ONE PIECE FILM RED (with Aniwara's Pirates)8

ONE PIECE FILM RED (with Aniwara's Pirates)8


※新作映画ネタバレ厳重注意。ONE PIECE FILM RED (with Aniwara's Pirates) 7の続きとなります。あと違反点あれば即消します。

※大まかな展開だけは覚えていますが展開は原作と一致していないのでご了承ください。また、ご都合設定や、あにわら概念の解釈が違う点が多々見受けられるとは思いますが、その点もご容赦していただけると幸いです。

※当作品は特定のキャラクターを批判する意図はありません。


・誰がどこにいるのか(パート7終了時点)

【現実】

カイドウ、ゾロ、ルッチ→魔王と激突

ドラゴン→父を捜して三千里

緑牛、藤虎、ナミ、ベポ、シャチ→魔王の眷属と交戦中

ウタ→負傷し、海軍のもとで治療中。意識が戻ってない。

【夢世界(ウタ・ワールド)】

ウタ→単独で魔王と交戦中

ルフィとか→結界内に入れない

ウソップとか→後方支援準備中

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最早戦況は絶望的なものになった。唯一自力で対峙し続けてきた「歌姫」ウタは完全に動けなくなり、ただ血と涙混じりに「魔王」を睨むしかできなくなっていた。己の意地も相まって、誰にも助けを求めようとはしなかった。現実世界における己が生きている限りは逃げるにはいかない。外側からの叫びも全部聞こえていたが、無視し続けた。

だが、限界だった。

Tot Musicaの一撃が当たり、グラスが落ちて衝撃で砕け散るように、結界が破れた。ボロボロになったウタが転げるように飛ばされた。ルフィが自らの体を伸縮させ、彼女をキャッチする。地面への衝突は防がれた。


ルフィ「おい、大丈夫か!ウタ!」

ロー「ルフィ、歌姫屋を渡すんだ。こちらで治療する」

ルフィ「ウタ!しっかりしろ!ロー、頼む」

キング「戦えるヤツは魔王を止めろ!来るぞ!」

ドレーク「繋がった、繋がったぞ!」


同時に見聞色の覇気を用いた現世との交信に成功したドレークは、駆られるままに「向こう側」に呼びかける。


ドレーク「こちら、ドレーク。聞こえるか?」

『おい、海軍にいた頃の癖が抜けてないんじゃねぇのか?』

ドレーク「やはり「そっち」にいたか・・・!カイドウ!」

カイドウ『やはりそういうことだったか、お前等は「そっち側」だな!異常はないだろうな』

ドレーク「「麦わらの一味」は全員いる。ただ、ウタが・・・」

カイドウ『成程落とし前をつけようとしたか、根性あるみてぇだな!・・・「そっち」で見聞色使える奴に、繋げるように言ってこい!ロロノア、クズハト。お前等もだ』

サンジ『あー、繋がったか?聞こえるか?』

キング『カイドウさん、無事だったか!』

ゾロ『急にうるさくなりやがった・・・』

モネ『フフ、ようやくの本領発揮ね』

ドレーク『ローは治療に集中している。ルフィもウタの方に気を取られているようだ』

コビー『失礼します、現実世界の方はどうなっているでしょうか?』

ゾロ『あー、今俺とカイドウ、あとハトが「魔王」と・・・おっと、危ねぇ』

カイドウ『後はドラゴンのやつが・・・』



「ん、誰か来たのか」

「・・・人じゃないって?」

「お前、この前新聞に載ってた・・・」

「お、おい!掴むな掴むな」

「ちょ、おい!飛ぶな!その姿勢はキツいんだ」


「ん?電伝虫?録音か」


「・・・・・・」


「・・・すまない、大変だとは思うが、」


-飛ばしてくれないか?全速力で。後、もう1人連れて行きたい。



コビー「準備は整いました。ただいまより、反撃を開始します!」

コビー「まず、ローさんはウタさんの治療をお願いします。ブルーノさんはゴードンさんを安全な場所へ、ロビンさんは治療中の防衛を」

ブルーノ「良いだろう・・・ご老体、こちらだ」

ロビン「任せて」

コビー「モネさんとキングさんは空中からの遊撃を。チャカさん、ブルックさんは地上遊撃、残りの方々でTot Musicaを正面から倒します!」

キング「・・・行くぞ」

モネ「えぇ!」

チャカ「・・・私も見聞色、鍛えるべきかな?」

ブルック「皆さん素晴らしいですね、ヨホホ!」


ルフィ「・・・ウタ」


ウタの顔は傷だらけになっていたものの、今はローの能力もあり何とか落ち着いてきたようだ。まるで疲れて寝てしまった子供を彷彿とさせるような、安らかな表情。ルフィは彼女の側に、麦わら帽子をそっと置いた。大切な帽子を、彼女に預けたのだ。ローは予想外の行動に一瞬驚いたが、ルフィの意図を悟り微笑んだ。


