Misconceptions and correct answers

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ホグワーツ魔法魔術学校の7年生の女生徒が抱え込んでいた魔法生物達を大量脱走させたことによって引き起こされた大混乱は、ホグズミード村での大捕物こそ一網打尽にして闇祓いに引き渡して一応の落着となったが、騒ぎと混乱は丸1日経ってもまだ終息していなかった。

ものすごい美人のスリザリン生レストレンジを伴って必要の部屋から出てきた女生徒が、待ち構えていた友人達に呼び止められる。

「やっと出てきたか。君さ、大丈夫そうだからってウチを後回しにしてるよな」

レイブンクローの7年生アミット・タッカーが女生徒に言う。

「談話室ですか?どうなってるんです?」

グリフィンドールの1年生、小さなダンブルドア少年の問いに、アミットは「疲れた」と身振りでアピールしながら答えた。

「スフィンクスが居座ってるんだよ!暴れられちゃかなわないから疲れた奴は交代しながら皆でずっとスフィンクスが出す問題に答え続けてるんだ。昨日から!正直な話ダンブルドア君には一刻も早くこっちに参加して戦力になってほしかったけど、コイツがずっと連れ回してるもんだから……………」

それを聞いてダンブルドア少年は「すぐ行きましょう先輩」と女生徒を急かす。しかし女生徒は呑気だった。

「んー、それじゃあそうしよっか。一緒に行きたい人!!」

友人達は「訊かれなくたって着いてくよ」と顔に書いてあったが、全く話を聞いていなかったであろう通りすがりの下級生達が元気に手を挙げた。

「はい!!わたし一緒に行きたい!」

と言いながらハッフルパフの1年生の女の子が7年生の女生徒に抱きつき、その隣で「私もご一緒したいです」とグリフィンドールの制服を着た1年生の女子が控えめに主張する。そしてその2人より頭1つ背が高いグリフィンドールの制服を着た男の子が「僕もついていっていいかなあ」と恐る恐る同調した。

「よーしじゃあみんなでレイブンクローの談話室にスフィンクス見に行こうか!」

と女生徒が元気な1年生3人に笑顔を向け、その横からダンブルドア少年が同級生達に話しかける。

「ロングボトム君もブラウンさんも、先輩に着いてきてホントにいいの?」

そう訊かれたグリフィンドールの1年生の女子は、7年生の女生徒に飛びついて頭を撫でてもらいながらにこにこしているハッフルパフの女の子を見ながら笑う。

「だってこの子がその先輩の話ばっかりするんだもの。気になるじゃない?」

少し背が高いグリフィンドールの1年生男子ロングボトムも同調する。

「ダンブルドア君だっていつもその先輩に着いて行ってるし、楽しいんだろ?」

そう言われたダンブルドア少年は一瞬硬直してから「まあ、退屈はしません」のような事を小声で呟いた。

「あ、照れてる。かわいい」

グリフィンドールの1年生女子ブラウンがそれを見てクスクス笑う横で、スリザリンの7年生イメルダが、さっきまで7年生の女生徒と2人っきりで「必要の部屋」に籠もっていたらしいものすごい美人のスリザリン生レストレンジに小声で質問する。

「あんた耳も顔も真っ赤だけど、アイツと2人でなにしてたんだい」

「い、言えるわけ無いだろ!!!内緒だよ内緒!!」

レストレンジがイメルダ以外には聞こえない声量で大慌てで返すが、イメルダはニヤニヤしながらさらに問い詰める。

「耳と顔が赤いってのは嘘なんだけど、あんたホントにわかりやすいね。言えないような事してたわけね?…………のめり込み過ぎないようにしなよ」

そう言われたレストレンジは今度こそ本当に耳まで真っ赤になりながらイメルダをバンバン叩くが、イメルダは痛がりもせず笑っている。そのやりとりがしっかり聞こえていた当の7年生の女生徒は「個人的な相談に乗ってあげてただけ」というつまらない真実をイメルダに知らせる事はせず、噂として広まったら厄介な事になりそうな誤解が膨らんでいくのを甘んじて受け入れるのだった。だってそのほうが楽しいから。

「どっちから誘ったんだい?」

「アイツからだけど!そうじゃないんだってば!!!!!」

そして友人や下級生達と一緒に7年生の女生徒がレイブンクローの談話室に到着するとそこでは2人の教授を含む何人もが腰を据えて、座り込んでなお天井ギリギリの大きさを誇るスフィンクスと戦っていた。

と言っても誰も杖をスフィンクスに向けていないし、立ち上がってすらいない。どころか菓子や飲み物、仮眠用らしきハンモックまで用意されていた。スフィンクスを背もたれにしている者すらいる。

