Madness, sanity and empty energy

Madness, sanity and empty energy

requesting anonymity

我慢の限界といった雰囲気を放つポピー・スウィーティングに急かされてハッフルパフの談話室の前にやってきた7年生の友人達とそれに着いてきた1年生4人はしかし、そのポピー・スウィーティングによって談話室前で静止させられた。

「待って、みんなコレつけて。じゃなきゃ入っちゃダメ」

そう言ってポピーはその場の皆に耳あてを渡す。この時点でもう7年生達にはハッフルパフ談話室の状況がいくらか察せていたが、1年生達はダンブルドア少年を除いて耳あて自体は素直に受け取りつつも首を傾げていた。

「あ、えっとその、何がいるの?マンドレイク?」

自分が昨日からずっと寮に戻っていない事にやっと気づいたハッフルパフの1年生の女の子は、怒られたらどうしようかと気が気ではなかった。

「まあ、そんなようなもんよ。あなた昨日の夜は寮に戻ってこなかったのねそう言えば。今さらそんな事で咎める気になれないけどねー。アイツ見てると」

そう言ったポピーは女の子を抱き寄せて安心させるために頭を撫でるが、そこで今、自分が話題に出したその7年生の女生徒が見当たらない事に気づいた。

「あれ?そういえばそのアイツは?」

「ん?気づいてなかったのかい?アンタがアタシらを呼び止めた時に1人でスタスタ入ってっちゃったよ?」

ものすごい美人のスリザリン生レストレンジのその指摘に、ポピーは大いに慌てた。

「え、嘘!大変!あのおバカ!!」

そう言って談話室へと走りだしたポピーに、一同は慌ててついていく。そして談話室の中の光景をひと目見たところでイメルダが1年生達を引き止め、杖を振るって空中に光る文字を書いて注意事項を説明する。

”あの部屋中にいっぱい居る鮮やかな色の鳥は「フーパー」と言って、その鳴き声は聞いた者に正気を無くさせる。だから耳あてを外しちゃいけないよ。嘴をよく見ればわかるけど、見た限りあのフーパー達はずっと歌いっぱなしだからね”

1年生達はその説明を読んで頷き、思わず耳あてがズレてやしないか確かめる。

そしてそのフーパー達がそこらじゅうに留まって歌い続けているハッフルパフの談話室の中央では、ポルターガイストのピーブズと7年生の女生徒の頭の上の不死鳥が、おそらくはフーパー達に合わせて歌っていた。普段そこで過ごしているハッフルパフ生は寝室か別のどこかに引っ込んでいるらしく、他の生徒たちは見当たらない。

”なにしてるんですか先輩”

ダンブルドア少年が、イメルダがやってみせたのと同じように杖で空中に文字を書いて尋ねる。一方7年生の女生徒は頭上の不死鳥と傍を漂うピーブズや部屋中のフーパー達に微笑みかけながらオーケストラを指揮するかのように優雅に杖を振っている。

一切反応が帰ってこないのを確認したダンブルドア少年は、大きく溜息をついて杖を構えた。

「シレンシオ(黙れ)!」

部屋中のフーパーを一度に沈黙させたダンブルドア少年は耳あてを外し、未だ歌い続けるピーブズは無視して女生徒の頬を思いっきりひっぱたいた。

「片付けに来たんですよね?先輩」

「ごめんなしゃい……………楽しそうだったから………」

その反応を見たポピーは驚き、女生徒に確認する。

「あなた正気だったの?!!てっきりフーパーの声にやられたんだと………」

「談話室に入ってすぐコイツが『現れ』て歌い始めたから、僕ずっとコイツの歌しか聞こえてなかったんだよね。ていうかフーパー達の世話する時はいつもコイツが来て歌ってくれるから、僕フーパーの歌聞いたことない」

女生徒が頭の上の不死鳥を指し示しながら説明するが、それをピーブズがからかう。

「わざわざかわいい小鳥さんのお歌なんか聞かなくても元々イカれてるもんな!!」

「イカれてないやい!!」

女生徒が頬を膨らませて抗議するのを見てダンブルドア少年は冷たく皮肉る。

「ピーブズもたまにはマトモな事いいますね」

「うわーーーん!!!!」

女生徒は大袈裟に泣く演技をしてものすごい美人のスリザリン生レストレンジに抱きついた。レストレンジは動揺と高揚を表に出さないように努力しつつ軽く抱きしめて慰める。

「ほ、ほらアンタ、昨日からずっと動き回りっぱなしなんだろ?ちょっと休憩したらどうだい?」

レストレンジのその発言を聞いたイメルダがまた話題を混ぜっ返す。

「さっき『必要の部屋』であんたら2人っきりで『休憩』してたでしょ」

「だからしなかったんだって言ってるだろ!!!!」

レストレンジはまたしても大いに慌てる。

「アンタも否定してよ!!1年生達どころかよりによってピーブズまでいるのに!!」

「レストレンジ柔らか……めっちゃいい匂いする…………最高………僕ここに住む」レストレンジにしか聞こえない音量で戯けた事を呟いた女生徒は、レストレンジにますます強く抱きつき、あろうことか顔を埋めようとすらする。

「ちょっと!!!!!!だからみんな見てんだって!!!!」

ダンブルドア少年は「じゃあ抵抗すればいいのに」と言おうとしてやめた。

「じゃあ抵抗すればいいんじゃないかい?まんざらでもないんだろレストレンジ」

ハッキリ指摘してしまうイメルダとますます挙動不審になるレストレンジ、そして揃って顔を赤くしながらも興味津々で見つめ続ける1年生4人を見て、ピーブズは腹を抱えて大笑いしながら囃し立てる。

「サイッコーだよお前ら!!!!!若いねえーーー!!!ヒュー!ヒュー!」

そして「フーパーを収容しに来たんですよね僕ら?」というダンブルドア少年の指摘で一同は正気に戻り、何も起きなかったとアピールでもするかのように一転してテキパキとフーパー達を次々捕まえて女生徒の旅行かばんの中に仕舞い込んでいった。

「ねえレストレンジ、ほんとにいい匂いだったからもっかい抱きついていい?」

最後の1羽を旅行かばんに仕舞いながら女生徒が伺う。

「何回同じ事言わせんだい?!!皆居るんだって!」

レストレンジが小声で返したところでピーブズが「言いふらして来るぜ!!!」と言って飛び去ってしまい、レストレンジはさらに慌てる。

「災難ですねレストレンジ先輩」

ダンブルドア少年は慰めるようにそう言ったが、当のレストレンジの表情がおよそ災難に見舞われた人間のそれではない事を見て取って、妄想と早とちりを爆発させて顔を真っ赤にしてしまうのだった。


Report Page