PURE "HEAL" FACE 6

PURE "HEAL" FACE 6

「恋を自覚したトレーナーの反応」196 YVkAG1cfOM

【6・ガールズトーク】



6月8日 17時。

ビワは、アカデミーの「地獄の階段」の前で走り込みをしていた。

そこで、美術部の活動を終えて下校しているメロコと出くわした。



ビワ「あっ メロちゃん!」


メロコ「おお お疲れさまでスター」


ビワ「お疲れさまでスター! いま 帰り?」


メロコ「ああ 美術部の帰りだ ……丁度よかった」


ビワ「?」



突如、メロコの声のトーンが下がった。こういう時は、重要な話がある時だ。



メロコ「なあ ビワ姉…… あのよ……」


ビワ「なあに?」


メロコ「…… ちょっと 目立たねえトコ 行こうぜ 聞きてえことがある」


ビワ「うん だったら 丁度帰りだし わたしの部屋 行こっか」


メロコ「ああ」



ビワは快諾したが、わざわざ目立たない所に行くということは、よほど

知られたくないことのようだ。



ビワ(どうしたんだろ……)



メロコは自分の部屋のごとく自然に、ビワの部屋にあるベンチプレス台の

ベンチの上に座った。ビワとメロコの長い付き合いを物語る。



メロコ「座るぜ」


ビワ「うんっ いいよ! ブラックコーヒーでいいかな?」


メロコ「ああ ありがとな」



ビワは、メロコのブラックコーヒーを手早く淹れ、冷蔵庫からは自分の

スポーツドリンクを取り出した。


メロコは、コーヒーをぐいっと飲みつつ、聞きたいことを切り出す。



メロコ「どうだった 学校の方はよ…… 今日は授業あったろ?

大丈夫だったか……?」


ビワ「ふふっ みんな 『すごーい』とか 『かわいい』とか 言ってくれて……

近づきやすくなったのか 腕にぶら下がってくるコもいたよ」


メロコ「そっか それはよかった…… センコーは?」


ビワ「先生も最初 ビックリしてたよっ まだ 全部の先生には 会ってないけど」


メロコ「…… ま オレが言う事でも ねえけどさ……

ビワ姉のペースでいいからな また何か言われたら オレに言え」


ビワ「うんっ ありがと メロちゃん! 心強いよ」



メロコもかつて容姿が元で女生徒から嫉妬され、いじめられた経験があったので、

同じような事でいじめられていたビワを本心から心配していた。


反応が良かったことに安堵はしつつ、もうあんな悲惨なことなど起こらないと

分かっていながらも、初めこそ特待生枠で入学していたビワに関しては、自分と

同じ策が取れるとも限らない。


だから、何かあったら「ビワを守ろう」という思いは変わらなかった。

そして、メロコは「本題」に切り込む。



メロコ「…… 昨日 ピーニャのトコで話してたこと だけどよ……」


ビワ「……うん」


メロコ「好きなヤツが いんだろ?」


ビワ「!! そ その…… それは……」


メロコ「いや 全然問題ねえよ ビワ姉 もう19だろ……

というか…… リップ……さんが 挑みに来るときによ

……近くにいてほしいか?」


ビワ「……できれば 近くで見てくれてると……

あっ でも そ それが誰かって……」


メロコ「誰なのか ちょっと考えたんだけどよ…… 違ったら 言えよ」


ビワ「うんっ」


メロコ「ハルトだろ?」


ビワ「!!」



メロコの「マッハパンチ」。ストレートだ。ビワはまさか、ハルトに恋心を抱いて

いることがすでにメロコにバレているとは、本当に思っていなかったのだ。

ビワは顔を赤くし目を丸くしながらも、少し後で、はにかみながら返した。



ビワ「…… バレて たんだ…… えへへ」


メロコ「ハッ 意外と分かりやすいんだよ ビワ姉は……

ボタンがハルトの名前出した時に ビクってなってたろ?

