SS これは業務契約

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「次の休みにデートするぞ」

自主練の後の大胸筋へのペアストレッチの為に背後に回り腕を引っ張りながら凪に声をかけた。

声は上ずっていなかっただろうか、激しく脈打つ心臓の音が聞こえないようにと祈りながら返事を待つ。

「…りょーかい…」

感情の起伏が読み取りにくいトーンで凪は答えた。こっちからもどんな表情で言ってるのか読み取れないから、そこにどんな感情があるのか正確にはわからない。でも少し弾んでいるような、そんな気はする。

何故こんなタイミングでデートに誘ったのか、いや、デートなんて茶化して言ったが実際デートと言っていいのかわからない。

明け透けに言ってしまえばヤる準備ができたからその遠回しな誘い文句だ。

別に俺と凪は恋人関係ではない。そんな関係ではないのだから体を繋げるのは可笑しいことなのだろう。

けれどそれをする必要があるのだ。

そう、全てはこの天才を繋ぎ止める為に。

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世の中はギブ&テイク。こちらの望むものとあちらの望むものの等価交換で結ばれる関係。食欲だったり、アイドルとの交流だったりわかりやすいもので他の部員達は頑張ってくれている。

それに対して何も要求せずに居残り練習にまで付き合ってくれている凪。

まぁ色々と世話はしているけど、これでは釣り合っていないと思った。

だから…

「なぁ、凪なんかしてほしいこととか欲しいものとかないか?叶えられる範囲でだけど…」

おぶった凪の方を振り返ったその時、唇に触れた柔らかい感触と驚きに揺れる利休色。

「あっごめん」

意図したわけではない、アクシデントで生まれた口付けに反射的に謝る。

凪はパチリパチリと瞬きを数回行うと

「んー」

眠たげに瞳を閉じて気にしてないと言うように首筋に顔を埋めてきた。

「じ、事故だからな、ノーカンだ、ノーカン」

ファーストキスが事故とかお互い嫌だろ?凪が初めてかは知んないけど。

早口で捲し立てる俺と対照的に凪はのんびりと

「ねぇレオ、レオリムジンは廃業?」

なんて聞いてきた。

全く気にしてないようで、こいつの思考回路本当に独特だ。

「お前が気にしてないなら、廃業しねぇけど…」

「そう…良かった」

おんぶしてもらえない方が接触事故より不本意らしい。まじで面白いヤツ。

「やっぱ、お前といると楽しいわ」

事故ちゅーの衝撃も凪のマイペースさに霧散していく。



おんぶで運んできた凪をベンチに下ろす。ロッカーからタオルを取り出すと凪の頭をわしゃわしゃと拭いてやる。

「うにゃ」っとあがる鳴き声に楽しくなって、もっとわしゃわしゃとタオルを動かしてやる。

満足するまで髪をかき混ぜて、

「体は自分で拭けよ」

と手を離すと身支度を整えるために凪に背を向けた。

「レオ」

「ん~?」

「さっき、してほしいことないかって」

「おー、なんかある?」

上を脱いで畳みながら続きを促す。

「してほしいこと、って言うか…シたいと言うか」

「うん?なんかやってみたいことあんの?」

この面倒くさがりがしたいことってなんだろう?

興味が勝り振り返ると艶めいたラブラドライトの光に射抜かれた。

これは駄目だと警鐘を鳴らすかのように鼓動が速くなる。

「やってみたいっていうかヤりたい?」

いつの間にか口の中に溜まっていた唾液を飲み込む。嚥下する音がやけに響く。

「ヤりたいって…何を」

緊張か不安か細くなる呼吸に気が付かないふりをして言葉を紡ぐ。

「ん~えっちぃコト?」

こてんと可愛らしく傾けられる首とは対照的に瞳は獲物を狙う猛禽類のソレだ。僅かでも隙を見せたらなら儚く命を散らされる。

普段湖面のように凪いだ瞳が揺らめいていることに腹の底に熱が灯る。

「あー、女の子紹介してほしいってこと?」

「なんでそうなるの?」

玲王以外って…面倒でしょなんて溜め息と一緒に紡がれる言葉に仄かな優越感。

勘違いだろうけど、後腐れのない面倒じゃない相手を求めてるだけなんだろうけど、それでも求められることが嬉しくて、こいつを繋ぎ止めるためにこの身を差し出すことが対価になるのならば、それは安いものなんじゃないかって都合の良い言い訳を自分に施して、

