In the box
注意
・3兄さん視点
・箱に詰め込まれる二人
・恋愛要素はないです
・クロスギルド合流if
・幼女GWちゃんBW所属概念もちょっとだけ採用しています
・3兄さんやクロスギルドの拠点周り捏造
・性癖にしか従っていない
・その他もろもろ
注意を読んだうえで大丈夫でしたらどうぞよしなに。
「...?」
体の重みに違和感を感じて意識が浮上する。
「ここは一体...」
横になった状態の自身の上に目を向けて驚いた。
「ミス・ゴールデンウィーク!?」
「なあに、Mr.3。」
平然とした様子で私の方に顔を向ける彼女。
流石に今は別室で寝ている彼女が私の上に居るなど有り得ない。
「...君が何かしでかしたのか?」
「そんなわけないじゃない、わたしも気がついたらここに居たの。」
ミス・ゴールデンウィークの手がコン、と天井をノックする。
小さな体躯の彼女でもそれが出来る辺り、ここは随分と狭い空間らしい。
「ただの大きい箱あるいは...棺桶かしらね、これ。」
「縁起でもないことを言うのはやめるガネ。」
ニコ・ロビン...元ミス・オールサンデーのような物言いに渋い顔をして返す。
それ以前にライトが入っていて照らされるような棺桶になど入りたくない。
これがもしそうなのだとしたら死者を安らかに眠らせる気はないのかと問いたくなる。
「で、他の情報は?」
「うーん、わたしからは何とも。早々に暇になってあなたの寝顔を眺めてたわ。」
「...」
その言葉に呆れた顔を返すしかなかった。
「それにしても...君、パーソナルスペース完全無視のこの状態でよく居心地悪いと思わないな。」
当然の疑問を投げかければ、さらっと返事が返ってくる。
「全く思わないわよ?失礼と分かりつつ表現するなら適温の布団みたいな感じかしら。この箱ちょっとひやっとするし。」
「それが失礼だと分かっとるだけいいか...君でない他人にほざかれたら本気でぶっ飛ばしてたガネ。」
「だから眠いんだけど」
脈絡のない言葉で生まれた思考の空白に気が逸れた直後、少しミス・ゴールデンウィークの位置が下がる。
「どうせあなたならこの天井、能力使って壊せるでしょ?」
「やってみなければ分からんが...ッ?」
腕を伸ばして天井に触ってみると妙な脱力感。
...ミス・ゴールデンウィークは非能力者だから分からなかったのだろう。
「海楼石か!私はともかく私の出す蝋には効かんが、そもそも硬いからな...(振りも出来ない状態での一撃でこれを破壊出来るかどうか...)」
考えながらミス・ゴールデンウィークの方に視線を向けると彼女の頭の後ろ辺りにテープで貼り付けられた紙がある。
「ミス・ゴールデンウィーク、もう少し下がってくれないか?」
「え?」
ぐい、と少し頭を押し下げるとぐえっと潰れたカエルのような声が上がった。
「縮むからやめて!」
「人間そのくらいじゃ縮まんガネ。」
貼り付けられていた紙を剥がす。
『時間経過で自動的に蓋が開きます』
ひっくり返して裏を見ても真っ白で、その一文しか書かれていない。
「箱の中を調べつつこのまま待つ方が良いか...無理に壊そうとして変な挙動を起こされても面倒だ。」
「待つの?ふぁ...じゃあおやすみ...」
「おい、ミス・ゴールデンウィーク?」
私の胸元に頭を預けた彼女は暢気に眠りについてしまう。
「全く...私はどうやって開くまでの時間を過ごせばいいんだガネ...」
すやすやと眠るミス・ゴールデンウィークの様子はまるで人に懐く家猫だ。
彼女の頭から帽子を取って脇に置き、起こさないように髪も解いておく。
「んー...」
気持ち良く寝るのはまだいいが身体の上でもそもそと動かれるとこちらが落ち着かない。
ぐっと片腕で抱き留め身体が動かないように軽く抑え込めば大人しくなった。
「そういえば昔は時々こうしてやっていたな...」
眠れないという彼女を寝かしつけるのに一番良かった方法。
唯一の欠点としては自分も眠くなってくることくらいか。
「(もしこの箱が動いたり何かあれば振動で目が覚めるだろう...寝てしまっても一先ず問題はなさそうだ)」
