MAD RABBIT

MAD RABBIT


「…入れ」

……

「…名前は」

……

「名前を言いたまえ!」

それは命令ですか?

「は?」

命令ですか?

「…それで構わないから名前と所属している学校を!」

…了解しました。命令には従います。

RABBIT小隊所属、月雪ミヤコです。

「母校は?」

SRT特殊学園です。

「…現在は存在しないようだが」

SRT特殊学園は、連邦生徒会長の失踪とともに解体されました。

「なるほど、解体後は何をしていた?」

SRT解体後、私は子ウサギ公園にてRABBIT小隊のみんなと活動してました。

「…アビドスにはどのような経緯で?」

小隊のみんながスイーツ店からのお礼でもらった

『砂糖』入りのケーキの虜になって、

そのスイーツ店を襲撃したタイミングで、

ホシノさんに出会い、そのままアビドスに向かいました。

「…その後は?」

…アビドスに向かった後の行動ですね。

アビドスで私はホシノさん、ヒナさん、ハナコさんの

三名の指示に従って行動しました。

「…どんな指示があった?」

アビドス自治区内の哨戒及び巡回任務、

アビドス外の違法取引の摘発、監禁した非中毒者の食事作りと提供、

中毒者を増やす手伝いなど、様々な指示に従いました。

「…アポピスが出現する直前には何をしていた?」

あの時は、ホシノさんからの命令で小隊のみんなと、

砂祭りの見回りをしていました。

そして、反アビドスの襲撃が発生し、

『反アビドスを迎撃しろ』という命令を受けて反アビドスと交戦しました。

「…アポピスが出現した際には?アポピスと交戦したのか?」

いいえ。

「…は?」

小隊のみんなはアポピスと戦闘しましたが、私は命令がなかったので

先程の命令を遂行していました。

「…つまりは?」

反アビドスの方たちに攻撃を続けてました。

「はぁ!?アンタ優先順位ってわかってんのか!?辺り一面に攻撃する怪物とそれに対抗する生徒!どっちを優先して攻撃すればいいのかわかるだろ!?」

「…ハァ、もういい。『砂糖』でイカれてた当時の話だ。アンタも反省してるんだろ?」

反省とは何のことですか?

「…はぁ?」

命令を完遂後、又は完遂できない状況以外は命令に従うことが何よりも優先されるべきことです。

「…何言ってるんだお前?」

それに間違っているところがあります。

「間違っているところ?なんだそれは?」

私は『砂糖』を摂取してません。

「……悪いがもう一度言ってくれ」

私は一切『砂糖』を摂取してません。

そのような命令が下れば摂取しましたが、命令がありませんでしたので摂取しませんでした。

「………正気か?…正気であんな悪事に手を貸したのか?」

はい。

「……ざけんなよ」

「ふざけんな!アンタ自分が何言ってるのかわかってるのか!?アァ!?」ガシッ

……

「アレでどれだけの人達に迷惑かけたかわかってるのか!」

そうですね。

「元凶が消えても後遺症で苦しんでるやつが沢山いるんだぞ!トラウマ抱えてるやつだって少なくないんだぞ!」

そうなんですね。

「カルテルトップの奴らも中毒者だからまだ仕方なく受け入れたさ!なのにアンタは摂取せずに悪事に加担したんだぞ!それがどれだけ罪深いことかアンタはわかってるのか!!」

私はただ命令に従っただけです。

「さっきから命令命令命令って…自分の考えってものはないのか!」

必要ありません。

「!?」

SRT特殊学園の話はしましたよね?

「…あぁ」

あそこは本来連邦生徒会長直属の、一つの理念のもとにあらゆる自治区に介入可能な組織でした。

「一つの…理念…」

正義です。

「!」

あらゆる自治区の利害や思惑、それらを無視して一つの正義の下に活動する。それがSRT特殊学園でした。

「…それと命令と何の関係が」

本題はそこではありません。

「!?」

重要なのは連邦生徒会長直属というところです。

「……」

連邦生徒会長直属…即ちSRTとは


道具です。


「道具?」

はい。連邦生徒会長が各地の自治区に介入するための道具。

それがSRT特殊学園というものです。

つまり、そこに所属する生徒は皆、道具でなければいけません。

道具は自分の意志を持ってはいけないんです。

道具はただ、持ち主の望んだ結果を出すことだけを考えればいいんです。

ですので、連邦生徒会長がいなくなったことで解体されました。

必要のない道具は存在する価値がありませんから。

「…正義云々はどうでもいいのか?」

正義や憧れなんてものは持ってはいけません。

そんなものはいずれ腐り堕ちて、ただ傷つけるだけですから。

「……はぁ、もういい。今日の聴取はここまでだ。おまえは……一旦牢屋に戻れ」

はい。

「……そういえば」

「お前に伝言があったのを思い出した」

なんでしょうか?

「詳しくは知らないが『ぴょんこは無事』とだけ伝えてほしいとのことだ」

はぁ…


たった、それだけですか?


「……そうだ」

では、改めて戻ってもいいですか?

「あ、あぁ」

失礼します。


プツン


『聴取記録No.XXXXXXXXXより抜粋』


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