「わかった、直ぐには無理だから準備ができたら…な」

そう答えていた。

それを許してしまえるほどに俺は凪に惹かれていたんだ。

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そういうわけで、デートの約束を取り付け、折角だから一日中原宿を引っ張り回し、着替えも購入して、現在ホテルにいる。

ラブホではなく普通のホテルにそういうことするための諸々を宅配で送るなど、金とコネ使えるものは使ったわけだ。

「ここ結構夜景が良く見えるところでさー」

正直緊張していてそれをごまかすようにカーテンを開いて見せたり、お湯をわかしてみたり、買った荷物を片付けたりと忙しなく動いていたのだがとうの凪はというと…

引っ張り回しすぎたせいか、ぐたーと仰向けでベッドの上に溶けていた。

もうこのまま寝てしまうかもしれない、目的は果たせないけれど、凪が今そういうつもりなのかわからないし、それならそれでいいか。それでもシャワーくらいは浴びせて、着替えてから寝せた方がいいそう考えて凪の横に腰を下ろして

「なぁぎ、寝るなら風呂入ってからにしろよー」

起こそうと肩を叩いたその時、腕を引っ張られて抱き締められていた。

「凪くーん?寝ぼけてますか?せめて着替えはしようなー」

もう眠たいのだろうと決めつけて完全に気が抜けていた。

気が付くと上下が逆転していて、視界には凪だけが映っていた。

「あっ…」

「やっとこっちにきてくれた、ねぇ」

そういうつもりで良いんだよね?と耳に注がれる甘い毒。

自分を映し出す瞳に吸い込まれてしまいそうな、全てを明け渡し委ねてしまいたくなるような浮遊感、流されてしまいそうな意識をすんでのところで繋ぎ止める。

「待て、まだ準備が終わってない、それが済んでから、俺の方が時間かかるから先に入ってこい」

「はーい」

ロマンチックな雰囲気より確実にことをなす方が大事だ。

凪を風呂へ追いやると必要な道具を取り出してどこに置くのが使いやすいのかあれこれ悩むのだった。

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あのまま勢いでヤっていた方が良かったかもしれない。

後悔先に立たず、後の祭り。とどのつまり羞恥で死にそうだ。でも、もしもの惨劇を考えるとちゃんと準備はしておきたかった。

けど、ここからどう持っていくのが正解なのか分からず浴室から出られないでいる。

バスローブのみ身に付けた状態でこっそり様子をうかがうと、同じ格好で凪はぼーっと、

ベッドに腰かけて夜景を眺めている。

てっきりスマホゲームをしてると思ってたのに、そうしないで待ってる。

そんなことで頬に熱が溜まっていく。

好きってこういうことなんだろうな、愛しくて、愛しくてたまらない。

今のタイミングならと足早にベッドまで移動し凪の横に座る。

頬に手を添え、何か言われる前に先手必勝とばかりに口づける。

ちゅっちゅっとリップ音をたてながら何度も啄む。

薄い皮膚同士がくっつくとそこからひとつになれるように錯覚する、もっともっと溶けて混ざり合ってしまいたい。

より強く深く触れあいたくて膝の上に乗り上げて、首の後ろへ手を回す。

舌先で唇の裂け目をなぞり、ゆっくりと差し込んで、鬼さんこちらと誘うように浅いところを行ったり来たりしてみせれば、挟み込まれて捕まった。

「んっふぅん…ちゅっ…ちゅっ…ふ っ」

「…ん…はっ…ん…ちゅ…」

「ちゅっんむ…ふぅんぁちゅっ…ん 」

「ちゅっ…ぢゅっちゅっ… 」

引きずり込まれた舌が飴玉を転がすかのように弄ばれ、パウチのゼリー飲料のように吸われ、食まれる。

「んちゅっ…ちゅっ…ふ 」

「ちゅ…んっんんんむぅ…ぅ んっぅ…んんんむぅちゅ… んっ」

口内に舌が捩じ込まれ好き勝手に中を探られる頭を引いて逃げようにもいつの間のか後頭部に手が置かれ、逃げられない。