懐かしさを感じながら目を閉じる。
腹の辺りの温もりは昔と変わりない。
ただ昔と比べて少し重くなった彼女には成長を感じる。
...本人に言ったら流石にデリカシーが無いだのなんだのと怒られそうだが。
少しうたた寝をしているうちに体感ではそこそこ経ったが、蓋が開く様子がない。
ミス・ゴールデンウィークも相変わらずでよくも暢気に寝ていられるものだと一周回って関心すら覚えてきた。
手持ち無沙汰に彼女の頭を撫でていればふと疑問が浮かぶ。
「(そういえば、これはどこに配置されているんだ...?)」
棺桶なのかただの箱なのかは分からないが、それが一体どこに置かれていて私たちは詰め込まれているのか。
人の生活音が聞こえて来ない辺り有り得ないとは思うがもし街のど真ん中だったりしたら。
「(...子供と不審者のように見える大人が詰め込まれていれば事案扱いで海兵呼ばれたりせんカネ?それは不味いな...)」
最悪のシナリオを想像して背が冷える。
お尋ね者なのはともかく所謂ところの『ロリコン』の謗りなど受けたくない。
「はー...」
溜め息を吐きながらコン、ともう一度天井をノックしてみる。
音や他の何かの反応は返ってこない。
「むにゅ...すー...」
「(やっぱり暢気だな...)」
海楼石特有の脱力を感じながらも何か仕掛けでも施されていないかと天井をぺたぺたと触る。
箱というのは大抵外側から開けるものなので内側に開ける仕掛けがあることはそう無いだろうが、一抹の可能性も信じてみるしかない。
それにそろそろこの箱を出て溜まっている仕事を片付けねば徹夜コース入りだ。
徹夜は私のもう若くない身体に堪えるからあまりやりたくない。
できれば何か見つかってくれと思いながら触っていると指先に違う感触があった。
「...鍵穴、か?」
ゆっくり指先でなぞると確かに鍵穴の形をしている。
「中の細かい形状が分からんが...蝋を流し込んで回せばいけるか。」
その内側へ蝋を侵入させていく。
暫く待っていると、硬質化した蝋が良い手応えを返してきた。
「ミス・ゴールデンウィーク、起きたまえ。」
身体を揺すると彼女がゆっくりと目を開く。
「んー...なに、開いた?」
「鍵穴のようなものを見つけた、鍵は今作り終えたから開けてみることにしたガネ。」
「ん...」
完成した鍵を捻ると───
ガチャン、と音が鳴って天井が観音開きに跳ね上がった。
周りの様子を見ると見覚えのある光景。
...少々埃っぽくがらんとしたアトリエは暫く帰ってきていなかったが私のものだ。
「ここどこ?」
「私のアトリエだ。暫くここには帰ってきていなかったから少々埃っぽいが...そろそろ退きたまえよ、ミス・ゴールデンウィーク。」
「はぁい。」
ミス・ゴールデンウィークが帽子を回収して私の上から退いたのを確認して箱から出る。
蓋や側面を確認しても何も書かれていない。
「アトリエって今あなた言ったけど...カライ・バリの中ではないみたいね。」
「ああ、そうだ。ここは昔中継地点の代わりに使っていたアトリエだガネ。」
今はもうほとんど来ることのないそこに箱はあった。
よくよく見ると外観はロッカーに近い。
何故ここにあるのか、何故私達が詰められていたのか。
「さて、カライ・バリに帰らねばな。」
先程までうんともすんとも言う様子の無かった懐の電伝虫が鳴る。
受話器を上げた途端にあの派手な男に擬態した。
『おいギャルディーノ、お前いまどこだ!?急に消えやがって!あの絵描きも居ねえし…』
「今はアトリエに居る。お前なら覚えてるだろう、あの場所だ。ミス・ゴールデンウィークもこちらに居るガネ」
『なんであんなハデに遠いとこまで行ってんだよ!?うちの第二拠点から迎えに行くからそのままついでに近隣の島まで仕事しに行ってくれ!』
「はいはい、座長の仰せのままに。」
電話がすぐに切れる。
「すぐに仕事らしいが...」
「こんなハプニングくらいどうってことないわ。」
「流石だな。」
ミス・ゴールデンウィークと二人、迎えの船を待ちながら内心人の居ない場所で良かったと安堵した。