KING × WHO s WHO
[warning!]
・精神的優位が二転三転しますが、キンフー固定
・捏造設定が多い
・R-15くらい…?暴力的な表現あり
・失禁描写がぼかし程度あります
・無駄に長い
元CP9で脱獄犯、そんな政府にとって都合の悪いことの塊のようなおれには、海賊として海に出るしか選択肢はなかった。
悪名を上げれる暇はなく、政府に動向が知られないようにコソコソと、しかし確実に船を進め、ついには新世界まで足を踏み入れた。
そこで、おれの海賊団の船長としての人生は早くに終わりを迎えた。そして、百獣海賊団の真打ちとして籍を置く運びとなった。強引に鳴らされたと言っても過言ではない。
だが、正直言ってここは居心地がよかった。鎖国してるから政府に怯える心配はないし、衣食住は整ってるし、猫もいる。
不自由ではないが自由でもないその環境に、おれは十分満足していた。そして今、真打ちとして初めての召集をすっぽかして場内の散策をしていた。すっぽかした理由?そんなの、面倒だからに決まっているだろう。カイドウさんに言われたならまだしも、あいつの招集だなんて…
それにしても広いアジトだなァと、ライブフロアを見下ろしながら紫煙を燻らせる。すると、バサバサと轟音のような羽音が耳を劈いた。
そいつはおれの頭上で留まり、偉そうな口調で話しかけてきた。
「オイ、新入り。」
「あァ?」
不機嫌そうに見上げる、事実不機嫌だった。こいつに扇がれて煙草の火が消えてしまったからだ。が、見上げたそいつも顔が見えずとも明らか不機嫌であった。
火災のキング、全身黒ずくめの不気味な奴。おれはこいつがシンプルに嫌いだった。なんでかは知らねェ、ただ、あっちもおれのことが気に入らないようだった。
「今回の召集、なぜ来なかった。」
テメェが呼んだからだ、とは口が裂けても言えない。言ったとしたら口が裂かれるだろう。しかし、せめて皮肉の一つや二つ、と言葉を紡ぐ。
「別に、海賊ってのは無法者の集まりなんだろ?一度バックれられたぐらいで、ンなかっかすんなよ…」
「黙れ、貴様の軽率な行動でカイドウさんが要らぬ苦労を被ったらどう責任取るつもりだ」
「カイドウさんはテメェなんかに心配されるようなタマじゃねェだろ、テメェのほうがカイドウさんを舐めてんじゃ…かはッ…!?」
流れるような動きで腹部につま先がめり込んだ。突然の衝撃に武装色も間に合わずそのまま襖に突っ込む、ぶつかった背中の痛みよりもキングの一撃が内蔵にキた。腹を押さえて酷く咳き込む、しかし、咳が収まるのも待たずに角を掴まれて起き上がらせられた。
「黙れと言った筈だ。その煩わしい口を今すぐに閉じろ」
無理なもんは無理だ、こんな有様にしたのはテメェだろ。なんていった軽口も頭に浮かんだものの、下に乗せることは叶わなかった。代わりにおぇ…と嘔吐くような音だけが厚ぼったい唇から漏れた。
「政府の犬が…、誰が貴様のような厄介ごとを受け入れてくれたと思っている?」
「へへ…、もう首輪付きじゃねェよ…がッ…‼︎」
鼻で笑えばその鼻っ柱をへし折る勢いで殴られた、たらりと鼻の下に液体が伝う。それをべろりと舌で掬い、血濡れになった舌をべっと見せつけ
「まるで政府になンか嫌な思い出でもあるみたいだな、大烏サンよォ。」
図星を突かれたのかさっきよりも力を込めておれを殴った。気にも留めずにけらけらと笑っていたら、チィッと舌打ちをした後におれの顎を掴んでこう言った。
「貴様こそ、政府で飼われていたくせにここまで落ちぶれるとはな。一体どんな醜態を晒してきたんだ?牢にぶち込まれるだけで粗相する程嫌なことをされたらしい。」
「ひッ…や、やめろ……」
ぐり、とおれの顔よりデカい足がおれの男の象徴を踏みつけるのと同時に、忘れたかった記憶が自身の脳にドッと流れ込んでくる。嫌だ、思い出したくない。狭くて暗くて湿っぽくて、痛くて苦しく辛かった。それしかない空間だった。祈っても誰も助けてくれなくて、一人で暗いところから逃げ出して、自由を求めて海に出て、そして、
