It's been a long time, goodbye.

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「気にすんな。お前ぇさんらはファングを狙わんかったし、全部あのアンブリッジとか言うババアがやらせたことだ。おれぁお前ぇの事怒ったりなんぞしねえ」

そう言ってハグリッドは、自分に抱きついて人目も憚らず大声を上げて泣くその闇祓いの若い魔女を優しく抱きしめた。

それを見ていた青年が一同に呼びかける。

「ほら、そろそろ行くよ!ウィゼンガモットはいつだって後ろの予定が詰まってるんだから!…………ねえ君、ちなみにこの次は大法廷で何するの?」

通りがかった先程の50人の裁判官の内の1人である男性は、どうやら機密でもなかったらしく快く教えてくれた。

「マグルの玩具『PlayStation』に魔法をかけてマンティコアと交配させた新種を創った挙げ句それを引き連れたままで女王陛下に謁見しようとした不届き者がおってな。3流ゴシップ誌の与太記事枠とは言え少なくないマグルがそれを読んだ。まったく、よりによって今!余計な仕事を増やしてくれおるわ」

さすがに己が耳を疑っている様子のハリーとニュートを他所に、ダンブルドアは、「明日は我が身ですな先輩?」と青年に向かって笑顔で言い放った。

「さ、さすがにそんな事しないもん!」と頬を膨らませた青年は、まだハグリッドから離れようとしない闇祓いの若い魔女に声をかける。

「ね、お嬢さん。君はいいの?それとも魔法省に怒られたの?」

若い魔女はハグリッドに更に強く抱きついたまま聞こえるか聞こえないかくらいの声量で幽かに答えた。

「無期限出勤停止処分です……………実質クビです………他の皆は有期限なんですけど………あの場に居た中で私1人だけ主任闇祓いなので…………」

若い闇祓いの魔女がどうにかそれだけ言ってまたハグリッドにしがみついて泣き出したのを聞いていたハリーは「アズカバン送りじゃないだけマシだろう」という言葉が喉まで出かかっていたが、ギリギリで堪えた。

すると青年がその若い闇祓いの魔女の肩に背後から手を置く。

「謝る相手がまだ居るよね?さ、一緒にホグワーツに行こうか。マクゴナガル先生が聖マンゴからお戻りになったって連絡があったからね」

そしてニュート・スキャマンダーと別れた一同は煙突飛行粉でホグズミード村へ、そこからゆったり歩いてホグワーツに戻った。それは若い闇祓いの魔女に心の準備を整えさせるためのダンブルドアによる配慮だった。

「ハリー、ついてきてくれてありがとね。おかげで助かったよ」

青年に声をかけられたハリー・ポッターは笑顔を見せる。

「礼には及びません、先生。アンブリッジが連行されてく所が特等席から見られましたから、僕満足です」

それに青年は「でも今アズカバンに送ってもなー」と不安になる事を言い始めた。

「どういう事です…………?あ、そうか」

ハリーは少し考えて得心する。

「そ、ヴォルデモートの手下がアズカバンから逃げただろう?それにディメンターたちも職務放棄してるからね。『あのガマガエルババアの顔は金輪際見なくて済む』なんて事は考えないほうがいいよ。ま、それよりも先に覚悟するべき事があるけど」

「何のことですか?」と訊いたハリーに笑いかけたのはダンブルドアだった。

「それはのう、ハリー。今我らが出廷してきた裁判について、みんなが君を質問攻めにするじゃろうということじゃ。わしらはこの子をマクゴナガル先生のところにつれていくが、君はホグワーツに戻れば後は自由じゃからの。とりあえずはグリフィンドールの談話室に戻るとして、それまでに何を訊かれそうか、それにどう答えるか整理しておくべきじゃろうの」

