RABBIT Bunny
こんばんは。トキです。
私は今、アビドスにいます。
現在キヴォトスでは『砂糖』と呼ばれている薬物が蔓延しており、
アビドスはその中心部で、言わば一番危険な場所です。
そこの調査に“C&Cで一番強い”私が選ばれ、現在進行形で潜入しているというわけです。
そして私は、アビドスのトップである小鳥遊ホシノの『最近のお気に入り』が住んでいるという建物内にいます。
『最近のお気に入り』と呼ばれている人物。
詳細は不明ですが
アビドスにはアビドスカルテルと呼ばれる3人のトップ層が存在しており、
それぞれが独自の部隊を持っているそうです。
その中でも元凶である小鳥遊ホシノには、直属の部隊が一つだけ存在していて、
そのリーダーが『最近のお気に入り』だと一般のアビドス生徒から噂されています。
曰く
「常にイライラしていて、見てるこっちもイライラする」
「イライラしてなくても、急にキレて殴りかかってくる」
「気に入らないからってこっちから手を出すとホシノ様が来る」
「ホシノ様の寵愛を受けて調子に乗ってる」
「ホシノ様唯一の部隊と言われても何をしてるのかわからない」
「変なヘルメットを被ってることがある」
「部下から信頼されてない」
等々…
正直言って良い噂をほとんど聞きません。
そんな少女がこの建物に住んでいるとのことです。
ここは例の小鳥遊ホシノ直属の部隊の人達が住んでいるそうなのですが、
現在は任務中で留守だそうです。
「…どの部屋でしょうか?」
私はひとまず一番近い扉を開けたところ、
そこには惨状が広がっていました。
弾痕や血と何かを打ち付けた跡や壊れた物、空になった缶詰などがそこら中に散乱していて、部屋の窓ガラスもすべて割れていました。
隅の方に置かれた寝袋が無かったのなら、そこに人は住んでいないと思わせるほどの荒れ放題っぷりで、まるで戦場の一角のようです。
少なくともお気に入りと呼ばれるような人が住む場所とは到底思えませんね。
「いったん別の部屋に…」
「…誰ですか…貴方は…」
「!?」
いけません…見られました。
おまけに背後を取られて、顔を伺うことが出来ません。
少し声が籠っていることから考えると
ヘルメットのような被り物をしているようです。
噂が本当だとしたら、もしや『最近のお気に入り』と呼ばれる人でしょうか?
「バニー…スーツ…」
推定お気に入りの人が私の恰好に言及しました。
潜入任務と言えばバニースーツですからね。当然です。
「…なるほど、嫌がらせですか」
?彼女が一人納得しているようですが、嫌がらせとはどういうことです?
「……ただでさえ今日の任務はみんな言うことを聞かずに好き勝手やって…
結果として消耗や一般の被害が増えて…トップの3人から好き放題言われて…
その上あの人からの嫌がらせですか………」
声が籠っていてうまく聞き取れませんが、
どうやら自分の世界に入っているようです。なら…
スチャッ、ヒョイ
「!?閃光弾(フラッシュバン)!?」
ピカッ!
ドガーン!!!
キーン
私はサングラスをかけ、逃走用に持っていた閃光弾を近くに転がして炸裂させ、
ほとんど窓という役割を果たしていない掃き出し窓から脱出しました。
危なかったです。危うくバッドエンドになるところでした。
……追ってきませんね。
下が砂だったおかげで怪我もなく脱出できたのは幸いですが…
「収穫なしですか」
今回の事であそこの警備も強化されるはずです。
残念ですが、あそこの潜入は諦めましょう。
とりあえず、ほとぼりが冷めるまでしばらくは潜伏ですね。
~
「……チッ」
カポッ
してやられました…
私の部屋にバニーガールを送り付けるなんてあのカラス羽根…
どこまで私を馬鹿にすれば……
「あー…あぁ…ああぁぁアアアアアァアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
ムカつくイラつく虫唾が走る反吐が出る腹立つ死ね死ね死ね死ねシネシネシネ!!!!!
嫌いだ嫌いだキライダキライダ!!!!!
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
言うことを聞かない小隊のみんなもあの3人も部下の皆も中毒者も『砂糖』も侵入者も自分も
皆嫌い!!!皆死ね!!!皆地獄に落ちろ!!!
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!…
ポタッ
……頭から血…ぴょんこ…SRT…正義…私のせいで…
…ゆるせないゆるせないユルセナイユルセナイ…
フラッ
…………あっ
「……これで」
死ねたらいいのに…
バタン!
【翌朝】
「…またやってしまいました」
また部屋が荒れてしまった。
ただでさえ荒れ放題だというのに…
…頭と喉が痛いです…
…私の顔はどうなっているのでしょう。
鏡が無いのは不便ですね。
……鏡を見ると衝動的に撃ってしまいますが。
「…そういえば」
あのバニーはなんだったのでしょう。
……ハスミさんを問い詰めますか。
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(SSまとめ)