…… わりいな オレも ちょっと探り入れさせてもらった」


ビワ「あはは…… メロちゃんったら……」


メロコ「…… オレも 後押ししてえんだよ」


ビワ「今まで タナカちゃんにしか 言ってなかったんだけど……

みんなになら 知られてもいい」



メロコは少し思案した。タナカにも直接言ったのではなく、

おそらくはタナカのほうがビワの仕草から恋心を察した……と。



メロコ(……タナカか…… ま 確かに近くにいるし

ハルトが挑みに来た時に ビワ姉が照れちまったかなんかで 

あっけなくバレたんだろーな…… ふふっ いいじゃねえか)



少しだけ苦笑いしながら、さらにビワの恋路を後押しをするための

手がかりを増やしていく。



メロコ「どのぐれえ 会ってねえんだ?」


ビワ「…… それこそ 最後にいっしょにトレーニングしたのが おととい

リップさんに会った日の お昼のことだよ」


メロコ「なるほど 今日も 会わなかったのか」


ビワ「ハ ハルトちゃんは…… 学年も 授業も違うから……

わたし 今期は家庭科取ってないし 授業がかぶることは ないかな」


メロコ「よし 完璧だ…… いける 任せとけ 連れてきてやるよ

だから…… 心おきなく 闘ってくれよ」


ビワ「ありがとう メロちゃん! でも…… わたしが 誘ってみる」


メロコ「そっか ……ま でも それが一番だろうな

どうしても勇気が出ねえなら オレに言ってくれ」


ビワ「うんっ ありがとうね!」


メロコ「……いいってこった がんばれよ」



気が付けば日も暮れかかった、19時。



メロコ「じゃ 帰るわ ありがとな…… 付き合ってくれてさ」


ビワ「こちらこそ メロちゃんに話せてよかったよっ!

お疲れさまでスター!」


メロコ「お疲れさまでスター……!」



メロコは自分の部屋に戻る道すがら、物思いにふけっていた。



メロコ(…… けど ホンットによかったよ あれだけは オレも

解決できそうになかった ビワ姉自身の問題だからな……

風呂なんかも 時間合わなくなってたし……)


メロコ(……アイツ あんだけ 真っ直ぐなヤツなんだ

真っ直ぐなビワ姉が 惚れちまうわけだよ)


メロコ(……ハルトでよかった アイツなら いざとなりゃ

一番話つけやすいし ボタンたちも 知ってる仲だ

なおさら 話は早ぇ)


メロコ(……やっぱ ビワ姉が あのメイク取る理由って……

……フッ 恋って こんなに人を変えてくれんだな……

ちょっぴり うらやましいぜ……)



