KK and JE ep2-1
第二章:学園の日常と隠された闇 : 前編
希望ヶ峰学園の朝は、穏やかな陽光とともに始まった。秋も深まり、校庭の木々は赤や黄色に色づき、朝の冷たい空気が生徒たちの頬を撫でていた。学園の校舎は、平日特有の活気に満ちており、制服姿の生徒たちが廊下を行き交い、教室からは授業の準備をする声や笑い声が漏れ聞こえてきた。全寮制の校舎から教室棟へと向かう生徒たちの足音が、朝の静寂を破るように響いていた。
霧切響子は、いつものように一人で教室へと向かっていた。彼女の紫色の髪は朝の光に照らされて淡く輝き、長いまつ毛が伏せられた瞳は、まるで氷のように冷たく、鋭い光を宿していた。彼女の制服はきちんと着こなされ、ネクタイもピシッと結ばれている。超高校級の探偵としての彼女は、いつも冷静沈着で、感情を表に出すことはほとんどなかった。だが、彼女の心の中は、静かな嵐に揺れていた。あの休日の出来事—江ノ島との激しい一夜—が、彼女の心に深い波紋を広げていた。
霧切にとって、江ノ島盾子は同性の恋心を寄せる特別な存在だった。彼女の明るさや予測不能な行動に惹かれ、霧切は江ノ島への想いを抑えきれなかった。だが、同時に、江ノ島は超高校級の絶望として、これ以上罪を重ねないよう監視しなければならない対象でもあった。彼女の罪—自分の彼氏を殺し、生徒会を煽ってコロシアイを仕向けたこと—は重く、霧切は彼女を正す使命を果たさなければならない。江ノ島を学園につき出せば消され、警察につき出せば死刑か無期懲役が待っている。その選択肢の重さに、霧切の心は揺れ動いていた。
霧切は教室に入り、自分の席に座った。彼女の席は窓際の後ろの方で、教室の喧騒から少し離れた場所にあった。彼女は静かに教科書を広げ、授業の準備を始めたが、頭の中では江ノ島の姿がちらついていた。あの夜の熱い感触、江ノ島の白い肌、彼女の喘ぎ声、彼女の体温…それらが霧切の心を掴んで離さなかった。だが、霧切はそれを表に出さず、冷静な表情を保った。
「おはよう、霧切さん! 今日も真面目だね~!」と、明るい声が教室に響いた。声の主は、江ノ島だった。彼女は人前に出るときはいつもツインテールに髪をまとめ、モノクマのヘアピンを髪に飾っていた。金髪のツインテールが朝の光に照らされてキラキラと輝き、制服のスカートは少し短めに調整されている。彼女の唇にはピンク色のグロスが塗られ、彼女の存在はまるで教室に突如として色を添えるようだった。
「おはよう、江ノ島さん」と、霧切は冷静に返した。彼女の声は低く、抑揚のないものだったが、その裏には抑えきれぬ感情が滲んでいた。江ノ島の姿を見るたびに、霧切の心は小さく波立った。彼女は江ノ島を愛しながらも、彼女を監視しなければならないという葛藤に苛まれていた。
江ノ島は霧切の隣の席に腰掛け、彼女に顔を近づけた。「ねえ、霧切さんってさ、いつも真面目だけど…あんな一面もあるんだよね~!」と、彼女は意味深に囁いた。彼女の声は甘く、どこかからかうような響きを持っていた。彼女の目は、まるで霧切の反応を楽しむように細められ、彼女の唇は小さく弧を描いていた。江ノ島の言葉は、あの夜のことをほのめかしており、霧切の心を微妙に揺さぶった。
「…何のことかしら」と、霧切は冷たく返した。彼女の紫色の瞳は、まるで江ノ島を見透かすように鋭く、彼女の心は再び葛藤に揺れていた。江ノ島の存在は、霧切にとって甘い毒のようなものだった。彼女を愛し、彼女を支配したいという欲望と、彼女を正さなければならないという使命感が、霧切の心の中でせめぎ合っていた。
「ふーん、霧切さんって、ほんと真面目だよね! でもさ、そういうとこ嫌いじゃないよ~!」と、江ノ島は無邪気に笑った。彼女の笑顔は、まるで何も知らない少女のようだったが、その裏には「絶望」を愛する彼女の性格が隠されていた。霧切はそれを理解しながらも、江ノ島の笑顔に心を奪われそうになる自分を感じていた。
