Q.これはなんですか?
「リヨデイビットぉ……ですかねぇ……」
「???????」
「大丈夫だよデイビット。これ、ハロウィンとか水着とかスペースと同じくらい理解しても意味の無いことだから。というか理解しちゃ駄目だと思うの」
リヨ化(説明略)したデイビットが立香の手のひらに座っている。今回は野球かあ……と遠い目をした。
現在カルデアではリヨ化したサーヴァントたちが野球に励んでおり、同じくリヨ化した立香が解説実況を務めている。考えたら負けだ。
「でも可愛い……リヨデイビット」
指を使ってリヨデイビットの頬を突く。リヨデイビットはそれを反発せずに受け入れる。そのまま指で頬を撫でればギュッと目をつぶり眉間に皺を寄せて首を振る。
「あ、嫌だったかな?ごめんね」
「いや違う、そのオレは……」
『!!!!』
「わ、どうしたのリヨデイビット?」
指を話そうとするとリヨデイビットは全身を使って指に抱きつき、指に頬を擦り付ける。その顔は見たこともないくらいに真っ赤に染まっており、その小ささも相まって幼い子どもにみえる。
「……か、可愛い!可愛いねデイビット!」
感極まって両の手のひらでリヨデイビットを包み、その小さな彼に頬擦りをする。小さなデイビットも抗わずにそれを受け止める。その変わらない仏頂面が恥ずかしがりながらも幸せそうで。
「なあに?リヨデイビット?」
『少し顔を近付けてくれ』
「こう?」
『感謝する』
「……へ?」
「は?」
リヨデイビットは近付いた立香の頬に口付ける。小さくて暖かい感触に立香は驚き、デイビットから聞いたこともない低音が漏れた。
「うへへ……リヨデイビットからキスされちゃった……カワイイカワイイネ」
「理解したコレは敵だ。殺す。抹殺する」
「待って待って」
「自分だからムカつくのか?あとコレが立香と同じ色なのが気に食わない」
『嫉妬か?』
「……殺す」
「待って落ち着いて!自分対自分はろくな事にならないってエミヤ言ってた!」
デイビット対リヨデイビットという宇宙開いちゃう系の戦いがマイルームで開戦されそうになる。2人から漏れ出る黒い何かがぶつかり合うその瞬間、扉が開いて通りの言い声がする。
『デイビット選手〜デイビット選手〜そろそろ出番ですよ』
「あ、リヨ化した私」
『おやこの世界の私。デイビット選手の回収に来ました』
「……受けとれ」
『!!!!』
立香の手のひらからリヨ化(説明略)した自分の首根っこを摘み、やってきた小さな立香に渡す。
『ほら行きますよデイビット選手』
『分かった』
『ではさよなら!本来の私』
『さよなら、善い人』
リヨ立香はリヨデイビットの手を引いて球場へ向かう。まるで甲子園球場に向かう選手とマネージャーのようだ。名残惜しそうに手を振る立香の頬に触れる。
「デイビット?」
「……あのオレにはいろいろやったのに、このオレにはなにもしないのか」
「えっ、えーと、それは」
「同じことをしてくれ」
ベッドに腰掛ける立香を壁際に追い詰め、先程立香がやったように赤く染まった頬に頬擦りをする。柔らかい肌が吸い付く感触が心地よくて、くっつけたまま遠慮なく言い放つ。
「あとはキスだ。あのオレは頬にやったが、このオレは口にしたい」
「デイビット目が怖いよお……マジな目だ……」
「恥ずかしがってる君はとても可愛らしいが、リヨ化したオレにするように多少積極的でもいいと思う」
「あ、あれはリヨ化だし……」
「でもあれもオレだ」
「だってデイビットかっこいいから恥ずかしいもん……」
「それはとても嬉しい。可愛い君をオレに見せてくれ……かっこいいオレからの願いだ」
「うおおぉ……ずるいぃ……」
頬を離し、真正面から立香を見つめる。前門のデイビット後門の壁と逃げ場がない。あたふたと目線を泳がせた立香は覚悟を決めたのか、デイビットの頬を両手で包んで鼻と鼻を擦り合いながら囁く。
「目を、つぶってね」
近付いてくる吐息を唇で受け止めながら、震える睫毛を眺め閉ざされた朝焼けのような瞳を惜しく思う。
まあ、目をつぶるつもりはないが。と柔らかな唇を味わいながら確かに5分に刻んだ。