酸素が回らず思考に霞がかかりうまく体が動かせない。

弾む感覚にベッドの上に転がされたことに気が付く。

「はぁふっ…はぁっ… 」

「…はぁっはぁ…」

呼吸のために離れていく唇。つぅっと伸びた銀糸がぷつりと切れて、重力に従い落ちてくる。

自分を映す普段は退屈透き通ったダイヤモンドの中に欲の色を見つける。まるで光や温度で色が変わるカメレオンダイヤのようだと見惚れていると

「ひぃぁ…やっ…あっ 」

「考え事?」

気が付けばバスローブ結び目は解かれ弛く勃ち上がった自身が凪の手の中にあり、ゆるゆると扱かれていた。

「やぁ…んぁまっなぎっまって…… 」

自分の意思ではコントロールできない一方的に与えられる快楽に怖じ気が走る。

「んー、もうちょっと頑張って、どのくらいになったら見つけやすくなるっていうのは書いてなかったから」

「…あっんはぁんんぅ…うぁあっあっあっ… はぁんんぅ…うぁ…あっんあっ…あっあっ 」

見つけやすい?何が?と聞く余裕もなく

ぬちゃぬちゃと自らが分泌している体液が奏でる卑猥な音と堪えられない嬌声に顔が熱くなる。

「んーむーふぅんーむんーっんふっ 」

せめてもと口を塞いでみるも

「もう良いかな?」

と中途半端なところで止められてしまった。

「…にゃ…ぎ…?」

中途半端なところで止められて苦しい、呂律が回らなくなっているが何を考えているのかわからない相棒に縋るように視線を向けると

とぷとぷとローションを手指に纏わせていた。

ぬらぬらと光り糸を引く手にこれから自分の身に何が起こるのかをまざまざと見せつけられる。

「先にこれいれた方が良いのかな」

プチっと音がやけに響く。注入用の使いきりタイプのローションの管の部分が中にゆっくりと入ってくる。

「ひっ」

ぶちゅっと勢い良く中にローションが広がる。

「後ろ向いて四つん這いなれる?その方が入れやすいみたいだから」

「わかった」

凪がやりやすいならと背中をみせベッドに手をつく。

「触るね?」

バスローブを捲り上げ声かけ共にゆっくりと尻たぶが割り開かれる。

自分でも見ることの無い窄まりを凝視されている…恥ずかしさに顔どころか全身から火が出るんじゃないか、羞恥心で死ねる気がした。

「レオ真っ赤かわいいね」

ぬるぬるとした指が菊座の皺をなぞりやわやわと揉む。丹念に丹念に。

「レオが準備してたからすんなりと入りそうだけどもう少ししっかり解すね」

「ああ」

実際のところ後ろで快感など拾えることはかった、今も違和感しかない。

ぐにぐにと穴を拡げながら長い指がゆっくりと侵入してくる。

「んっ」

ある一点を掠めたとき思わず声が漏れた。

「これかな?」

「ひっ…ひぃやぁん 」

繰り返しそこを狙って指を小刻みに動かしてくる。

「い…やぁんぁんふぅんひぅ…はぁんああっんぅ… やぁああっんぁ…んふぅんひぅんはぁん…… 」

手をついているせいであられもない声を止める術はなく流れたままになる

「腰動いてる…気持ちいい?」

う動かしてるつもりなど無いのに、前後不覚で自分の身体なのに自分でコントロールすることができないでいる。

すりすり、ぐにぐにとおかしくなるポイントを集中的に責め立てられる。

「ここね…前立腺…勃起した状態の…方が…見つけ…やすいん…だって」

時折荒く聞こえる呼吸の音は自分のものなのか凪のものなのか、バラバラになった思考ではわからない。

粘着質な水音に合わせとろとろした液体が後孔から零れ内腿を伝い流れていく。

「拡げると零れちゃうね…追加した方がいいかも」

「ひゃっ」

追加とまた中に冷たい液体を入れてしこり刺激してくる。

「ああんっんくあぁあっ…ああんんああっ 」

これでもかと快楽にさらされているのに一向にイくことまでには至らない、欲望を吐いて楽になりたいのに、いっそ自分で慰める?