「貴様はおれたち百獣海賊団の縄張りに抜け抜けと近づいて、そしてこのおれに呆気なく敗北したな。」
そう、あの時おれはこいつに負けた、そして百獣海賊団に入れと脅された、抵抗したら牢に入れられて、
「錠をかけられて牢に入れられただけで、随分としおらしくなったらしいじゃねェか。なァ、威勢だけは良かったのにな。」
やめろ、やだ、口に出そうとした言葉は浅い息の音にかき消された。俯きたいのに顎を掴まれ無理やり上を向されているせいで、ひきつれのような声だけが漏れる。恐怖から逃れようと目を瞑るが逆効果だ、暗い、怖い、いやだ。
「…オイ、なんだそのザマは…天下の百獣海賊団の幹部なんだろう?ここでも醜態を晒す気か?」
言われて気づいた、いつの間にか頬が濡れていた。止めどなくボロボロと隠された瞳から涙が溢れる。いい歳した大人が一回り年の離れたいい歳した大人に泣かされている。最悪だ、ようやく頭では冷静になってきたというのに、涙は止まらない。視界が濁って何も見えない、それがまたおれの恐怖を煽る。知らずのうちに胸の前で祈るように手を組んでいた。その姿に少なからずそいつはギョッとしたようで、ぱっと顎を掴んでいた手が離され、股ぐらから足が遠のく。ゲホと軽く咳き込むと蹲るように地面に突っ伏した。人を汚ェもんみたいに扱いやがってと悪態付きたかったが、実際、全身ボロボロでドロドロで、今すぐ湯屋に駆け込みたい気分だった。
視界は曇ったまま、嘔吐きは治らない、きゅう…と体を縮こませ。恐怖が遠ざかることだけを祈った。だが、おれは知っている。祈ったって神はおれを救わない。わかってる。だとしても魂に刷り込まれたそれに抗う術をおれは知らない。
「助けて、かみさま」
消え入りそうな声で呟いた、瞬間、地に垂れていた頭を死角から踏んづけられた。ゴンと鈍い音がする、今度は額から血が滲んだ気がした。何に気が立ったかはわからねェ、というかそんなことに気を遣う暇はなかった。ぐりぐりと板の間との接吻を強要してくる。頭の随分上の方から怒声が聞こえた。
「貴様如きがッ!今更神に縋るだと?笑わせてくれる‼︎」
げしげしと蹴り付けられて、う、とか ぐ、みたいなか細い呻き声だけが漏れる。余程逆鱗に触れてしまったのだろう。今の彼はヒステリックに喚き散らす女と同然だった、おれの向こうに誰かを見ていて、おれに当たっている。
そのザマが駄々を捏ねるガキの姿と重なり、へへ、と笑いを漏らしたら耳聡く顎を蹴り上げられた。ぐらり、脳震盪を起こして視界が回って地に伏せる。ふらりと見えたアイツの背の炎が、かつておれが救って欲しかった神の姿に重なった気がした。
「いいか?立場を弁えろ、貴様のような有象無象なんざこの海にいくらでもいるんだ。」
「そいつはどうだろうなァ、おれは政府のヒミツゴトをなにか知ってるかもしれないぜ?」
怒りがおさまってきたのか、吐き捨てるような言葉が投げかけられる。自身も随分と気が楽になってきたのか、先程までの恐怖心はもう離散し、軽口が叩けるくらいには回復していた。むくりと起き上がり、顔中伝う血を赤いスーツの袖で拭った。
「次の召集、必ず出席しろ。」
鋭い眼光でこちらを睨みつけながら、キングはおれに命令した。こちらがうんともすんとも言わなければ、脅すような口ぶりでこう言った。
「貴様はすぐに根をあげたから知らねえかもしれねェが、おれの拷問はあのバカよりもずっと酷い。」
あのバカとはきっとクイーンのことだろう。あいつは兎丼で囚人たちを好き勝手に拷問していると聞く。おれはそれを知らねェが、そういえばクイーンの奴がこいつのことを「拷問好きの変態野郎」と称していたのを聞いたことがあった気がする。
「へへ…、肝に銘じておいてやるよ。」
けらりと笑って答えたら酷い舌打ちで返事をされた。おれはそいつを聞かないふりをした。
懐からくしゃくしゃになった煙草の箱を取り出して、一つ抜き取る。去っていく燃ゆる背中を見つめて、煙草の火でも貰えばよかったなと随分呑気なことを考えた。
END