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カタクリの仕事部屋の長椅子で待ちくたびれたてうたた寝をしているシドを見ると、何やら口がむにゅむにゅと動いている。
その姿が小さな子供の寝姿のようで、ゾーラは乳を飲み育つ種族でないが人の子供と同じようなことをするのだなと感心しつつ蠢く唇に指を近付けるとパクリと食まれた。
シドの鋭い牙で噛まれれば流石にただでは済まない、僅かに緊張したが指先に感じたのは痛みではなくシドの温度の低い舌だった。
舌は口の中の指を招き入れるように舐め、絡み、擦り付けられる。その動きに答えるように舌を指の腹で擦ってやると唾液が溢れ指ごと吸われた。
しばらく口内の動きと温度を楽しんでいたがシドが身動ぎをしたのと同時に指を抜く。
「おはよう、シド」
「んー……かたくり?」
「そうだ、待たせてしまって悪かったな」
「ふああああぁ、いつのまにか寝てたゾ…」
大きく欠伸をし伸びをするシドの唇はカタクリの悪戯によって濡れている、てらてらと光るそれにむしゃぶりつきたい欲求を抑えながらカタクリは何でもないように横に座った。
「退屈していたか」
「んー…いや…、カタクリの横顔を見ているのは好きだゾ?」
可愛いことを言うシドがふと自分の唇に触れた、悪戯がバレたかと内心でぎくりとするカタクリを見つめたシドが薄らと頬を染める。
「夢の中でカタクリと口付けをしていたんだゾ…いっぱい舌を絡めて、顎が疲れるくらいに…」
まだ夢現なのかぼんやりした顔のシドの舌が唇を舐め潤す。
その様がなんとも美味そうに艶めいて見えて、カタクリは正夢にしてやろうと顔を寄せた。