ルフィ「・・・今、全部終わらせるからな。・・・ギア4!バウンドマン!」


そう叫ぶと、ルフィの体に大きな変化が起きる。筋肉が隆々と赤く、燃えるように盛り上がり、顔つきも戦場を駆ける戦士のそれに変わる。いよいよ、反撃の時だ。



「最悪の世代」の中でも、高火力・組織力・知能面において不備のない「麦わらの一味」による連携は、Tot Musicaを大いに怯ませた。急激な多方面からの攻撃に対処できる程の実力は見受けられない。しかし、ダメージが入ってるような素振りもなかった。

ブルーノの能力によってドアの中に避難していたゴードンは、1つの懸念を語る。


ゴードン「・・・駄目だ。これでは、「魔王」を倒すことはできない」

ブルーノ「・・・何?」

ゴードン「そもそも、Tot Musicaは自らを歌った人間を核として動くことができる・・・12年前の事件においてもそうだ。小さい頃のウタを核として、国全体を破壊し続けていた」

ブルーノ「しかし、「歌姫」と「魔王」は分離している・・・まさか、別の者が歌ったのか?」

ゴードン「いや、ウタが発動させたのは間違いないだろう・・・だとすると、ウタはTot Musicaの中に囚われていてもおかしくはなかったはず」


矛盾である。ゴードンの記憶と過去からの伝承によると、発動された人間を取り込むことで猛威を奮うことができる、それがTot Musicaの性質。しかし、トリガーを引いた本人は、今も眠っているのだ。Tot Musicaの外で。前例のない事態だ。


ブルーノ「「魔王」は最早核となる人間など必要はなくなった・・・・」

ゴードン「可能性はある。もう、核となる人間の負の感情に頼ることはない。自らの力のみで、全てを破壊することができるようになってしまった・・・!」

ゴードン「恐らく、世界中にある数多の負の感情を糧に永遠の暴走を続ける・・・!これも、私が楽譜を捨てることをしなかったから・・・・!」

ブルーノ「・・・・今、自責に駆られても事態は好転しない」


-だが、どうすれば良い?


ブルーノもまた、この恐るべき状況に恐怖を覚えていた。



Tot Musicaが瘴気を纏わせる。その毒性の強い紫と血のような赤が混ざり合ったオーラはワールド全体を覆っていった。ウタから吸い取った負の感情では満足しなくなったのか、いよいよ他人から、すなわち一味からもマイナスエネルギーを吸収せんと動いたのである。


チャカ「あれは不味い・・・!皆、逃げろ!」


チャカによる必死の呼びかけも虚しく、追撃は激しかった。周囲からも、苦悶するうめき声や倒れ込むような音が続く。強い毒性にやられたのだ。だが、即死するものはいない。周囲を見渡しても、この攻撃で死んでしまった者はいなさそうだ。


ルフィ「ゴムゴムの~・・・」


しかし、ルフィだけは怯む様子もなく、ギア4を維持したまま「魔王」の懐に突っ込んでいった。


ルフィ「獅子・バズーカァ!」


どうやら現実世界の方でも見聞色による交信を通してタイミングを合わせた攻撃が行われていたらしく、何度目かも分からないよろめきを見せるTot Musica。かつてドンキホーテ・ドフラミンゴに大ダメージを与えた大技だ、効き目はあっただろう。しかしすぐに体勢を立て直し、寧ろ先程よりも余裕そうな表情を浮かべ進撃を継続する、まさに絶望を与える「魔王」の存在は、戦意を喪失させるのに十分だった。


ロー「おい、歌姫屋・・・クソッ、悪化してやがる・・・・!」


背後でロビンに守られながら行われているウタへの治療も難航。万事休す。


ルフィ「クソぅ・・・どうなってんだ」

カイドウ『おい麦わらァ!鬼ヶ島で俺をたたき落としたあの形態はどうした?!』

ルフィ「アレは偶然発動できたようなもんだ・・・!うわぁっ!」


隙を突き、霧に巻き込まれるルフィ。遅い動きとは裏腹にその中身では竜巻を思わせる勢いの鎌鼬が吹き荒れ、ルフィの体を蝕んでいった。視界が悪いが、よくよく見ると「魔王」が吸い込んでいるではないか。抵抗も意味無く、ルフィはTot Musicaの中に吸い込まれていった。


