IRON FORTUNE
1「あっ 蒼都負けちゃっておるのう」
「『おるのう』じゃねえだろ 任せろとか言っといてやられてるんじゃねーよ」
バズビーは白けたとでも言う様にその場を離れた
マツィヤは未だ十全には動けず日番谷も乱菊も既にダウン 蒼都も石田が助けに入ったようで正直やる事が無い
「じゃあの マツィヤ...儂が聖別されていなければまた会おう」
「待てよダルヴァ …クソッ!」
マツィヤの手先は急激な酸素不足によるチアノーゼによる影響で未だ暗い青色に染まっている 流石にまだ戦うのは不可能だ
ダルヴァは石田に連れられる蒼都を追ってその場を離れた
「星十字騎士団よ これより敗北者の処断を行う」
陛下の口から敗北者の行く末が語られた BG9はまだ戦えると陛下に意見しているが...まあ確かに徒に処断するのはどうなのかとも思うが 聖別を考慮すれば戦力は低下せず陛下の手で逝けるのだから正直贅沢じゃなともダルヴァは考えていた
「えっ ハッシュヴァルトが処断するのか...」
幸運云々言いつつハッシュヴァルトが剣を抜く まあ確かに陛下の手を煩わせるのは良くないのかも知れぬが
ハッシュヴァルトが振るう剣の道中にダルヴァは立ち入り斬撃を素で受ける
「どういうつもりだ」
「運試しじゃ 蒼都もBG9も陛下に処断される栄誉を受け取れずに逝くのも辛かろう...おぬしがこのまま儂を殺せたらそのまま蒼都にその剣を振るえ 殺せなければ陛下へと託せ」
後ろで蒼都もBG9も驚いている
「ダルヴァ そうまでして...」
「助命してくれる訳では無いのか!?」
「いやBG9...助命は無理じゃろ まあ儂が生き残れば陛下にもう一回直談判してから死ぬ贅沢は出来るぞ」
蒼都は目を輝かせ BG9は項垂れている ハッシュヴァルトが剣に力を込めた
「確かにその硬度──素晴らしいな 幸運そのものだ」
天秤が傾き幸運への対価を要求する 死を 不幸を
硬い筋を裁断するようにブチブチとそしてゆっくりと剣はダルヴァを割いていく ダルヴァは静血装を使っている
無論 剣を受け止めるためでなくあくまで止血のみに留めて失血死を防ぐ
剣が通った後の傷の血管や神経を片手で無理やりに繋ぎ 分かたれた自身の身の保身を行う...涅マユリの様にこの手の治療は完璧には出来ないが 最低限繋ぐだけならばどうにかと言ったところだ
剣先が地へと落ちる 剣につられた血は幾らか落ちたが出血はほぼ無い
ダルヴァはポケットから鋼鉄に包まれた傷薬をそのまま咀嚼し傷を大まかに癒した
ハッシュヴァルトは確かに一振り剣を振るい ダルヴァはそこまで大きな傷無く立っている
「良いだろう 下がっていろハッシュヴァルト...」
その様子を見届けた陛下が一歩前に出た 後は陛下が行く末を決めるのみ
蒼都がダルヴァを見て一言小さく だがしっかりと口にした
「ありがとうダルヴァ 憂いなく逝ける」
その言葉にダルヴァは笑顔で返した いつか自身も陛下へとその力を献上し礎となる その先駆けの同志に向けて