授業が始まり、教室は静寂に包まれた。数学の教師が黒板に数式を書き、淡々と説明を進めていた。霧切はノートにペンを走らせ、授業に集中しようと努めたが、隣に座る江ノ島の存在が気になって仕方なかった。江ノ島は退屈そうに頬杖をつき、時折霧切の方をチラチラと見ていた。彼女の視線を感じるたびに、霧切の心は小さく波立った。
回想
数日前、霧切は戦刃むくろと苗木誠のデートをセッティングするために、休み時間を利用して動いていた。彼女の目的は、江ノ島の双子の姉でありボディガード役の戦刃むくろを江ノ島から遠ざけることだった。まず、霧切は戦刃むくろに接触した。
「戦刃さん、少し話があるの。苗木誠と話す機会を作ってあげたいのだけど、どうかしら」と、霧切は低く囁いた。彼女の声は抑揚がなく、まるで事務的な提案のようだったが、その裏には計算された意図が隠されていた。デートであることは隠し、あくまで「話す機会」として提案した。
戦刃むくろは霧切の言葉に一瞬驚き、戸惑った表情を見せた。「え…霧切さん、それは…どういう意味?」と、彼女は小さく呟いた。彼女の声には、緊張と戸惑いが混じっていた。普段は冷静沈着な超高校級の軍人である彼女だが、苗木誠への好意を隠しきれず、霧切の提案に動揺していた。
霧切は戦刃むくろの反応を見ながら、冷静に言葉を続けた。「あなたが苗木誠に好意を持っていることは知っているわ。彼と話す機会があれば、少しは気持ちが楽になるんじゃないかしら。次の休み時間、彼の近くにいるようにしてちょうだい。私が話を進めるから」と、彼女は淡々と告げた。彼女の言葉は、まるで戦刃むくろを押すように力強く、彼女の心を動かした。
戦刃むくろは一瞬目を伏せ、考え込むように黙ったが、やがて小さく頷いた。「…分かった、霧切さん。ありがとう…」と、彼女は呟いた。彼女の声には、感謝と緊張が入り混じっていた。霧切はその反応を見て、内心で小さく満足した。
次の休み時間、霧切は教室で苗木誠に近づいた。苗木誠は窓際で友達と話しており、霧切が近づくと優しい笑顔で迎えた。「あ、霧切さん! 何か用?」と、彼は明るく尋ねた。霧切は戦刃むくろが近くにいることを確認し、彼女に軽く目配せしてから、苗木誠に話しかけた。
「苗木誠、実はディズニーランドのチケットが2枚あるの。知り合いから貰ったんだけど、私、仕事で行けなくて」と、霧切は淡々と告げた。彼女の声は抑揚がなく、まるで何気ない話をするようだった。教室の端で聞き耳を立てていた舞園さやかは、その言葉にドキドキと胸を高鳴らせた。超高校級のアイドルである彼女は、苗木誠に密かに好意を寄せており、ディズニーランドという言葉に心が躍った。
苗木誠は少し驚いた表情を見せ、「え、ディズニーランド? すごいね! でも、霧切さんが行けないなら…どうするの?」と尋ねた。霧切は一瞬考え込むふりをし、「そうね…誰か誘って行ってくれないかしら。せっかくのチケットだし、使わないのは勿体ないわ」と、彼女は静かに言った。彼女の言葉は自然で、まるで苗木誠に選択を委ねるようだった。
その瞬間、霧切は戦刃むくろを呼び寄せた。「戦刃さん、ちょうど良かった。あなた、ディズニーランドには興味あるかしら。苗木誠と一緒に行ってみたらどう? せっかくの機会だし」と、彼女は淡々と提案した。彼女の声は抑揚がなく、まるで何気ない提案のようだったが、その裏には計算された意図が隠されていた。
苗木誠は霧切の言葉に目を丸くし、「え、戦刃さんと? うーん、楽しそうだね! 戦刃さん、行きたい?」と、優しい笑顔で尋ねた。戦刃むくろは一瞬顔を赤らめ、「…うん、行きたい…」と小さく呟いた。彼女の声には、緊張と期待が入り混じっていた。苗木誠は「じゃあ、決まりだね! 楽しみだな!」と明るく笑い、戦刃むくろも小さく微笑んだ。
