SECOND VICTIM
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主「えーなにこれ」
『果(は)たし状(じょう)』とフリガナ付きで丁寧に折られた紙を持って梨子は帰路に就こうとしていた
綱彌代家の者が霊術院の近くに来ているのでそこまで海燕と『教員』と一緒にいたがその道中にその紙が落ちていたのだ
「果たし状というと決闘のお誘いのお手紙ですね 物騒ですがよく見かけます」
「普通見かけねえと思う...」
教員がいつも通りズレた意見を述べるのに海燕が頭を痛めていたがまた更に不審な人物がいた そこらの道に生えている草食っている隻腕の少年()『ダルヴァ』である
「...それ美味しいの?雑草だよ?」
「童女よ...儂はもちろん美味しいから食べているんじゃよ 一つ食べるか?」
「わーい!」
知らない人から者を貰うなと苦言を呈した海燕を一応先に教員が毒見してから食べることで教員は抑えた
「これはノビルといって生でも...」
「そういえば果(は)たし状(じょう)...中身を見て名前をみれば落とした人に渡せるかも!」
言うが速いかババッと紙を広げる アホみたいな内容だった...少なくとも梨子と海燕にとっては
「そういえば童女よ おぬしは儂と同じ王を戴く者か?それとも先王を戴く者か?」
梨子はそう質問するダルヴァが滅却師であることに気づいた だが気づかないふりをする
「ええと...?」
「まあ良い それよりも後ろのおぬし ふざけた事を書いておったがそちらはどうじゃ?」
梨子の後ろにはいつの間にか西洋の甲冑を少し感じる人型が立っていた
「どちらも私にとっては不都合だ 私が王となるための薪とくべる予定だ」
「不敬極まるな...死んで贖えBG9とやら‼」
「海燕さん梨子さん 落ち着いて聞いてください...綱彌代家の護衛の所まで止まらずに走りますよ!」
二人の首根っこを掴み教員は走る 先ほどの少年はBG9と激しく争っている
教員たちが見えなくなった後BG9はダルヴァの攻撃を躱しつつ呟く
「...面倒極まる 貴方は捨て置いて先を行かせてもらうとしよう」
『P/A/A’(パー)・オブ・ジ・エンド』で自身を斬りBG9の姿は消え失せた
「逃げるんじゃない 卑怯者ー!」
「見えてきました 綱彌代家の護衛は...!」
「護衛ならもう殺した 先回りに関しては二つも荷物を抱えた上で追い付かれないと思う方が傲慢だろうな」
徹底的に破壊された死体の上にBG9は座っていた 教員は海燕と梨子を下ろし
「お二人とも『来た道』を戻ってください...いいですね 『来た道』ですよ
「成程...泥仕合を行うつもりか そして仮に突破しても来た道には破道縛道を巡らせた罠を仕掛けている 恐ろしい手際だな『教員』 そして先ほどからいるのは分かっているぞ『綱彌代 継家』...と言ってもわざわざ影から出ては来ないか」
「随分と詳しくお調べになっているようで」
「お前達の生誕時からずっと知っている」
「わあ それは随分熱心」
「お前と問答をする事による不利益もな 祈れ『聖哭螳蜋』(サンタテレサ)」
二本BG9から新しい腕が生える 霊圧は変わらないが確かに帰刃なのだろう
元よりあった腕二本そして新たに生えた二本それぞれに斬魄刀を持ち始解する
「仮に一つが三割としても十二割...『継家』お前の全力を受け止めて尚余る 『教員』お前の最光も意味をなさない」
ひょっこりと継家が教員の近くの影から顔を出す
「どうする教員...いや本当にどうする...」
「継家さんは自分の斬魄刀の弱点を手あたり次第あげてください...私も頑張ってみますので」
海燕は梨子の腕を引いてひたすら走る 恐らく教員の字で縛道や破道が書かれた紙が時折目に入る これが護ってくれればいいが...
梨子は普段とは違い笑顔はない 不安ばかりが顔に浮かんでいるようだった
「大丈夫だ安心しろ...!色々抜けてる所はあるけど教員も継家さんもなんだかんだ強いからな!」
「......うん!」
そう答えたのは刀に胸を串刺しにされた梨子だった
「やはり負担が無駄に大きく完全な使い捨てになるな『鏡花水月』は 『霊王の器』には効かなかったがお前には効いたようだな海燕 注意を逸らしてくれたおかげで障害なく終わらせられた」
梨子の腕は海燕の手のうちにもう無い 忽然と消えてしまった
空の上で鴉が鳴き喚いている 集まり円を描きだしている様にも見える
「『稲生』や他の死神が捜索しているようだな...鯖落ちが復旧するまでは姿を隠す必要がある」
BG9は影を伝って何処かへと消えてしまった
また地獄の蓋が揺れ動く