RABBIT Chocolate

ホシノ「はいこれ、今日の訓練のご褒美」

ミヤコ「…板チョコ…『砂糖』は入って…」

ホシノ「入ってないよ～。というか入れる余地ないでしょ」

ミヤコ「…そうですね。どう…見ても…既製品のようですし…」

ｶﾞｻｯ、ﾊﾟﾘｯ

ホシノ「…美味しい？」

ミヤコ「…はい」

ホシノ「うへぇ、それは良かった。…ところでミヤコちゃん」

ミヤコ「？」

ホシノ「既製品と同じような包みだからって油断しちゃだめだよ～」

ミヤコ「！？…まさか…」

ホシノ「まぁ、今回は本当に入ってないから安心していいけどさ～。次からの教訓ってことで…」

ミヤコ「……」

ホシノ「いやぁ既製品に見えたんだね～。おじさんの工作技術もチョコ作りの腕も捨てた物じゃないなぁ。色々我慢して作った甲斐があったよ」

～

ミヤコ「ということがあったの覚えてますか？」

ホシノ「…あったね、うん」

ミヤコ「というわけでこちら、私が作ったザッハトルテです」

ホシノ「……うへぇ、本気で既製品…というかもうスイーツ店のチョコじゃん！」

ミヤコ「食べませんか？」

ホシノ「…いやまぁ食べるけど！おじさんに作る前に他の人に作ったらどうなのさ！」

ミヤコ「安心してください。ちゃんと皆さんの分も作ってます。ですが初めて作ったもので、美味しいかどうかわかりませんので毒…味見お願いします」

ホシノ「今毒見って言いかけた？言いかけたよね？」

ミヤコ「いいから食べてください。でないと力尽くで口に突っ込みます」

ホシノ「…いただきます」

ﾊﾟｸｯ

ホシノ「美味しい…というか砂糖使ってるよねコレ？おじさんが言うのもなんだけど大丈夫？」

ミヤコ「むしろ貴方が相手だからこそ砂糖をふんだんに使ってますけど」

ホシノ「…うへ」

ミヤコ「…あの時」

ホシノ「ん？」

ミヤコ「…どうして私にチョコを作ってくれたんですか？」

ホシノ「……」

ミヤコ「パッケージごと作るなんて明らかにおかしいです。中毒者としての衝動やアポピスとしての理性を抑えてまで、どうしてそこまでの物を…」

ホシノ「…そうだね…一言で言うなら、一番頑張ってたからかな」

ミヤコ「……どういうことですか？」

ホシノ「…私が言うのもなんだけど、あの組織にいた人たちは本当の意味で頑張ってなかったと思うんだよ。みんな何かから逃げたり、何かから目をそらしたりしてた」

ミヤコ「……」

ホシノ「…でもミヤコちゃんだけは向き合ってた。向き合って、耐えて、頑張ってた。…だからかな。私はそんなミヤコちゃんのために、ちょこっとだけ向き合って、耐えて、頑張ってた。それだけの話だよ」

ミヤコ「…それだけですか」

ホシノ「うん…気に入らなかった？」

ミヤコ「いえ、何と言いますか」

ホシノ「何？」

ミヤコ「…いえ、何でもありません。もう一口どうぞ」

ホシノ「（ﾊﾟｸｯ）…うん、美味しい。おじさんには勿体ないくらい」

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（SSまとめ）