Plunder before Christmas にのつぎ
requesting anonymity一同が「旅行かばん」の外に出ると、そこは話に聞いていたウィーズリー家の住処の眼の前で、ホグワーツの副校長にして変身術教授であるマチルダ・ウィーズリーと、その甥でグリフィンドールの7年生であるギャレス・ウィーズリーの2人が笑顔で歓迎していた。
「こんなとこだけど、我が家だよ。と言ってもここは僕と妹と両親が普段住んでる家ではなくて、何ていうんだろ、ウィーズリーの『本家』だけどね。毎年クリスマスはここに集まるんだ。で去年からこんな風に、ウチの親戚以外も積極的に集める事に決めたんだよね」
いくつもの家がひしゃげて積み上がったような珍妙な外観の建物の中にスタスタと先導しながら、ギャレスはそう言って笑った。
「さあどうぞ奥へ。―みんな!アイツが拐いに行った人たちも到着したよ!」
ダンブルドア少年とみんなが案内されたそのモノだらけのリビングには、ダンブルドア少年の友人であるハッフルパフ生の姉妹と、その両親なのであろうご夫婦を始めとした大勢の知った顔と大勢の知らない顔が勢揃いしていた。そして知らない顔のほぼ全てが、燃えるような赤毛とソバカスを備えている。
「『マグル生まれの魔法使いのご家族』は国際魔法使い機密保持法の規制範囲外なんだよね。………まあいつ改正されてもおかしくないけどあの条文。でも今は、だからこの子達のご両親もこうしてご一緒できるってわけだ。そしてウィーズリーの親戚であるならば、ハッキリ言ってどうとでも言い訳ができる」
ハッフルパフの4年生である女子が、ウィーズリーの親戚なのであろうおじいさんとチェスをするのを見ながらレイブンクローの7年生アミットは笑顔で言った。
「我が家で家族と過ごすクリスマスは勿論捨てがたいし、25日の夜はそうして過ごすが、ハッキリ言ってこっちの方が楽しい」
そうぶっちゃけたスリザリン生のマルフォイに、同じくスリザリン所属であるものすごい美人のレストレンジが同意する。彼らの家は所謂「純血主義」であり、本人達が言うには「堅っ苦しい話題が多い」らしかった。
「大丈夫かい?ミスター・グリーングラス?今日はだいぶマシ?それならよかった」
ギャレスの叔母であるウィーズリー先生は、グリーングラスと呼ばれた青年に紅茶を差し出している。その光景をぼんやり眺めていたダンブルドア少年は、1人足りない事に気づいた。
「あれ?先輩は?」
その疑問に、ウィーズリー先生が答える。
「あの子なら君らをここに届けて即また出発したよ?気づかなかったかい?まあでももうすぐここに到着すると思うけどね」
まるでそれが合図だったかのように玄関扉が開き、数人のゲストを伴ったその女生徒が旅行かばんを持って現れた。その頭の上には不死鳥が堂々と鎮座している。
「さ、イメルダとポピーとついでにミラベル先生も捕まえてきたよ!とりあえずこれで皆そろったよねギャレス?」
そう言って歓談やボードゲームや食事をしているみんなの輪の中に入っていく女生徒に、ギャレスがマルフォイとウィーズリーの親戚らしきおじさんと一緒に、やたら古くて分厚い魔法生物図鑑を読みながら返事をする。
「ああ、後はもう、どうしても参加するなら『逆転時計』が必要になってくる人たちばっかりだから、今年はこれで『僕らが集める分は』全員だね」
予定が合わないのはしょうがない、と言ったギャレスに叔母であるウィーズリー先生が笑顔で玄関を示す。
「さあギャレス。そしてみなさん。このウィーズリー家のクリスマスパーティーの、主賓がついにご到着だよ」
その報告と共に開いた扉をくぐって入ってきたのは、はるばるブラジルから毎年このためにやって来るウィーズリー家の親戚の大きなお腹のマグルのおじいさんだった。
「よく来た!よく来た!!お前さんが居なきゃ始まらないんだ!」
いつもギャレスと妹に良くしてくれるおばあさんが大喜びでそう言い、ウィーズリー一族が「そうだ!」「アンタが居てこそのクリスマスだ!」と口々に声を上げた。