「まず長女が到着した。次に次女が、そして三女が到着した。しかし三女は長女よりも到着するのが早かった。そして今、次女が到着した。この3人の名前は何か?」

スフィンクスの出題を受けてみんなが一斉に考え始め、やがて床に置いたクッションにすわっている薬草学のミラベル先生が手を挙げた。

「朝、昼、夜。1日の始めにまず朝が来て、次に昼が来て、そして夜が来る。その次にまた朝が来る。今はちょうどお昼」

「正解。では、『マグル生まれ』と『スクイブ』はどちらが先?」

またしても皆が考え込み、数分後に監督生バッジを付けたレイブンクローの青年が口を開いたが、あまり自信がなさそうだった。

「『同時』だと思う。だってどっちも魔法族が勝手にそう呼んでるだけだから。魔法族がこの世に生まれた時に、マグル生まれとスクイブもまた潜在的に発生した。後に起こり得る『可能性』として」

「不正解!しかし良い考察ではあった。ヒントをやろう。『なぞなぞではない』」

スフィンクスのその発言をうけて、スフィンクスにもたれかかって紅茶を飲んでいたへキャット先生が回答する。

「マグル生まれの魔法使いは、その祖先を辿ると必ず『スクイブとマグルの夫婦』に辿り着く。そして『魔法族の最初の1人』の話をしてるとしても、その『世界で最初に魔法力を発揮した人間』より先に『魔法力を宿していたが発揮しないまま一生を終えた人間』が居た可能性を捨てきれない。答えは『スクイブ』」

「正解。では―」

そんな光景が広がるレイブンクローの談話室を見渡して、アミットは女生徒に言う。

「ずっとこうなんだよ。昨日からぶっ続け。なぞなぞと哲学的な問いと単に知識を問う難問が気まぐれに混ざってるんだ」

肩を竦めて見せ「困ってる」と態度で示すアミットの横でダンブルドア少年以外の1年生達は「おっきー…………」「かっこいい」とスフィンクス自体に興味津々で見とれている。そしてスフィンクスがレイブンクローの監督生の回答に「正解」と返した直後、そのスフィンクスはダンブルドア少年の方を真っ直ぐに見つめてきた。

「不死鳥の『動物もどき』は不死たりうるか?」

スフィンクスの問いを受けてダンブルドア少年は深く考え込む。

「アニメーガスは、変身していない間は普通の人間と何ら変わりありません、なのでその者は変身していない間は『燃えてまた生まれる』事はできないと考えられます。つまり外傷や『アバダ・ケダブラ』などで死ぬ可能性があり、『不死たりえない』」

そのダンブルドア少年の回答をスフィンクスが称賛すると、女生徒がスフィンクスの前に歩み出て「楽しい?」と尋ねる。

「健康な者が攫われて宮殿で画家となったが若かったにも関わらず首を切られ、頭が5つ並べられた。これは何だ?」

「幸せな時間過ごせたのね。よかったよかった。じゃそろそろおうち戻ろ?」

女生徒はスフィンクスの質問に即答して旅行かばんの中に戻るよう促す。それを見ながらミラベル先生が「ねえ今のどういう意味かしら?」と隣のレイブンクロー生に訊いている。

「ダンブルドア君、最後のなぞなぞわかった………?」

背が高めのグリフィンドールの1年生ロングボトム少年が小声で訊くが、ダンブルドア少年は考え込んでいる最中だった。そしてその横の同じくグリフィンドールの1年生の女子ブラウンが「わかった!」と声を上げる。

「『健康(Health)攫われて(Abducted)宮殿(Palace)画家(Painter)若かった(Young)』で、頭が5つ並ぶと『幸せ(Happy)』」

ブラウンは簡潔に解説すると、友人である2人の1年生、ハッフルパフの女の子とグリフィンドールのロングボトムの方を向く。

「つまりあのスフィンクスは満足したのよ。みんなにいっぱいクイズ出せて」

それを聞いたハッフルパフの女の子は「すごーい!」と喜んでグリフィンドールの1年生の女子ブラウンに抱きつき、当のブラウンは「やめ、落ち着きを覚えなさい!」と言いつつ受け入れている。

そして開放されたレイブンクローの談話室の片付けが進む最中、ハッフルパフの7年生、ポピー・スウィーティングが飛び込んできた。

「ここにいたのね!いい加減ハッフルパフの談話室にも回収しに来てほしいんだけど!!みんなで相手して大変なんだから!!!」

昨日から続くホグワーツの大混乱の終結はまだまだ先だった。

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