RABBIT Question

RABBIT Question


「…RABBIT4、見つかったか?」

『こ、こちらRABBIT4……見つからない』

「…そうか。RABBIT3、そっちはどうだ?」

『こっちもダメ。そういうRABBIT2はどうなのさ』

「…ダメだった」

『ど、どこに行ったのかな…』

『『「ミヤコ(ちゃん)…」』』


ミヤコがいなくなって数ヶ月、私たちはミヤコを探し続けていた。

『執行猶予』中のため監視カメラをハッキングして探すわけにもいかず

D.U中を自分達の足で探し回ったがミヤコは見つからなかった。

○○病院を張り込んだりもしたが、一切出会うことがなかった。


そして今、一旦子ウサギ公園に集まって、今後のことを話し合っていた。

「…こりゃあ、D.Uにはもういないね」

私たちが出した結論をモエが口にした。

「そんなことは言われなくてもわかってる。問題はどこにいるかっていう話だ」

むやみやたらにD.Uの外を探すわけにもいかない。

手掛かりといえば、行方不明になった日に訪ねてきた砂狼シロコだ。

しかし彼女は今、代理とはいえアビドスの生徒会長だ。簡単に会うことはできない。

本来なら前回の訪問の方があり得ないことだ。

他に手掛かりになりそうなことといえば…

「ぴょんこ……」

ミユがそう言った。

ぴょんこ…砂狼シロコが持っていたキャリーケースの中にいた何か…

返すと言っていたことや、夜に戻ってきたミヤコがキャリーケースを持っていたことからも

元はミヤコが飼っていたものなのだろう。

そこまではわかる。しかし、わからないことがいくつもある。

『どうして砂狼シロコがぴょんこを預かっていたのか?』

『どうしてミヤコに直接返す必要があったのか?』

『どうしてミヤコはぴょんこのことを私たちに話さなかったのか?』

『どうしてぴょんこの名前を聞いた時、頭痛がおきたのか?』

ぴょんこに関してだけで、少なくともこれだけの疑問が出てくる。

そもそも、ミヤコの様子がおかしかった原因もよくわからない。

第一、なんで撃たれたのかも私はよくわかっていない。

こうして考えると解らないことだらけだ。

いや、一つ確かなことがある。

「私たちはいったい、何を忘れてるんだ…」

十中八九、『薬』の影響でなくなった記憶に答えがある。

だが、入院中に散々話し合っても思い出せなかったのだ。

事情聴取の時でも思い出すことが出来なかった。

どうやって思い出せばいい。

……そう思い悩んでいた時、

「どうかしたの?そんな顔して?」

今の声は…

「ニコ先輩!?」

声がした方向に振り返ってみると

ニコ先輩だけではなく、オトギ先輩やクルミ先輩、そしてユキノ先輩、

私たちの先輩であるFOX小隊が来ていた。

「ふっふっふっ、みんな会議中とはいえ油断は良くないよ~。もし私たちが敵だった場合、みんな制圧されていた可能性があるからね」

オトギ先輩がおどけたように、こちらに声をかけてきた。

「あ、あの……どうして……先輩達がここに?」

ミユが疑問を口にしていた。

「何よ、後輩たちの顔を見に来ちゃいけないわけ?」

クルミ先輩がそう言ったが…

「でも先輩達は今、『砂埃』を探してるって聞いたんだけど…」

モエの言ったとおりだ。

FOX小隊は、アビドス砂祭り事件での活躍によって減刑され、釈放された。

そして今は『砂埃』と呼ばれる、『砂糖』や『塩』を非合法に売っていた者たちや、

アビドスカルテルの後釜を狙う組織を追っているとミヤコから聞いた覚えがある。

「そうよ。でも、ちょうど大きなヤマが片付いて落ち着いたから、後輩たちの様子を見に来たってわけ…で、ユキノさっきから何してるの?」

「……」

ユキノ先輩は、先ほどから何も言わず公園内を見まわしていた。そして私たちに

「月雪小隊長はどこだ?」

そう問いかけてきた。

「「「……」」」

