SS

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 ※ 娘ちゃん視点のSSだよ。
















 ふと目が覚めた。しかし、窓の外はまだ暗い。重たい瞼を擦ると机に向かっている母が見えた。月明りに照らされた母の後ろ姿はどこまでも美しい。その時、彼女の白く細い手が一枚の紙を持っているのに気付く。誰かの顔が映っているように見える。


「・・・・・・ママ?」


 ベッドから這い出て母に声を掛けると、気付いた彼女は慌てて紙をサイドチェストの引き出しに仕舞い込んだ。


「ど、どうしたの!?起きちゃったの・・・!?」


母は明らかに狼狽えている。


「なに・・・してたの?」

「何でもないの・・・さあ、ベッドに戻って・・・」


母はこちらに歩み寄るとそう促した。母に添い寝をしてもらい眠りに着いたが、先程の紙切れが妙に気になって仕方がなかった。


案の定しばらくしてまた目が覚めた。隣を見やると母はぐっすり眠っている。母を起こさないようベッドから這い出て降りると、そっとサイドチェストに向かう。


そして好奇心の赴くままに引き出しを開けた。現れた紙切れを頼りない手付きで取って眺める。先程見た通り、それはやはり顔写真だった。


けれども写っていたのは今まで見たことのない男性だった。少なくともアラバスタにはいない人だろうと直感的に思った。


「だれ・・・このおじさん・・・」


自分と同じ黒色の髪と鋭い目つきを持ち、顔には痛々しい傷がついている。(心なしか、彼の目はいつも持ち歩いているバナナワニのそれに似ている気がした)


口には一本の葉巻を咥えていた。(王宮にこれを愛用している者はいないが、街に遊びに行った時たまに見かけた)写真の下には数字が記載されているものの幼い頭にその意味はわからない。


紙を小さな手で握り締めたまましばらく見つめていた。恐ろしい顔付きなのにずっと見ていたいと思わせる何かがこの男性にはあった。





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