だが、教室の端でそのやり取りを見ていた舞園さやかは、鬼の形相で霧切を睨み付けていた。彼女の清楚な外見とは裏腹に、彼女の目は嫉妬と怒りに燃えていた。舞園は苗木誠への想いを抑えきれず、霧切の行動に強い苛立ちを感じていた。霧切はその視線を感じ、一瞥して舞園を見たが、表情を変えることなく静かに教室から去った。彼女の心は、舞園の嫉妬を理解しながらも、自分の目的を優先していた。
休み時間になると、教室は再び活気に満ちた。生徒たちはグループを作って話をしたり、廊下に出て友達と笑い合ったりしていた。霧切は一人で席に座り、本を開いて読もうとしたが、突然、清楚な声が彼女を呼び止めた。
「霧切さん、少々お時間をいただけますでしょうか?」と、声の主は舞園さやかだった。超高校級のアイドルである彼女は、いつも清楚で丁寧な口調で話す。彼女の長い黒髪はサラサラと揺れ、制服は完璧に着こなされている。彼女の笑顔は、まるでアイドルのステージで見せるような完璧なものだったが、その裏には抑えきれぬ感情が滲んでいた。
霧切は本から目を上げ、舞園を見た。「…何かしら、舞園さん」と、彼女は冷静に答えた。彼女の紫色の瞳は、まるで舞園の意図を見透かすように鋭く、彼女の心は一瞬警戒した。霧切と舞園はそこまで仲が悪くはなかったが、霧切のクールで人を寄せ付けない性格が、舞園との距離を作っていた。
舞園は霧切の前に立ち、丁寧に頭を下げた。「実は、霧切さんにどうしてもお伺いしたいことがございまして…」と、彼女は静かに切り出した。彼女の声は穏やかだったが、その裏には微かな怒りが隠されているようだった。彼女は一呼吸置き、言葉を続けた。「先日、霧切さんが戦刃さんと苗木くんを…その、デートのセッティングをなさったと伺いました。わたくし、教室の端からその場面を見ておりました。霧切さん、なぜそのようなことをなさったのですか?」
霧切は舞園の言葉に一瞬目を細めた。彼女は舞園が苗木誠に好意を寄せていることを知っていたが、その感情がこれほど強いとは思っていなかった。「…それは、私の目的のためよ。戦刃さんを江ノ島さんから遠ざける必要があった」と、霧切は淡々と答えた。彼女の声は低く、抑揚のないものだったが、その裏には計算された意図が隠されていた。
舞園は霧切の言葉に、アイドルらしくプリプリと怒り出した。「霧切さん、私アイドルとしてデートや恋愛は厳禁です! それなのにそれなのに…苗木くんが他の女の子とディズニーランドだなんて…! 私すごく嫌ですぅ!」と、彼女は頬を膨らませ、プリプリと体を揺らしながら訴えた。彼女の声は丁寧だったが、その裏には抑えきれぬ嫉妬と怒りが滲んでいた。彼女の目は潤み、まるでステージで見せるような可愛らしい表情だったが、その裏には強い感情が渦巻いているようだった。
霧切は舞園の反応に冷静に対応した。「…あなたの気持ちは理解したわ、舞園さん。だが、私には私の目的がある。あなたが苗木誠に好意を持っていることは知っているけど、それは私の行動とは関係ないわ」と、彼女は冷たく答えた。彼女の紫色の瞳は、まるで舞園の感情を切り捨てるように鋭く、彼女の心は一瞬だけ揺れた。霧切は舞園の嫉妬を理解しながらも、彼女の感情に流されるつもりはなかった。
舞園は霧切の言葉に一瞬唇を噛み、目を伏せた。「…そうですか。霧切さんのお考えはよく分かりました。ですが今後は…苗木くんに近づくようなことは控えてください。」と、彼女は静かに言った。彼女の声は丁寧だったが、その裏には強い決意が込められていた。彼女は最後に霧切を一瞥し、静かにその場を去った。霧切はその背中を見送りながら、内心で小さくため息をついた。彼女の心は、舞園の嫉妬と自分の行動の影響を考えながら、微妙に波立っていた。