私たちは意を決して、先輩達に知っていることを話した。

私たちの記憶が後遺症の影響で一部無くなっていること、

砂狼シロコが訪問してきたこと、

ぴょんこという名前を聞いて頭痛がしたこと、

そして、ミヤコがいなくなったこと、

いなくなる前のミヤコの様子も全て話した。

先輩達は、私たちの話を黙って聞いていた。

「…これが、私たちが知っていることだ」

全てを話し終わった後…場に重い空気が広がっていた。

「…お願いします。私たちが何を忘れているのか、そして、中毒中に何をしたのか教えてください」

「お願いします」

「お、お願いします…」

私たちは先輩達に頭を下げた。

すると…

「ハァ…どこの隊長も似たようなものね…」

クルミ先輩がため息をつきながら、呆れたようにそう言った。

「…待てクルミ。私は一度だって、隊長としての役割を放棄したことはない。どこが月雪小隊長と似ているというんだ」

「似てるじゃない」

「似てるね~」

「似てるよ」

どういうわけか、ユキノ先輩がいじられる流れになっていた。

「…どのあたりが似ているんだ?」

「「「自分だけで何でもかんでも背負い込むところ」」」

「……隊長だから隊員の責任を負うのは当然だ」

「ほらそういうところよ。隊長だからって何でもかんでも背負い込みすぎ」

「子ウサギ駅の時だってそうだったよね~。罪を全部、隊長である自分が背負って一人で自爆しようとしてたじゃん」

「……」

クルミ先輩とオトギ先輩の言葉でユキノ先輩が何も言わなくなった。

「まぁ、ユキノちゃんに関してはそのくらいにして…話を戻すね」

ニコ先輩の言葉で、場に再び緊張感が戻った。

「……本当に何をしたのか聞きたい?」

ニコ先輩が私たちに聞いてきた。

「…もちろん。私たちには知る権利…いや、義務があると思う」

モエがそう答えた。

「……どんな真実でも受け入れられる?」

次にオトギ先輩が聞いてきた。

「しょ、正直に言えば怖いけど……何も知らないほうが、私たちは嫌です」

ミユがそう答えた。

「……自分の罪と嫌でも向き合うわよ」

クルミ先輩が聞いてきた。

「……構わない。私たちはSRTだ。自分の罪と向き合う覚悟はあるつもりだ」

私が答えた。

「……本当に月雪小隊長を連れ戻す気なんだな」

ユキノ先輩が聞いてきた。

「「「はい!」」」

私たちはそう答えた。

「……一週間だ」

ユキノ先輩が言った。

「一週間後にまたここに来る。その時に改めて真実を話そう」

一週間…

「な、なんで……今話さないんですか?」

ミユが率直な疑問をぶつけた。

「…こちらにも準備がいるからだ。説明するよりも見た方が早いからな」

見る?何のことだ?

「話は以上だ。FOX小隊、帰投するぞ」

そう言ってユキノ先輩は帰ろうとしたが…

「え、まだサキちゃん達とおいなりさん食べてないけど?」

……

「……では、食べてから帰るぞ」

なんというか…今日のユキノ先輩、梯子はずされてばっかだな…


そして、みんなでニコ先輩のおいなりさんを食べ終わってしばらくした後…

「改めて、FOX小隊、帰投するぞ」

「「「了解」」」

普通に雑談をして解散という運びになった。

「では…最後に一つだけ、重要なことを伝える」

ユキノ先輩が私たちに向けて…衝撃の一言を告げた。


「月雪小隊長は『薬』を摂取していない」


は?

「以上だ」

それだけを言い残して、FOX小隊は帰っていった。

ミヤコが…『薬』を…摂取していない…?

なら…あのミヤコの状態は一体…

先輩の言葉は、私たちにまた新しい謎を残していった。


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SSまとめ


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