Nastily Exhausting Wizarding Tests (おまけ)

Nastily Exhausting Wizarding Tests (おまけ)

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N.E.W.T.試験をあらかた終え、残りは真夜中に行われる天文学の試験のみとなった7年生達は、天文学にこそ最も重きを置いている一部の生徒以外はもう半ば終わったような気持ちで居るのだった。

「あ、先輩方。お疲れ様です!ご入用かと思いまして、お呼びしました」

グリフィンドールの談話室に連れ立って入ってきた7年生達を歓迎した1年生のダンブルドア少年は、N.E.W.T.で疲れ切った先輩方の為に下級生みんなで準備しておいたお菓子やら飲み物やらを示して笑顔を見せる。

「おねーちゃん達、おつかれさま!」

「お疲れ様です皆さん。あの、私試験のお話聞きたいです!」

「先輩方の精神的疲弊に効く」というダンブルドア少年の判断で招かれた1年生と4年生のハッフルパフの姉妹が7年生の先輩達に駆け寄る。

「ああ、僕らもちょうど聞いてほしかったし、色々話そうか」

抱きついてきたハッフルパフの1年生の女の子の頭を撫でながらギャレスが言う。

「私もご一緒していいかしら?」

7年生の女生徒が、そう声がした方に目をやると談話室の奥のソファに座っていたのは数時間前に受けた「闇の魔術に対する防衛術」の実技試験で女生徒の相手役を勤めた1人である闇祓いの若い魔女だった。

「あー!お姉さん!そりゃあもう是非に!」

みんなが各々好きな位置に着座し、お菓子やら飲み物やら下級生やらに囲まれて話し始める。

「みんな随分仲良しなのね?」

ソファに腰を降ろしたギャレスの膝の上に座っているハッフルパフの1年生の女の子と、その姉である同じくハッフルパフの4年生の女子がこれまた7年生の女生徒の膝の上に座ったのを見て、闇祓いの若い魔女がクスクス笑った。

指摘されて初めて距離の近さを認識したらしい4年生の女子は慌てるが、女生徒の膝の上から退こうとはしない。

「そういえばさ、皆『魔法生物学』の実技どうだった?」

自分の膝の上の4年生の女子にマフィンを渡しながら女生徒が友人達に訊く。

「なんの対応させられたんですか?キマイラ?ヌンドゥ?」

ダンブルドア少年は先輩方の話を聞くのが待ちきれないらしく、椅子から身を乗り出している。

「「「「「「「 麒麟 」」」」」」」

談話室中の7年生全員が声を揃えて言ったその答えは、ダンブルドア少年を少なからず驚かせた。

「え、麒麟ですか?もっと危険なヤツじゃなく?あ、でもそれなら確かに『適正』を見られるのかも………」

「僕もてっきりもっと危ないヤツの相手させられるんだと思ってたよ。コイツに協力してもらって『アクロマンチュラに追い回されつつデミガイズを捕まえる訓練』とかもやったんだけどね。…………アレはまあでも結果的に筆記の方の役に立ったか」

オミニスが常軌を逸した硬さであるらしいロックケーキに苦戦しながら言った。

「ね、あのさ。麒麟にお辞儀された時って、お辞儀返していいんだっけ?僕なんかで読んで知ってたのにあの本番で忘れちゃって…………」

女生徒のその発言で最初に驚きの声を上げたのはポピー・スウィーティングだった。

「ええ?!あなた麒麟に『お辞儀』されたの?ホントに?」

ポピーのその驚き様を受けて、他の7年生達もちらほらとその話の重大さに気づき始めるが、当の女生徒は知っている筈のその知識を未だ思い出せないらしく「そんなスゴイ事だっけ…………うー……ここまで出てるんだけどなー」と唸っている。

「麒麟には予知能力と『相手の魂を読み取る能力』があります。それはつまり目の前にいる人間が―もちろん人間を相手にした場合にのみこれらの能力が働くと決めつけるべきではありませんが―どのような性根の人物か正確に見極める事ができます。そして、目の前の相手が真に純粋であり、そうするべきだと彼ら自身が判断した場合にのみ、麒麟は目の前の人物にお辞儀をすると言われています」

