RABBIT Combat 後編

RABBIT Combat 後編


「「ハァ…ハァ…」」


サキとの戦闘で気が付いたら夕暮れになっていた。砂漠エリアのど真ん中で1対1の状況、しかし、銃弾も爆弾も使い切り、互いに息切れをし睨み合っていた。

息を整えつつ、場を沈黙が支配していた。

サキ「おい、ミヤコ。なんで私たちを置いて子ウサギ公園から出て行った」

先に沈黙を破ったのはサキだった。

ミヤコ「…それは」

言えるわけがなかった。彼女達の名誉のために、そして…

サキ「…私たちがぴょんこを撃ったことを先輩たちから聞いた」

ミヤコ「!?」

サキの口からその話が出てきて私は一瞬驚いた。

サキ「ミヤコの事情もその時に聞いた。最初に聞いた時は、どうしようもなく悔やんだ。モエもショックを受けて、ミユなんか聞いてる途中で泣きながら『ごめんなさい』って何度も言っていた」

ミヤコ「…」

サキ「けど2人とも最後はしっかり受け入れた。自分が覚えていなくても自分がしたことだからって。もちろん私もそうだ。けどそれと同時に私には許せないことがあった」

ミヤコ「…許せないこと?」

サキ「…隊長であるミヤコから聞かされなかったことだ!」

そう言うと同時にサキは掴みかかってきた。

とっさのことだったので私は防ぐことが出来ず、胸ぐらを掴まれてしまった。

サキ「なんでそんな重要なことを黙っていた!何故私たちに話さなかった!」

ミヤコ「…」

サキ「自分だけで秘密を抱え込んで墓場まで持っていこうとしたのか!私たちは信用できなかったか!」

ミヤコ「…」

サキ「黙ってないで何とか言ったらどうなんだ月雪ミヤコ!」

ミヤコ「……言えるわけ」

そして私はサキの胸ぐらを掴み返した。

ミヤコ「言えるわけないじゃないですか!」

サキ「!」

ミヤコ「何も知らないみんなに言えるわけないじゃないですか!こんな真実を知ったところで何になるって言うんですか!」

サキ「私たちがやったことだ!知る権利ぐらいはあるだろう!」

ミヤコ「サキたちじゃありません!『薬でトんだみんな』と『RABBIT小隊のみんな』、同じはずがない!同じであっていいはずがない!

 『ぴょんこを撃つようにそそのかしたモエ』も、『ぴょんこを撃ったミユ』もそして、『撃たれたぴょんこを笑っていたサキ』も

 絶対に同じじゃない!…同じじゃないってわかってるのに…」

そして私はその場でしゃがみ込み泣き出した。

ミヤコ「ぴょんこを撃ったみんなと違うってわかってるのに…みんなを見ると…怒りが混み上げてくることがあるんです…でも…違うから…なにも出来なくて…

 ただ…怒りを収めるしかなくて…ぴょんこが戻ってくるってわかったら…余計に怒りが収まらなくなって…みんなと一緒にいるのが…みんなを攻撃して…あの時のみんなみたいで…怖くて…」

