Nastily Exhausting Wizarding Tests
requesting anonymity毎年、その年のクリスマス休暇が終わりホグワーツの授業が再開すると一部の生徒はいよいよ遊んでいる余裕など無くなる。それはO.W.L.試験を控えた5年生と、N.E.W.T.試験を控えた7年生達が成績の良し悪しに関わらず共有する危機感と焦りだった。
どれだけ成績が良かろうが今後の進路、ともすれば人生をも左右する試験が近づいてきているとあれば誰だって必死になって勉強するし、「優秀」と評判の生徒に指導を求めたりすることも、一部の特に優秀な生徒たちが教師顔負けの振る舞いを見せるのも毎年この時期のホグワーツの風物詩と言えた。
「タッカー先輩、天文学教えて下さい!」「いいよ。どこで詰まってるんだい?」
「サロウ先輩、『防衛術』の実技が不安なんですけど……」「ああ、練習しようか」
「ウィーズリー先輩!魔法薬学教えて下さい!」「もちろんかまわないよ」
「ギャレスー!魔法薬学の勉強したから褒めて!」「はいはいお疲れ様」
1人だけ方向の違う発言をした7年生の女生徒は友人であるギャレス・ウィーズリーに頭を撫でられながら、自分は自分で他の生徒の救援要請に応じている。
「『盾の呪文』はもちろん練習しておくべき。だけど魔法しか防げないから、最後に物を言うのは君の勇気と足腰の強さだよ。良いかい?盾の呪文をぶち抜いてくる呪いとかもあるからね」
ギャレスにポップコーンを給餌されながらハッフルパフ生にアドバイスした女生徒に、1年生でありながら既に一部の教科について「アドバイスを求められる側」であるダンブルドア少年が声をかけた。
「先輩方、随分ひっぱりだこみたいですけど、ご自分の勉強はよろしいのですか?」
その疑問に答えたのはスリザリンの5年生女子に天文学の指導をしているアミットだった。
「勿論ちゃんとやってるさ。けどどれだけやったって不安は不安だし、だからって根を詰めすぎても良くない。それに」
「ひとに教えるのって、結構勉強になるんだよね」
引き継いでそう言ったギャレスは更に話を続ける。
「それにコイツの場合、『防衛術』と呪文学と魔法生物学と……ていうかどの科目も『実技』は心配要らないだろうね」
そう褒められて表情を緩ませる女生徒を見て、ダンブルドア少年はふと気になった事があった。
「そういえば先輩って5年生の時にホグワーツに編入してきて、それより前は魔法教育受けてなかったんですよね?『O.W.L.』どうなさったんですか?」
「結果通知まだ持ってるだろう?見せてあげたら?」
ギャレスにそう言われた女生徒は何やらモゴモゴ呟きながら、気が進まなそうに旅行かばんを取り出し、中に杖を突っ込んで1枚の通知書類を「呼び寄せ」た。
渋々といった感じで差し出されたそれを、ダンブルドア少年は受け取って開く。
「あ、スゴイ!!全ての教科が『可』以上じゃないですか!」
褒められた女生徒は「占い学とか魔法史とかギリギリだったけどね」と振り返る。
「ビンズ先生もオナイ先生も、他の先生方も『あなたは今年ホグワーツに来て、今年から魔法教育を受け始めたのですから、それで成績が不適当だから来年以降はこの教科は受けられない、というのは教育として不適切だという結論になりましたので、可より上の成績であればどの教科もN.E.W.T.レベルを受講してかまいません』って言ってくれたんだ。それにみんなが勉強に協力してくれてねー…………」
にこにこしながらそう語った女生徒にとって、どうやらその「一昨年の試験勉強」は楽しい思い出であるらしい。
「呪文学『優』、闇の魔術に対する防衛術『優』、魔法生物学『優』、変身術『優』このへんはまあスゴイけど予想通り…………ん?なんですこの最後の文章」
ダンブルドア少年がそう言った通り、その通知書には、各教科の試験結果が記された紙面の1番下に、「備考」という本来存在しない項目があった。
「これウィーズリー先生の字ですよね…『総括して、素晴らしい成績だと言えます。しかし授業の成績以外の部分、規則遵守の態度などに難があります。服はきちんと制服を着用して、それと、お菓子をもっときれいに食べられるように練習しましょう』なんですかこれ…………先輩…………」
O.W.L.の結果通知にそんな事を書かれるのは前代未聞だったし、それに何よりそこに書かれていた問題行動が7年生である現在も一切改善されていない事はダンブルドア少年がこの女生徒を「尊敬する先輩」だと素直に言えない原因だった。
「どうします先輩?N.E.W.T.に向けて、お菓子をキレイに食べる練習します?」
笑いながらそう言ったダンブルドア少年に女生徒は「し、しないよ!」と言いつつ目を逸らす。
「いやしたほうが良いだろお前は…………毎度毎度ボロボロ食べこぼしてるくせに」
5年生のレイブンクロー生に「防衛術」の実技指導をしながらのセバスチャンのその物言いにその場の皆が同意を示すかのように笑ったが、しかし同時にこの女生徒は確かに、現在ホグワーツに在籍している全ての生徒の中で最も優秀でもあるのだった。
「ね、魔法生物学の勉強つきあってくれない?」
どの教科より魔法生物学が得意なハッフルパフの7年生ポピー・スウィーティングからそんなふうに頼られるくらいには。