ONE PIECE FILM RED (with Aniwara's Pirates)
※新作映画ネタバレ厳重注意。あと違反点あれば即消します。
※放映終了間近に初めて『ONE PIECE FILM RED』を見て脳を焼かれた人間による駄作となります。なお、大まかな展開だけは覚えていますが細部までは原作のそれと一致していないのでご了承ください。そこまで記憶容量はなかった。
※また、ご都合設定や、あにわら概念の解釈が違う点が多々見受けられるとは思いますが、その点もご容赦していただけると幸いです。
映画上映や演劇が始まる前は、必ずと行って良い程に暗闇が空間を包んでいる。これは演出を確実に映し出し、観客達がその世界に没入できるようにするための措置である。特に光を用いる演出では、暗くしておかなければ映写した光の反射光が上手く見えなくなってしまう。しかし、既に会場にいる人々はその日舞台に上がる世界的スターにぞっこんだった。没入している。辺りを見渡しても、同じマークを印した風船や色とりどりに光るペンライト、同じバンダナと、催しが始まる前に漂う、独特の一体感が、来る者全てに、これから始まる夢を期待させた。
その一角の高所。ここからは、惹きつけるような匂いに包まれている。肉の焼ける匂い。鍋からの風味は、周囲にいる人の食欲をそそらせる。これからのライブを、食事をしながら楽しむらしい。
チャカ「凄い人集りだな・・・「歌姫」の人気とはここまでのものとは」
モネ「「歌姫」初のライブ・・・世界中、老若男女問わずここエレジア島まで来ているらしいわ」
ロー「・・・ミンク族もいる。ベポ達も、来ているだろうか」
サンジ「今までは、映像電伝虫を通してでしか見れなかったらしいからな。きっと見に来てるだろ」
麦わらの一味である。彼等もまた、観客としてこのライブに来ていた。
キング「ウチ以外の催しなど見ることはなかったから、よくは分からんが良いのだろうか」
サンジ「・・・ウチの?あ、あのデブが踊ってたアレか」
チャカ「君も聞いたことがあるんじゃないか?モネが最近流し聞きしている曲だ」
キング「成程、それのことか。確かに能なしのと比べると下品じゃない」
サンジ「とか言って、お前も毎日聞いてるくらい気に入ってるじゃないか」
ロー「・・・というか、この格好をする必要はあったのか」
モネ「ライブを盛り上げるためには必要よ」
キング「それに、記念バッチが貰える」
ドレーク(口では言わないだけで随分とはまっているんだな)
チャカ「楽しみだな、人魚達も来ている。まさに世界が1つになったみたいだ」
暗転。
ドレーク「む、そろそろか。ルフィ、ライブが始まったぞ」
ドレークの呼びかけは、片隅に届いた。肉の焼ける香ばしさをまとい齧り付いたまま、ルフィは応じた。
ルフィ「む?」
『・・・新時代は この未来だ 世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば・・・』
刹那、熱狂がドームを包んだ。周囲が流れるように光りだし、耳をつんざくような歓声の中で、その歌声は「君臨」した。伴奏が鳴り響き、一面を覆っていた黒のベールは開かれ、晴天と人々の笑顔が露わになった。ステージ上に異様なほどに存在感を出していた人影が、その姿を見せつけた。「歌姫」ウタ。今ライブの主役にして、主催者である。
全世界がたった1人のスターに注目した。村の片隅にある酒屋から、広場に設営したスクリーンから、それぞれの家庭から。異次元の演出。華やかに咲く花火。海底に栄える王国も、砂漠の王宮も、はたまた見栄を張るように目立つ赤いテントの中でも、世界のほとんどの人間が1つの光景を見つめる。
時は新時代、所は出身問わず集まった人々のるつぼ。歴史に残る最初にして最大の音楽祭は、まるで新たなる時代のうねりを歓迎するが如き勢いと共に、かくて始まった。
~
最初の入りは成功と言えた。観衆は待っていた分感情が爆発したのか、覚めやらぬ熱を声に変え、スターの登場を喜んだ。周囲を見ると、ペンライトを回す者、旗を振り続ける者、感動のために涙を流している者、何かを食べている者と本当に多くの人々がこのライブに集っているのが分かる。
それもそのはず。近年のマスメディアは変わり続ける世界情勢を大衆に伝える役割を全うするため、日夜進化を進めてきた。その中で脚光を浴びたのが「映像電伝虫」だった。普通のそれとは違い、相手の声と共に映像も、全体から細部の輪郭までくっきりと同時中継で映し出すことのできるこの媒体は、たちまち世界に流通した。ウタ・ブームは、この存在を利用した世界同時配信から始まったと言える。
時代の変革と共に、より一層過激・残虐となる戦乱に巻き込まれ、何の救いもなく虐げられてきた人々に、彼女の声は、姿は、その存在は、まさに「救世主」のように映った。その内配信中のコメントにも、彼女を過度に持ち上げるものが徐々に多くなっていった。
ウタ「皆、やっと会えたね!ウタだよ!」
より大きくなる歓声。
U・T・A! U・T・A! U・T・A! U・T・A!