一味『ルフィ!』

コビー「ルフィさん・・・!皆さん、ここは撤退を、」


Tot Musicaが突如として動きを止めた。まるで元から動かない彫像のように、はたまた凍り付いてしまったかのように、ピクリともしない。


ゴードン「何が、あった・・・?」



ルフィ「あぁぁぁぁぁぁぁ~~・・・・」


ドスン。


ルフィ「痛ってて・・・ありゃ、ここ何処だ」

ルフィ「おーい、お前等無事か~・・・あー、ここトットコムジナの体内か」

ルフィ「何も見えねーぞ、これどうしたら良いんだ?肛門から出るしかないのか・・・ん?」


ルフィの目の前にいたのは、小さな小さな影法師。座り込んですすり泣くだけで、こっちを見向きもしない。全身が深い闇に閉ざされ、その姿も分からない。だが、ルフィにはその影が誰か、本能で分かった。


ルフィ「お前・・・ウタか」


すすり泣きの声だけが、空間に響く。



現実世界でも、Tot Musicaの理不尽な力が仲間達を襲い続けている。揺れが海軍艦隊にまで届き、重症を負ったウタの手術は鈍化、事態悪化は避けられなかった。


その時である。簡易手術室のドアが強く叩かれた。取りかかり真っ最中の軍医達は顔を見合わせる。今できる限りの人員がここにいるはずなのだが、まだ軍医がいたのだろうか。それとも、海軍大将のお二人か。逡巡する内に、そのノック音は強くなっていった。苛立ちが感じ取れる。


「あーもう、入るぞ!」


大きな音と共に、冷たい雷雨の風と雨水が降り掛かる。周囲が暗くなっているために瞬時に誰が開けたのかは分からなかった。


軍医「お、お前!」

ホンゴウ「俺も医者だ!何よりその娘の親!入っても良いだろう!」


ほ、本物の「赤髪海賊団」だ・・・

待て、娘って言ったぞ?

お前配信聞いてなかったのか?麦わらが言ってたじゃないか。

まて、コイツがいるのなら・・・


周囲の動揺も意に介する事なく、ホンゴウも手術に参加する手筈を終えた。彼が持ってきた鞄の中には、まさに今必要だった薬品や道具が丁寧に入ってあった。


ホンゴウ「成程、右半身に大きな怪我・・・おい、どこまで進んでるか教えてくれ」

軍医「あ、あぁ」


その手際の良さはその場にいる誰に対しても引けを取らないものだった。軍医達は彼の補助に精一杯だ。


軍医「お前が来てるなら、他の仲間も・・・?」

ホンゴウ「ん?あぁ、後1人だけ来てるな。途中で海に落ちたけど」


-2人だけで、ここまで来た?



ゾロ「タフな奴だ、しつこいぞ!」


カイドウ、ルッチ、ゾロ。世界屈指の実力者達による猛攻でさえも、「魔王」の牙城は崩れなかった。それどころか、周囲に漂わせた瘴気から回復をしているようにも見える。


ルッチ「流石にこのままでは不味いぞ」

ゾロ「んなこと言われなくとも知ってんだよ・・・!」

カイドウ「こうなったら、熱息で吹き飛ばすか・・・?」


龍形態による広範囲奥義・熱息はまさに最終手段である。だがその大規模すぎる威力では、エレジア島ごと吹き飛ばしてしまう。そうなると、「ウタ・ワールド」が解除され戻ってきた能力者は海に落下してしまう可能性から、中々繰り出すことはできなかった。


ルッチ「犠牲を問わないならアリじゃないか?」

ゾロ「オイ待て、身内がいるんだ」

カイドウ「そうなんだよな・・・おい、止まってねぇか?」



ルフィ「ウタ、一緒に帰ろう」

ルフィ「お前の気持ち、おれには分からねぇ。確かにおれには理解できない」

ルフィ「もしおれがウタみたいな事になったら、多分ダメだった」

ルフィ「・・・ごめんな。お前の気持ち、分かんなかった」


ルフィはギア4を解き、すすり泣く影法師の隣に座り、ただ話しかけた。彼は、この存在をウタと認識し、その考えを正しいものと信じて行動していた。


ルフィ「シャンクス達のことも、ゴードンのおっさんのことも、おれ達のことも」

ルフィ「皆のこと大好きだから、守ろうとしてたんだな」

ルフィ「お前、言ってくれてたじゃないか。フーシャ村の丘で」


“私は、皆が笑顔になれるような「新時代」を創ってみせる!一流の音楽家として!”