その後、江ノ島が霧切に近づいてきた。「ねえ、霧切さん! お昼、一緒に食べない? 購買のパンが美味しいんだよ~!」と、彼女は明るく誘った。霧切は一瞬迷ったが、江ノ島の無邪気な笑顔に負けてしまった。「…いいわ、江ノ島さん」と、彼女は静かに答えた。彼女の心は、江ノ島との時間を過ごしたいという欲望と、彼女を監視しなければならないという使命感の間で揺れていた。江ノ島は「やったー!」と小さく叫び、霧切の手を取って立ち上がった。彼女の手は温かく、霧切の心をさらに揺さぶった。
購買に向かう途中、廊下で戦刃むくろと苗木誠に出くわした。戦刃むくろはいつもの無表情な顔で立っていたが、苗木誠の隣にいることで、どこか柔らかい雰囲気を漂わせていた。苗木誠は優しい笑顔で霧切と江ノ島に挨拶した。「おはよう、霧切さん、江ノ島さん! 購買に行くの?」と、彼は明るく尋ねた。
「おはよう、苗木くん! うん、パン買いに行くんだ~!」と、江ノ島が無邪気に答えた。霧切は静かに頷き、戦刃むくろと目を合わせた。戦刃むくろは霧切に小さく会釈し、「霧切さん…この前のこと、ありがとう」と低く呟いた。彼女の声には、感謝の気持ちが込められていたが、その裏には江ノ島を守る役割への複雑な感情も隠されているようだった。
その瞬間、江ノ島が戦刃むくろと苗木誠の初々しい雰囲気に目を付け、からかうように口を開いた。「ねえ、お姉ちゃん! 苗木くんと一緒にいるなんて、めっちゃラブラブじゃん~! ディズニーランド、楽しかったんだよね? うわ~、お姉ちゃん、顔赤いよ! 超可愛い~!」と、江ノ島は目をキラキラさせながら、戦刃むくろに絡んだ。彼女の声は明るく、どこか意地悪な響きを持っていた。彼女のツインテールが揺れ、モノクマのヘアピンが光に反射してキラリと輝いた。
戦刃むくろは江ノ島の言葉に一瞬目を丸くし、顔を真っ赤にして俯いた。「…盾子ちゃん、からかわないで…! そんなんじゃない…」と、彼女は小さく呟いたが、声は震え、明らかに動揺していた。苗木誠も少し照れ笑いを浮かべ、「え、えっと…楽しかったけど、ラブラブってわけじゃ…」と慌てて弁解した。彼の優しい笑顔には、どこか戸惑いが混じっていた。
江ノ島はさらに調子に乗ってからかうように、「えー!お姉ちゃん、めっちゃ照れてるじゃん! 苗木くんも、お姉ちゃんのことちゃんと見てあげてよ~! ほら、お姉ちゃん、もっとくっついちゃいなよ~!」と、彼女は手を叩いて笑った。彼女の明るく予測不能な性格が、戦刃むくろと苗木誠の初々しい雰囲気をさらに際立たせていた。
そして、江ノ島はポケットから携帯電話を取り出し、目を輝かせて提案した。「ねえ、せっかくだから、二人をカメラで撮ってあげるよ~! ラブラブな記念写真、絶対可愛いって! ほら、ほら、並んで並んで!」と、彼女は無邪気に声を上げた。彼女の声は甘く、まるで二人を上手く乗せるような響きを持っていた。
戦刃むくろはさらに顔を赤くして、「え…盾子ちゃん、撮るなんて…やめてよ…」と呟いたが、江ノ島の勢いに押されてしまった。苗木誠も「え、写真? うーん、まあ、いいけど…」と少し照れながら頷いた。江ノ島は「やったー! じゃあ、もっとラブラブっぽくしてね~! ほら、二人で手、繋いでみてよ!」と、彼女は目をキラキラさせながら促した。
戦刃むくろと苗木誠は互いに顔を見合わせ、気まずそうに目を逸らしたが、江ノ島の勢いに負けて渋々手を繋いだ。戦刃むくろの手が苗木誠の手をぎこちなく握ると、二人の顔はさらに真っ赤になった。「うわ…お姉ちゃん、めっちゃ緊張してる~! 苗木くんも、もっとしっかり握ってあげてよ~!」と、江ノ島は笑いながらカメラを構えた。