ウタ「ごめん、少し感動しちゃった・・・」
ウタにとっても予想外だったのか、本当に多くの人々が自身を求める姿を見て、少し目頭を抑える。
ウタ「・・・・今日は初めてのライブだよ!皆、一杯楽しもうね!」
その光景には、まるで一種の集団幻想のようなものにかかったような感覚が大きくなっていった。彼等、彼女等にとっては、唯一の救いの手が、差し伸べられたのだろう。ウタの一挙一動に応ずるように、まるでカリスマに従う盲目な民衆のように、彼女の登場を歓迎した。
モネ「まさかこの目で歌姫を見ることができるなんて。夢のようだわ」
キング「・・・悪くはなかった」
サンジ「流石ウタちゃんだなぁ~♡」
ロー「しかし、凄い盛り上がりだな。・・・異常なんじゃねぇか?」
各人思い思いの感想を述べ合う。その時である。さっきまで肉に齧り付いていたルフィが、突如腕を大きく伸ばした。ライブ会場の天井を掴み、その点を支えに大きく、まるでターザンのように飛翔。器用にステージの真ん中に、ウタの目の前に降り立った。
ロー「おい!何してる、戻って来い!」
チャカ「止めたって無駄だ、ウチの船長は・・・」
やはりウタは面食らったような表情をしている。ローは青筋を立てながら戻るように促すも、どうやらルフィにその意志はないらしい。
ルフィ「ウタ、やっぱお前ウタだろ!」
ウタ「・・・・・・え、誰」
ルフィ「おれだよ!フーシャ村で一緒に遊んだルフィだよ!」
ウタ「・・・・・・あっ」
今まで誰もが近づくことも叶わなかった世界的大スターに対し、ルフィはまるで久しぶりに友達に会ったように声をかけた。ウタは突然の出来事に面食らっていたが、どうやら少しずつ思い出してきたらしい。
ウタ「ルフィ~~ッ!」
そして、お互いに抱き合った。
一味『えぇ~~っ?!』
観客席からも一斉に悲鳴や驚嘆が響いた。一味もまた、予想だにしなかった展開に動揺を隠せない。
おい、ウタが知らない男と抱き合ってるぞ!
それによく見て、あの麦わら帽子・・・・・・
間違いないわ、あの“麦わらのルフィ”よ!
ええ、あのワの国を征服したとかいう・・・
怖いよお母さん・・・
どよめきがあちこちから聞こえる中、一味もまたルフィに声をかける。
サンジ「クソゴムてめっ、ウタちゃんとどういう関係だ!」
モネ「それに、昔一緒に遊んだって」
チャカ「ふむ、幼なじみだったのか」
ドレーク「しかしそうだとしても、あの海賊嫌いと称される彼女と接点があったのか?」
ルフィ「だってコイツ・・・
シャンクスの娘だもん!」
再度、驚愕が会場を走った。
ルフィ「ししし、久しぶりだなぁホントに!」
ウタ「ちょっと!急にそんなこと言ったから皆動揺してるじゃない」
ルフィ「でも事実だろ?それに、お前もシャンクス達とずっと一緒にいたじゃねぇか」
一瞬、まさに一瞬だけ、ウタの表情に悲しみが走った。しかし、彼女は何かをこらえたのか、瞬時に明るい顔に戻る。
ウタ「来てくれた皆に、報告があります」
ウタ「今日は、エンドレスライブだよ!いつまでも私の歌を聞くことができるようにしてるから、一杯楽しもうね!」
再度、観客達が熱狂する。ライブは始まったばかりだ。
~
荒れ果てた島に泊められている、1隻の巨大な船。船頭に飾り付けられた、大きなライオンの顔。これまた負けじと大きく張られたマストには、麦わら帽子を被ったジョリー・ロジャー。サウザンド・サニー号である。
その甲板に、1人のんきにいびきをかく者が。そこに1匹の猛獣・・・・否、恐竜がよちよちと近づいた。鼻提灯をくちばしでつつく。
ゾロ「うぉっ・・・何だ、お前か」
ドラゴンは仲間に構って貰えたのか、嬉しそうにグルル、と喉を鳴らした。
カイドウ「起きたか・・・・これでも飲め」
カイドウがボトルを投げ渡す。それを受け取り、口を付けてみるとどうやら水のようであった。一気に飲み干す。二日酔いのために未だ朦朧とした意識が、少しずつ戻ってきた。明朗となった思考を働かせながら、島の探索を始める。周囲を見渡す。曇天。荒れ果てた港。灰色と深緑に占められた無人島。一部が荒廃している城跡。まるでゴーストタウンだ。前日から聞いていたようなライブが開催できるような状態ではない。そして・・・
ゾロ「・・・この音、海軍か」
カイドウ「俺達が来るのを知っていたのか、事前に準備していたようだ。1隻2隻どころじゃねぇな、大船団だろう。早くしねぇとお陀仏だ」
ゾロ「お前に限ってそれは・・・・ま、俺達を追ってきたんなら返り討ちにしてやるか」
カイドウ「・・・・・・いや、奴等の狙いは別だ。もしかしたら、アレのことかもしれねぇ」
ゾロ「・・・・・・?てか、こいつら起きないぞ。起こさなくて良いのか」
カイドウ「麦わら達は起きねぇ」
今、2人と1匹の周りには、何故か一向に起きない仲間達が寝転がっていた。まるで安眠しているように、夢の世界を楽しんでいるかさえ思えるような表情だ。ドラゴンが構って欲しそうにドレークやキングをつつくも、微動だにしない。その光景を見ていると、まるで死んでしまったのかのようにすら見える。
ゾロ「無事なのは、俺等だけか」
カイドウ「そうだな・・・・・・」
ゾロ「どうした」
カイドウ「お前等にも話しておこう。恐らくだが、これからこの事態をどうにかできるのは俺達だけだ」
ゾロ「何をだ?」
カイドウ「ウタウタの実の能力。そしてこのエレジアの伝承を、な」
(続く)