわかった、じゃ命令。私が眠るまで添い寝すること」

「わかり……ました」

「ん、よし」

 メイドは命令に従わなくてはならない。

 それがどんなに理不尽でも、どんなに嫌なことでも、どんなに無理難題であろうと。命令を遂行し、ご主人様を満足させることこそがメイドの喜び。

 レイサは、満足そうに瞳を閉じる主人を見て自身に言い聞かせる。



 冷たい月光が窓枠を床に映し、肉欲と支配欲に染まっていたはずの部屋はしんと静まり返っている。

 葉末にしがみつく夜露がすげない風に攫われる。

 そんな風の音よりも静かな主人の寝息を聞きながら、レイサもまた眠りに落ちるのだった。

Report Page