Recruiting for Truth Seekers
スマートフォンの位置情報ゲーム「イングレス」、あるいはこのゲームを原作としたアニメ「イングレス」を陰謀であると見抜いた諸君。まずはその慧眼に称賛を贈ろう。
しかしそこは、まだほんの入り口でしかない。
アリスが飛び込んだ「ウサギの穴」は、その先にあるのだ。
「ストライサンド効果」というのをご存知だろうか?
秘密の隠蔽に躍起になることは、逆に真実の露呈につながってしまうのである。
つまり衆目にいかにも陰謀であるかのように見えるものはもはや陰謀とは言えず、むしろそれは本当に隠したい何かから目を逸らせているに過ぎないのである。
「イングレス」が本当に隠したいものとは何か?
2012年12月、スイスの欧州原子核研究機構でとある事故が起きた。施設内にいた多数の研究員が影響を受け、その余波で死者さえ出ているにも関わらず、その事故はほとんど誰にも知られることはなかった。
というのは、事故の原因であった未知の物質「エキゾチック・マター」は第2次世界大戦の頃から存在が認知されていたものの、その研究に携わるあらゆる機関・企業・国家が軍事戦略的な理由により最高機密としてきたものだったからだ。それに加え、この事故を起こしたプロジェクト「ナイアンティック計画」を管轄していたアメリカ国家情報局──通称NIA──は、公式には存在しない組織であった。ウィキペディアを見てみたまえ。残念ながら日本語版にその名を見ることはできないが、National Intelligence Agencyは1940年代にアメリカ国家安全保障会議および中央情報局に統合され、現存しない事になっている。
ではなぜ、今それがわかるのか?
「P.A.シャポー」というハンドルネームを持つ人物がいる。2012年の後半ごろから nianticproject.com という奇妙なウェブサイトを運営していた人物で、嘘か真かわからぬ極秘書類や音声データ、新聞記事などをひっそりと公開していた。元はナイアンティック計画に参加していた人物だと言われている。要するに内部告発である。
当初はほとんど話題にさえならなかったのであるが、ある時Google Playストア上に「イングレス」というゲームが登場すると、ウェブサイトは次第に口コミで人々に知られていった。そこに現れる書類に記載されている人物の何人かはSNS上にアカウントを持っており、世界各地で実際にその人物を目撃した者もいるのである。
ウェブサイトに掲載されている断片的な情報をつなぎ合わせると──
「イングレス」とはもともとゲームではなく、ナイアンティック計画がエキゾチック・マター研究のために開発した実験調査用のアプリであった。当然そのアプリは極秘であり厳重に管理されていたのだが、ちょっとしたはずみに漏洩したのである。勿論NIAは迅速に回収したのだが、それでも漏洩したアプリは公開されてしまったのだ。あろうことかアプリの配布元である何者かは、極秘であったプロジェクト名「ナイアンティック・ラボ」を名乗っていた。
これはNIAにとって致命的な問題であった。当初は「ナイアンティック・ラボ」そしてP.A.シャポーの正体を突き止め、漏洩した情報を抹消しようとした。しかし既に少なからぬ人間の目に晒されているものを削除することは、逆に人々の好奇心を掻き立てることになる。そこで彼らは考えたのだ。いっそ、本当にゲームだということにしてしまおう、と。皆が見ているものはただのゲームであり、極秘情報のように見えるものはゲームの中の「お話」であると。
この偽装工作はうまく行っているように見えた。多くの人々はそれがよくできたフリンジサイエンス・フィクションだと信じ、ゲームとしての「イングレス」に興じてきた。そしてその裏で、プレーヤーが生み出す大量のデータはNIAのサーバーに集積され、ゲームの勝敗やプレイ実績のために構築されたフィールドによって、何も知らない一般人たちが今この瞬間もエキゾチック・マターの影響に晒されている。
しかし、ごく僅かな…全プレーヤーの1割にも満たないであろう…者たちは、疑いを拭い去ることはなかったのだ。世界中に存在する、インベスティゲイター、調査員とも呼ばれる「トゥルースシーカー」たちは各国で密かに結集し、表向きはゲーム「イングレス」のファンサイトを装い、真実の探求を今も続けているのである。勿論、この日本でも。
真実への入り口に立った諸君。
その奥へと進むなら、覚悟が必要であることは言うまでもない。
一歩入り込めば、元の世界へいつ戻れるのか、その保証はない。
それでも尚進むのであれば、入り口は諸君自身の手で探してもらいたい。
探求は既に始まっているのだ。
私からは「白い動物を追え」とだけ言っておこう。