そう言ったダンブルドア少年は、女生徒の目を見る。

「純粋?先輩が????『純粋』???『混沌』の間違いでは?」

「失礼だなアルバスは!」

「麒麟がそう判断したのなら、それが真実」とポピーが自分自身に言い聞かせる。そして皆が「まあ確かに純粋と言えば純粋と言えなくも」と納得しつつあった時。

「ねえ、みんなはホグワーツ卒業した後どうするの?」

と若い魔女が7年生達に問いかけた。

「魔法生物学者を目指しています」とポピーが言う。

「魔法薬の研究に専念できれば、それに越したことはないね」とギャレスが膝の上の女の子にクッキーを与えながら笑った。

「僕は普通にホグズミードのお店を引き続き………ペニーもファスティディオも家族みたいなものだし………」と言った女生徒の目を若い魔女は、まっすぐに見つめる。

「闇祓いになるつもり、ない?」

それは女生徒にとって、少なからず興味を惹かれる提案だった。

「副業禁止だったりしないなら、興味はある、あ、あります」

女生徒はまるで面接でも受けているかのように緊張して返事をし、自分の膝の上に座っている4年生の女子に縋るかのようにその体を強く抱きしめた。

「いいじゃないですか闇祓い。先輩は誰かに手綱引かれてた方がいいですよ」

ダンブルドア少年のその言い草に皆が笑う。

「条件ってどんな感じなんです?『闇祓い』になる、というか『なろうとする場合にまず求められる』前提条件は?」

セバスチャンの問いかけに、現役の闇祓いである若い魔女が丁寧に説明する。

「とりあえず『魔法薬学』『薬草学』『変身術』『呪文学』そしてもちろん『闇の魔術に対する防衛術』でN.E.W.T.を取得している必要があるわ。勿論他の科目の成績も良いに越したことは無いし、薬草学が魔法史に置き換わったりしてもある程度は許容されるけれど。でも最低5つはN.E.W.T.の『良』か『優』が必要。そして性格、というか人間性が適格であると判断されないといけない。これはテストを受ける事になる。それと副業は別に禁止されてないわ。もちろん両立が大変だからほとんどいないけどそれで評価が不利になったりはしない。で、あとは犯罪歴があるとものすごく不利になるわ。それだけで一発不合格もあるわよ」

「犯罪歴は大丈夫だよね。だってバレてないから」と言い放ったオミニスに女生徒が「ちょっと!」と慌てるが、若い魔女は冗談として流してくれたようだった。

「やましいことや見つかりたくない所持品があるなら処分しておくか、それを補って余りある程の能力を示せるように努力することね?」

若い魔女はそう言って笑い、生徒たちに「皆の話をもっと聞かせてくれる?」と促した。その柔らかな雰囲気に絆されて7年生達は受けた試験の話と残った天文学の対策の話や普段の他愛も無いエピソードなどをとめどなく話すのだった。

そして宴もたけなわと言った雰囲気になった頃。

「え、あ。今かあ!最近安定してたのに!」

いきなり女生徒の姿が変わり始め、数秒後には背の高いシルバーブロンドの男子生徒がそこに居た。

「は???え、なに?変身術?ポリジュース薬?」

目を丸くする闇祓いの若い魔女が、今の今まで女生徒だった青年に「どっちでもないですし『七変化』でもないです。ちょっとややこしい事情でして………」と詳しく説明されてますます驚いている。

一方その女生徒だった青年の膝の上に未だ座っているハッフルパフの4年生の女子は「妹ならともかく自分の年齢で、家族でもない男性の膝の上に座っている現状は傍から見ればマズいのではないか」ということに思い至って1人赤面していたが、しかしそれでも女生徒だった青年の膝の上から降りようとはしないのだった。

ダンブルドア少年だけがそんな4年生の女子の挙動不審っぷりに気づき、理由を察してクスクスと笑い始めた。

「え、何アルバス急に。どうしたの?」と7年生の青年が訊く。

「い、いえ、なんでも。なんでもありません………」

ダンブルドア少年はどうにかそう答えたが、4年生の女子が真っ赤な顔でこちらを見て「説明しないで!」と目で訴えているのを見て笑いを堪えることはできなかった。そしてダンブルドア少年はその4年生の女子に、そんなに恥ずかしいなら先輩の膝の上から降りたらいいじゃありませんか、と言おうとしてやめた。



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