その夜、20時12分。ビワは北1番エリア周辺で、エスパータイプの

ポケモンを相手にした、夜のトレーニングの休憩中だ。

手持ちのポケモンたちを繰り出し、それぞれに語りかけていた。



ビワ「さっ みんな ちょっと休憩しよっか!」


オコリザル「うきゃ♪」

ルカリオ「ぶるふっ」


ビワ「『チョコチュロス』だよ みんなで食べよう!」


ドクロッグ「ろろぐー」

ナゲツケサル「きゃうっ♪」



食べればひとたびエスパータイプのポケモンに遭遇しやすくなるという

「チョコチュロス」を食事メニューに取り入れ、準備万端である。



ビワ「サンドウィッチも パワーがつくから トレーニングには

うってつけなんだよね 来期は家庭科 とらないと……」



その時、ビワのスマホロトムから、メッセージを受信したことを告げる

着信音が鳴った。


ロトロトッ ロトロトッ


コノヨザルが立ち上がり、スマホロトムをビワに手渡す。



コノヨザル「ぶきゃ ぶきゃっ!」


ビワ「ありがとっ ……あっ ハルトちゃんからだ!」



ビワはトレーニングに先駆け、メロコが帰った直後、意を決してハルトを

STCでのリップとのバトル、その観戦に誘っていたのだ。



ビワ「……『いいよ! 楽しみにしてるよー』」


ビワ「わあっ ハルトちゃん 来てくれるって……!!」


ナゲツケサル「きゃるっ!?」

オコリザル「うっきゃあ!」


ビワ「みんなっ ハルトちゃんが 来てくれるよ……!!」


ドクロッグ「ぐろろっ!」

ルカリオ「ぶるっふっふ……♪」



「波動」を感じてトレーナーの言葉まで理解できるルカリオは、

ビワの嬉しい感情に、つられて笑った。



ビワ「うんっ みんなには…… 言おう 明日集まる日だし

みんなは信じられるから……」


コノヨザル「ぶっきい♪」


ビワ「じゃっ もうちょっとだけ トレーニングしよっか!」


コノヨザル「ぶきゃっ!」

オコリザル「うきゃっ!!」



その後、ビワは持ち前の脚力で、そのままアカデミーの寮まで走って帰った。

スター大作戦の時もボスたちを鍛える傍ら、ランニングを欠かさず行った

おかげで、ポケモンだけでなく自身も鍛え続けることができていた。


22時。アカデミーに着くと、ちょうど「地獄の階段」を登り切った先に

ボタンが立っていた。



ボタン「あっ ビワ姉 お疲れさまでスター」


ビワ「お疲れさまでスター! 何してるのかな?」


ボタン「ちょっとネトゲ落ち着いたから 外に気分転換しにきたんよ」


ビワ「そっか!」


ボタン「ビワ姉 今帰り? トレーニングしてたん?」


ビワ「うんっ 北1番エリアでね それで 走って帰ってきたんだ」


ボタン「えっ あんなとこから!? やっぱ すご……

そうだ ハルトから すごくいい リップさんの情報仕入れた」


ビワ「えっ!? な なあに?」


ボタン「リップさんの切り札は エスパータイプじゃないんよ」


ビワ「そ そうなんだ……! いったい どんな……?」


ボタン「フラージェス……」


ビワ「フラージェスかぁ…… そっか それで ピーニャくんたちが

見せてくれた写真に たまに写ってたんだ 切り札だったんだね」


ボタン「うん リップさんに限らず ジムリーダーたちは

『テラスタル』を駆使して 一見関係ないタイプのポケモンを

エキスパートのタイプに変えてくるんよ」


ビワ「なるほど テラスタルかぁ……」


ボタン「うちも できるっちゃできるけど ガラル帰ってる間は使えんかったから

こっち戻ってから カンを取り戻すまで すげー苦労した」


ビワ「するにしても 特別な授業 受けなきゃ…… でしょ?」


ボタン「それな…… うち あの授業一番最初に受けたけど いつもやってる

わけじゃないっぽいし……」


ビワ「とても 実質あと1日じゃ 間に合わないよね……」


ボタン「でも たぶん条件はそろえてくれると思うし だからさ

そこまで心配しなくていいんでない? フラージェスなら

オルくんのアジトにいたはず」


ビワ「そっか フェアリータイプだから! ボタンちゃん ありがと!

それと…… ハルトちゃん」


ボタン「うふふ ……ねえ ビワ姉」


ビワ「どうしたの?」


ボタン「…… ごめん なんでもない で でも ビワ姉が勇気出したの

うちも嬉しかったりして…… ハハハ」


ビワ「えへへ…… ボタンちゃんっ わたしもすごく嬉しいよ

みんな わたしを喜んで迎えてくれたから!」


ボタン「あ 明日…… 集まるの たしか丁度オルくんとこだったっけ

オモダカさんとこ行くの 夕方からだから 特訓 付き合うよ」


ビワ「ほんとに!? ありがとう ボタンちゃん!」


ボタン「うちも ビワ姉の力になるんで じゃ お疲れさまでスター!」


ビワ「お疲れさまでスター♪」



ビワは満足感にひたりながら、入浴を済ませ、眠りについた。

日付も変わり、6月9日。リップとの闘い……そしてハルトとの対面が、

明日に迫る。


【つづく】

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