「んはぁあぁ…ああああんっはぁあっあっ…… はぁ…はぁ…」

閉じることのできなくなった口からは唾液が垂れシーツに染みを作っていく。

「これ一回出した方が良さげっぽいね」

言うや否や前と中を同時に刺激してきた。

前立腺を擦られ、大きな手によって陰茎を擦り上げ鈴口に指をかけられる。

「まっ…や…あっあぁんああはぁはぁあああっ あああーーーー」

勢い良く白濁が吐き出されると同時に上半身を支えきれなくなり崩れてしまった。辛うじて付いていた膝だけはそのままに、その体勢は凪の方に尻を付き出すような形になっていた。

「はぁ…はぁ…はぁ」

「れお…ねぇ…挿れても良い?」

「はぁ…ん…ああ、もちっと待って…まだ四つ這いに戻れそうにない…」

呼吸を整えながらそう返す。

「そのままの体勢で良いから…あとバスローブは脱がすよ」

バスローブから腕がゆっくりと引き抜かれる。

ああでも、お尻は自分で拡げててもらえると助かる…そう言われ一糸纏わぬ姿で、自身の尻を拡げてみせる。

「ありがと、じゃぁ挿れるね」

ぬるぬるとした薄い膜に被われた怒張が穴に押し当てられる。

「んっ…」

ゆっくりと押し拡げ入ってくる。

凪自身の形に合わせて中が拡がっていく。

「く…んんっん 」

異物感が指の比ではない

「はっ…はぁ…はくっ…はぁ」

苦痛を逃がそうと呼吸をしていると

「ふぁっ」

凪の先端が前立腺に到達したようだ

まだ、勃っていないのに?

「レオのイイトコちゃんとさっきので把握したから」

偉いでしょ?と言わんばかりの声色で凪は言う。

「一回…場所がわかったら…そこを刺激できるよ」

覚えるのは得意だからと得意そうな声がするが、もうそれどころじゃない。

「あっ…あっあぅあっん……あああっ…ああ… あっあっ…あっあぅんああっ…あ……ああ… あっ…ああ……ああ……んあっあっあっあぅ 」

ゆっくりと嬲るように執拗に前立腺を刺激され嬌声を上げることしかできない。

「レオの中ぬくぬくしてる。スゲー気持ちいい」

「やぁあっ……ひぃんあぅあんっゃあっああっひゃあっ……ああ… ひゃあっゃ…ああっあっ…あぅあやぁあっんっひぃん………ああ …ああっあっあぅんひぃあっ…あっんっ……ああひゃやぁあ…ゃ 」

浅いところを刺激し続けるせいで、暴力的なまでの快楽を与え続けられ、壊れたラジオのように嬌声を上げ続ける。

「ひゃ…あぅひぃ………あああっだ…めあああんっあっあっいゃゃあんあっや…… あっああやぁこわ…れ……ひゃだ…めああっひぃ……ん……あああっや…いゃあぅゃあんっあっ あっあぁぁぁぁ」

グリグリと弱いところをいじめられ何かが限界に達したのかまるで花火のよう何かが弾けた。同時にゴム膜越しに叩きつけられる熱い欲望。

そのまま背中に慣れた重みがくっついてくる

「はぁ…ふっ…はぁ…キモチかった」

「そりゃ…はぁ…良かった…良かったから…んっ…抜いてくんねぇ?」

「えぇ…レオの中キモチイからもう少しこうしてたい」

耳元で吐息混じりにだめ?なんて聞いてくるものだから

「もぉ…少しだけだかんな…」

「Yes Boss」

器用に俺ごと寝返りを打つと腕の中に閉じ込めるように抱え込まれた。

視界に飛び込んでくるのは眩いばかりの都会の光り。

「綺麗だねぇ」

「そうだな…」

でも、愛し合ったかのような情交の果ての光の方が美しかったような気がした。


これは業務契約

でも、いつか…そういう意味で、本当の意味で愛をかわす行為としてこれができるように、求められるように…この男を攻略するのだと強く思った。


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