江ノ島はカメラを覗き込み、わざとらしく首を振った。「うーん、なんか二人、上手くカメラに入らないなぁ…! もっと寄って、ピッタリくっついて並んでみてよ~!」と、彼女は嘘をついて二人をさらに近づけた。戦刃むくろと苗木誠は言われるがままに身体を寄せ合い、肩と肩が触れ合うほどピッタリとくっついた。二人の心臓はドキドキと高鳴り、顔が真っ赤になって変な顔になってしまった。戦刃むくろは目をぎゅっと閉じ、口をへの字にして緊張を隠そうとし、苗木誠はぎこちない笑顔を浮かべながら完全に目を泳がせていた。
「うわ~! めっちゃ可愛い~! 最高のラブラブショットだよ~!」と、江ノ島は大喜びでシャッターを切りまくった。彼女のツインテールが弾むように揺れ、彼女の笑顔はまるでいたずらっ子のように輝いていた。戦刃むくろは「もう…盾子ちゃん、いい加減にして…!」と恥ずかしそうに呟き、苗木誠も「うわ、恥ずかしいな…」と照れ笑いを浮かべた。
霧切はそのやり取りを静かに見つめていたが、内心では微かな嫉妬を感じていた。江ノ島が他の生徒たちと楽しそうに絡む姿を見るたびに、霧切の心は小さく波立った。彼女は江ノ島を愛し、彼女を独占したいという欲望を抱いていたが、同時に、彼女を監視しなければならないという使命感も忘れていなかった。霧切は冷静な表情を保ちながら、江ノ島の行動を観察し続けた。江ノ島の無邪気な笑顔と予測不能な行動は、霧切の心をさらに揺さぶり、彼女の監視の目を一層鋭くさせていた。
購買でパンを買い、霧切と江ノ島は校庭のベンチに座って昼食を取った。秋の陽光が柔らかく降り注ぎ、校庭の木々が風に揺れていた。江ノ島はメロンパンを頬張りながら、「ねえ、霧切さんってさ、いつも一人でいることが多いよね。もっとみんなと仲良くすればいいのに~!」と、明るく言った。彼女の声は無邪気で、まるで霧切をからかうような響きを持っていた。
「…私は一人でいるのが好きよ」と、霧切は静かに答えた。彼女の声は低く、抑揚のないものだったが、その裏には微かな感情が滲んでいた。江ノ島の言葉は、霧切が学園生活の中で感じていた孤独を突き刺すようだった。だが、江ノ島はそんな霧切によく構ってくる。彼女の明るさや予測不能な行動が、霧切の心を掴んで離さなかった。
「ふーん、そうなんだ! でもさ、霧切さんって、私と一緒にいるときは楽しそうに見えるよ~!」と、江ノ島は笑った。彼女の笑顔は、まるで太陽のように眩しく、霧切の心を温めた。霧切は小さく微笑み、「…そうかしら」と呟いた。彼女の心は、江ノ島との時間を楽しんでいる自分を自覚しながらも、彼女の裏の顔を忘れることはできなかった。
午後の授業が始まり、教室は再び静寂に包まれた。霧切は授業に集中しようと努めたが、江ノ島の存在が気になって仕方なかった。江ノ島は時折霧切にメモを渡し、「退屈~!」とか「霧切さん、かわいいね!」と書かれたメッセージを送ってきた。霧切はそれを見て小さくため息をつきながらも、内心で微笑んでいた。江ノ島の無邪気な行動は、霧切の心を少しずつ溶かしていくようだった。
放課後になると、生徒たちは部活動や寮に戻る準備を始めた。霧切は静かに荷物をまとめ、教室を出ようとしたが、江ノ島が再び話しかけてきた。「ねえ、霧切さん! ちょっと校舎の裏に来てよ! 見せたいものがあるんだ~!」と、彼女は明るく誘った。彼女の目は、まるで何か企んでいるかのように輝いていた。
霧切は一瞬警戒したが、江ノ島の誘いを断ることができなかった。「…分かったわ、江ノ島さん」と、彼女は静かに答えた。彼女の心は、江ノ島の企みに警戒しながらも、彼女との時間を過ごしたいという欲望に負けていた。2人は校舎の裏へと向かい、夕陽が校庭を赤く染める中、静かな時間を過ごすことになるのだった。