I'm not young enough to be jealous of your youth.

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アリゾナの荒野にある魔法生物保護施設で旧交を温めているスタイルの良いこの女性は、自分の助手である若い魔女が金色の毛並みの牛「リーム」を恐る恐る撫でようとするのを、古い友人と共に穏やかな気持で眺めていた。

「ねえあんないい子どこで拾ってきたの?」

パフスケインを抱えた魔女が訊く。

「去年………いや一昨年か。ホグワーツで『防衛術』の先生やってた時にちょっと色々あってね。あの子が闇祓い局から無期限出勤停止になって、路頭に迷われるのも寝覚め悪いなあーって思ったから雇ったの」

そう答えた女性に、パフスケインを抱えた魔女はニヤリと笑って指摘する。

「………………かわいいからでしょ?」

「違うよ!違、ちが……違わないけど!優秀なんだよあの子!ペニーともファスティディオともすぐ仲良くなったし、指示した事はキチンとこなすし。魔法生物にも受け入れられてるし、記憶力良いし、何着せても似合うし!」

古い友人のその動揺っぷりを見て、パフスケインを抱えた魔女は一層笑顔になる。

「さっきからずっとあの子の足ばっかり見てるものね」

パフスケインを抱えた魔女のその指摘で、リームと交流しつつその会話に聞き耳を立てていた若い魔女は一気に平静を失った。

「やっぱりこの服いかがわしいやつなんじゃないですか?!!!!こんな短すぎるズボンほんとにマグルの若い子が履いてるんですか?!!!変態が着る服では?!!」

リームの傍を離れ、雇い主である女性をポコポコと叩き抗議する若い魔女に、当の雇い主の女性は「リームの前では静かに……」と歯切れの悪い返答しかできていない。

「お若いお嬢さん。貴女『マグル学』苦手だったでしょう?」

そこにパフスケインを抱えた魔女がニッコリ笑って声をかける。

「その服は確かにソイツが鼻の下を伸ばしながら選んだ服だけど、その服は確かに今マグルの若いお嬢さん方がよく履いているもので、貴女とってもよく似合ってるし、だいたいどうせ『それしか用意されてなかった』んじゃないでしょう?」

パフスケインを抱えた魔女は堂々とした口調で、お若いお嬢さんを諭す。

「コイツの事だから貴女が元々持ってた服と一緒に、着てるところが見たい服もいっぱい用意してあって、そこから貴女がそれを選んだんでしょう?じゃ、別にいいじゃない。変態が着る服でも」

着たい服を自分で選んで着たのにそれで文句言うのは筋違いよ、とその魔女は優しく語りかけた。

「堂々としてなさいな。女が美人かどうかはそれで決まるんだから」

どうやら青天の霹靂を魂に浴びたらしい様子の若い魔女を見ながら、その雇い主の女性は旧友の魔女に話しかける。

「相変わらず美人だねぇ。あのころとちっとも変わってない」

褒められた魔女はピシャリと返答する。

「アナタは少しは変わりなさいな。自分が何歳か判らないわけじゃないでしょう?」

そう言われた瞬間、スタイルの良い女性の姿が一気に変わり、短い髪に白いものが混じる背の高い壮年の男性になった。周囲の職員達が少なからず驚く中、その今の今まで女性だった壮年男性をしみじみと眺めて、古い友人の魔女は笑う。

「まったく。ホントにちっとも変わってないんだから」

そして旅行かばんの中からサンダーバード達を出して故郷の空を自由に飛ばせたり、MACUSAの役人達とヌンドゥの件で交渉したり、予め交渉済みのリームの血を結構な量貰ったり、引き換えに不死鳥の涙をいくらか渡したりした後、サンダーバード達を旅行かばんの中に戻したその壮年男性は助手の若い魔女と共に施設を後にする。

「じゃ、またね」と言ったパフスケインを抱える魔女は、一気に険しい顔になる。

「死んだら許さないから。ダンブルドア君の分も、フィグ先生の分も。アンタは長生きして。それでまた、『例のあの人』がくたばってからでいいから会いに来て」

壮年男性は不安そうな顔の友人に、いつもの気軽な笑顔で答える。

「勿論、また来るよ。だから君も元気でいてね」

そして壮年男性は助手の手を引いて、来た時と同じように景色をめくり、その向こうに消えた。しばらく名残惜しそうにその場を動かなかった魔女は、やがて自分の執務室に戻り、放置していた書類の山に再び手をつけ始めた。

「どうだった?久しぶりのアイツは」

その魔女に、壁の肖像画の中のスリザリンの制服を着た女子生徒が声をかける。

「…………かっこよかった。こっちまで若返った気分」

「うらやましいかい?あの体質」

「昔は羨ましく思ったこともあるけど、今はそうでもない。第一アイツのあの体質は『皆と一緒に老いて死ぬ権利』を取り上げられてるようなものじゃない」

スリザリンの女子生徒の肖像画は笑う。

「じゃ、アイツに助けてくれって言われたら助けてあげないとね?」

パフスケインをデスクの傍らに置いて時折撫でつつ、魔女は額縁の中の友人に言う。

「当たり前じゃない。私アイツの事大好きだもの。あなたもそうでしょ?」

それを肯定したのは、問いかけられたスリザリン生の肖像画だけではなかった。

「さっきの方はいつからのご友人なんですか?随分昔からご存知みたいでしたけど」

アリゾナの荒野を連れ立って歩きながら、ホットパンツにTシャツというラフな姿の若い魔女が壮年男性に問う。

「僕がホグワーツに通ってた頃の同級生だよ。彼女はその頃から魔法生物が大好きでよく一緒に宿題やったりしてた。さ!移動するからまたカバンの中入ってね」

「次はどこに行くんですか?帰るんじゃないんだろうなとは思ってますが」

指示には素直に従いつつも、若い魔女は雇い主の壮年男性に訊ねる。

「アフリカ。ワガドゥーに友人が居てね。ヌンドゥを引き取ってもらうんだよ」

ポケットから取り出した旅行かばんに助手の若い魔女を詰め込んだ壮年男性は、少し荒野を見渡した後「姿くらまし」した。



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