ルフィ「それでここまでデッカいライブまでやってさ、凄ぇよ」

ルフィ「来てた皆も、おれの仲間も。皆笑ってた」

ルフィ「おれも、久しぶりにお前の元気そうなとこ見れて、嬉しかった」

ルフィ「だからさ、もう一度やろう!ライブ!」

ルフィ「今回のはまぁ・・・・色々とヤベーことになったけど・・・おれも邪魔したし・・・そこはごめん!」

ルフィ「でもさ、折角ここまで辿り着いたんだろ?おれが「夢の果て」を叶えるよりも早く」

ルフィ「今度はウタだけじゃなくて、おれも、俺の仲間も、ゴードンのおっさんも、観客の皆も、勿論シャンクス達も!皆でデッカいライブしよう!」


-イイノ?


ルフィ「おれは嘘は吐かねぇ!」


-ワタシ、ウラギッタ。


ルフィ「それに関しては・・・まぁ何とも言えねーけど・・・でも、まだ遅くはねぇ!」


-ワタシ、アイサレナイ。コンナコトシタカラ。


ルフィ「そうだ、それはお前がやったことだ。でも、そこから逃げるのはもっと良くねぇ」

ルフィ「大丈夫だ!おれが側にいるよ!おれは、お前のこと嫌いにならない!」


-・・・・ホントウ?


ルフィ「モチロンだ!お前も知ってるだろ、ウタ。だってアームカバーにあのマークあったし」

ルフィ「おれの描いた「マーク」!」


“・・・何これ”

“麦わら帽子だ!上手いだろ!にしし”

“ヘタクソ。瓢箪じゃん”

“違う!シャンクスの被ってる麦わら帽子だ!”

“ふーん”

“これを、おれ達のマークにしよう!「新時代」の!”


ルフィ「覚えててくれてたんだろ?」


-・・・・・・


ルフィ「だからよ、おれも頑張るよ。絶対、「夢の果て」まで実現してみせる」

ルフィ「ウタも、もう一度一緒に頑張ろう。大丈夫、皆もいるよ!おれも、お前の夢を見てみたいんだ」

ルフィ「それにずっと泣いてたら、折角の可愛い顔台無しだぞ」


-・・・フフ

-・・・ヘンナコトイワナイデ、ワラッチャウジャナイ


ルフィ「変じゃねぇ!これでも審美眼はあるぞ!おれの仲間も顔良い奴ばかりだ!」

ルフィ「それにシャンクスの娘なんだろ?普通のこと言っただけだ」


-フフ、アハハ・・・

-有り難う、ルフィ」



ゾロ「何か・・・光ってねぇか?「アレ」」

カイドウ「何だ?」

「流石ルフィだ・・・・・・借りができてしまったな」

ルッチ「貴様は・・・・成程、当事者として来たのだな」

シャンクス「あぁ。そして娘を、助けに来た!」


隆々としたドラゴンの背中に乗ってやってきたシャンクス。かつて苦戦を強いられたTot Musicaの目の前にあっても、余裕を崩すことはない。


ルッチ「・・・潮臭いのだが」

ゾロ(あぁ、ネコネコの実の能力者だから余計に臭うのか)

シャンクス「仕方ねぇだろ、コイツ(ドラゴン)、飛ばしてくれたのは良いが早過ぎるから2回も海に落ちたんだぞ。折角の一張羅がベショベショだ」

カイドウ「振り下ろされるお前が悪いんだろ、俺の愛弟子に文句言うな」


シャンクスから強烈な覇気が出てきた。そして、皆が繋いでいた見聞色の世界に入る。これで、連携が可能になった。動きを止めていたTot Musicaも、中からの光が収まったかと思えば再び巨体を持ち上げ、咆哮した。動き出したのだ。


シャンクス『割り込む形になってすまないが、俺も一矢報いさせて貰うとしようか!』

ゾロ『「主役」が来た・・・!面白くなってきやがった!』


(続く)









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