一気に難しい顔になったハリーを連れて一行がホグワーツに戻ると、そこには待ちわびていたらしい大勢の生徒がひしめいていた。

「先生、おかえりなさい!!」「ハグリッド!」「校長先生!!」

そして。

「あ、お前あの時の闇祓いか!てめぇどの面下げて!!!」

当然の怒号が生徒たちから飛ぶ。グリフィンドール生が主だったが、スリザリンも含む全ての生徒が怒りを露わにしていた。

「君達の気持ちは嬉しいけどね」と青年が生徒たちに語りかける。

「怒りをぶつける正当な相手はこのお嬢さんじゃなくてあのガマガエルだよ。あの時闇祓い達は命令を拒む事なんてできなかったんだ。それに」

青年は怯え気味の若い闇祓いの魔女を見つめる。

「今度同じ事が起きたらそのときは僕が魔法省に出向いて行って、そこにいる人間を全員まとめてひとり残らず、単にまだ生きてるってだけの搾りカスにしてやるから。まだ泣いたり笑ったりしたいなら、忘れないでね?」

そう言った青年に優しく頭を撫でられた若い闇祓いの魔女は一瞬であの夜の、素手で杖を奪われ折られた時の精神状態に戻されてしまっていた。

恐怖で潰れそうなのをどうにか堪えようとして耐えきれずに涙をポロポロ零している若い闇祓いの魔女と、そのすぐ後ろで立ち尽くしているハグリッドのみならず、あろうことかダンブルドア校長までもが竦んでいる事に気づいた生徒たちは瞬く間に静まりかえって、青年の「道を開けてくれるかい?」という穏やかな声に敏速に従った。

「ミネルバ君、無事で本当によかった!」

聖マンゴから戻ってきたとはいえ寛解には遠いマクゴナガルは、医務室に居た。

「ありがとうございます、先生。ハグリッドも元気そうでよかった。……おや貴女、どうしたのですか?何をそんなに泣くことがあるのですか?大丈夫ですか?」

ベッドの上で上体を起こしてそう言ったマクゴナガルに、若い闇祓いの魔女が号泣しながら飛びつく。

「マクゴナガル先生!!ごめんなざい!!!私、私!!!」

「おやまあ、この先生におどかされたんですね?大丈夫ですよ。わたくしが、貴女をきっと守ってさしあげます」

そう言われた若い闇祓いの魔女はますます大声で泣き、マクゴナガルはそれをひたすらに慰めたが「おどかしてないよ?だって脅しじゃないから」などと言う青年のせいでその時間はひたすらに延びていくのだった。

そして日が沈み始めた頃、ハグリッドとダンブルドア校長とマクゴナガルの3人に慰められ諭されてやっと落ち着いた若い闇祓いの魔女に、青年が問いかけた。

「ねえ君、無期限出勤停止って言ってたけど、行くアテあるの?」

「ぜ、ぜんぜん、あり。ありません…………住むところも…………」と完全に青年に対する恐怖が心に刻まれたらしい若い闇祓いの魔女が怯えながら答える。

「君さえ良ければなんだけど、ホグズミードにある僕の店で働かないかい?」

「バジリスクの餌になる仕事ですか…………?」

また目に涙が溜まり始めた若い闇祓いの魔女に、青年は笑って言う。

「違う違う。まあ魔法生物の世話は業務に含まれるけど、店番とか来客対応とか僕の助手役とかだよ。給料は君が欲しいだけ出すし、君の私室もちゃんと用意するよ。あ、それとこれは事前に言っとくべきだな。僕の友達のファスティディオっていうポルターガイストと屋敷しもべ妖精のペニーも一緒だから、毎日賑やかで楽しいよ」

若い闇祓いの魔女は、縋るようにマクゴナガル先生を見て、ハグリッドを見て、ダンブルドア校長を見て、またマクゴナガル先生を見て、そして青年の方を向いた。

「よろしくお願いします………」

「ん、よろしい!これからよろしくね!」

青年はニッコリ微笑んで若い闇祓いの魔女の頭を撫でるが、撫でられる瞬間ビクッと怯んだそのお嬢さんの心に深く刺さった恐怖が薄れていくのには、それからしばらくの日数を要したのだった。

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