NARCISSISM
1「マツィヤちゃん...あれからずっと元気がないね」
「そうだな...ダルヴァが何をやらかしたのかは知らねえ なんにせよ聞かなきゃならない事は山積みだな」
ダルヴァに何か言われたマツィヤは何も手につかず意気消沈している
だが時折なにか文献を漁ってやり始めたのが『弓矢の作成』と練習であり...弓の扱いはてんで駄目であった そもそもダルヴァが弓を使って無いのだから知識も経験も足りず唯一得意そうな石田は今一護達とは別行動中である
ある程度練習して疲れたのかマツィヤはぼんやりと空を眺めていた
『過回復』という言葉がこの世にあるのじゃがな 保健体育では筋肉の成長などで触れられることもあるじゃろうが...
「俺が保健体育の教科書で見るのは精々アレの部分だけだぜ」
こっちもテストにも出るから覚えておくもんじゃぞ!?ともかく過回復じゃがこれはおぬしの完現術にも適応できる可能性があるから覚えておくべきじゃ!ちなみにこの場合は『自己愛』が大切じゃろうな
「...なんかそんな事言ってたなダルヴァの奴 俺自身ってなんだろうな?」
ダルヴァと別れてから一護たちが来てパン食ったりなんだりした 『滅却師』は今思えばダルヴァが口にする割に気にしたことは無かった
『滅却師』は弓矢を使う でもダルヴァは使ってない
『滅却師』は虚を滅却する でもダルヴァにそんなやる気はない
ダルヴァの言う『滅却師』ってなんなんだ?
ダルヴァと比べて不器用な手で作った弓の弦を力なく引く 乾いた笑いが出るほど稚拙な出来だ 恐らくメダカでも指先から放った方がまだマシだ
少し時間が経って虚圏の異変が起き一護たちと共にマツィヤは虚圏へと向かう
正直言って情報が全くといっていいほどに頭に入ってこない
何かが死んでて何かが殺している 青い光に少しだけ目を奪われる
「避けろマツィヤ!!」
返答もする間もなくマツィヤの体は吹っ飛んで転がって行った
頭に直撃し転がる内に弓矢は役目なんて忘れて壊れていった...ダルヴァ謹製の体はいつも通り脳震盪を起こしている頭部以外はぴんぴんとしているが
「夢見半分の状態で喰らってその程度の負傷とは...己の力の不足を戒めるべきかそれともあの陛下の"『忠臣』気取り"の技量への考えを改めるべきか考え物ですねぇ」
「『忠臣』...?」
"陛下とその忠臣"それがよくダルヴァの口から出ていた言葉だ
正直色々とダメなとこが多くて忠誠だとか敬うとか考えつかなくとも...家族として一緒にいたダルヴァとの関係を壊したのは 『陛下』と『忠誠』だ
「マツィヤちゃん 大丈夫!?」
井上織姫が治そうとしているが...それを拒否する とりあえず難しいことに直面した時は考えをシンプルに...ダルヴァの受け売りだがそれを実践する
「俺の邪魔するモノは全部ぶっ殺す!陛下とやらでもダルヴァでもそうだ...ぶっ殺す!」
自分の傷を治すために頬を食いちぎり雑魚を出し無理やり飲み込む...あまりにマズくて一度吐き出したが無理やりねじ込み治しきった
キルゲには力が及ばなかったが治す要領と無理やり飲み込む方法は掴んだ...強くなる...この世は弱肉強食 適応して進化出来なきゃ終いなら 愛せるような強い自分に改造するのもきっと最適の手法の一つだ