まるで子供みたいだった。こんなのはSRTの生徒らしくないというのに泣くのを止めようと思っていても涙が止まらない。

サキ「だから出て行ったのか…」

納得するようにサキが呟いた後、私を撫でた。

サキ「ミヤコ、やっぱり本当のことを私たちに話すべきだったんだ」

ミヤコ「どういう…ことですか?」

サキ「本当のことを話して、せめてもの仕返しって形で、思いっきり殴るべきだったんだ」

ミヤコ「ですがそれは…」

サキ「悪いことをしたら、罰則が必要だろ?私たちに必要なのはそういった罰だったんだ」

ミヤコ「ですが、それでも収まらなかったら」

サキ「その場合は、もっと殴られてやる。正義を守る小隊じゃなく、感情を思いっきりぶつけることができる親友としてな」

ミヤコ「親友…ですか…」

サキ「あぁ。…すっかり落ち着いたみたいだな」

ミヤコ「…はい」

思いの丈を全てぶつけたからか、久しぶりに心がスッキリしていた。

こんなに穏やかな気持ちになったのはいつ以来だろう。

そして私は、サキに手を貸してもらい。立ち上がった。

辺り一面は、あの時のような砂漠だが、私の中の砂漠(怒り)はもうすっかり消え失せていた。

サキ「まぁ、ミヤコのパンチなんて私からしてみれば蚊に刺されたようなものだからな!」

ミヤコ「…」

ボカッ

サキ「痛!?なんで今殴った!?」

ミヤコ「せめてもの仕返しです。足りないのでもっと殴らせてください」

サキ「ちょ、待てやめろ!ミヤコ!!」



サキ『ミヤコ!流石に殴りすぎだろ!』

クルミ「いやー、青春してるわね」

オトギ「クルミなんか言い方が年寄り臭いよ」

クルミ「なにオトギ?私たちも青春(殴り合い)する?」

ニコ「あはは……一応ここ救護テントだから、暴力行為はやめてね。さて、」

モエ「…」

ミユ「…」

ニコ「二人も納得した?」

ミユ「……はい。ミヤコちゃんの事情も知れて良かったです」

モエ「くひひ…全員に聞かれてたって言ったら二人ともどんな反応するかな?」

ニコ「お、お手柔らかにね。そして…」

ユキノ「…」

ニコ「なんでこういう形にしたのユキノちゃん?普通に会わせるだけじゃダメだったの?」

ユキノ「…私も最初は普通に会わせるつもりだった。しかし、月雪小隊長の本心を知りたかったことと…」

ニコ「と?」

ユキノ「現在のRABBIT小隊の練度を確かめたかったからだ。やはり、Aチームは全体的に体力が落ちてるな」

ミユ「す……すみません……」

ユキノ「そしてBチーム、もとい月雪小隊長は…どこであんな無茶苦茶な戦闘を覚えてきたんだ」

オトギ「アビドスにいた頃、誰かにしごかれたとかじゃない?」

クルミ「どんなしごかれ方をしたら、ヘリを落とすために爆弾を全部使って廃墟のビルを倒壊させて命中させるなんて戦い方を思いつくのよ」

モエ「くひひ…私は好きだよ。そういうぶっ飛んだの」

クルミ「でしょうね」

ニコ「はい。反省会は一旦終了。続きはミヤコちゃん達が来た時にしよう」

ユキノ「そうだな」


こうして、RABBIT小隊員の大喧嘩は幕引きとなったのである。


翌朝


サキ「はぁ!?まだ子ウサギ公園に帰ってこないのか!」

ミヤコ「すみません。ゲーム開発に関わると決めた以上、最後まで付き合おうと思いまして」

モエ「でも、終わったら帰ってくるんでしょ?」

ミヤコ「はい。ぴょんこを連れてみんなの下に必ず帰還します…思った以上に長引きそうですが」

サキ「おい」

ミヤコ「安心してください、たまに様子を伺いに戻りますし。何でしたらみんなが来ても構いません」

ミユ「よかった……また……会えなくなったらって思って……」

ミヤコ「…まぁ、皆さん絶対に呼ばれる時が来ますから」ボソッ

サキ「?何か言ったか?」

ミヤコ「いえ何も。では…RABBIT1、特別任務の方に戻ります!」


モエ「…行っちゃったね」

ミユ「……絶対呼ばれる時っていつだろう?」

サキ「まぁ、今度は隊員に報告してるし、何も言わないよりましだな」

モエ「だねぇ」

ニコ「おいなりさんできましたよー!」

サキ「あっ!ミヤコの奴、ニコ先輩のおいなりさん食べてないぞ!」

モエ「もったいないなぁ…くひひ」


モエ「!?お吸い物美味しい!おいなりさんによく合う!」

ニコ「ありがとう。そのお吸い物、ミヤコちゃんが作ってくれたんだよ」

サキ「ミヤコがか!?」

ニコ「そう。任務に戻る前に迷惑をかけたお詫びだって作ってくれたんだ」

オトギ「うんうん、後輩が育ってくれて先輩も鼻が高いなー」

ユキノ「」モグモグモグモグ

ミユ「ユキノ先輩……黙々と食べてます……」

ニコ「ふふっ、よっぽど気に行ったんだねユキノちゃん」

サキ「けど料理が上達するってアビドスで何してたんだろうな、ミヤコ」

クルミ「そうね。まぁ美味しいからいいじゃない」

サキ「…だな!」


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