IF 冒頭

IF 冒頭


その日も晴天だった。

麦わらの一味は降り注ぐ太陽の下、大海原をサニー号で進んでいた。

「ナミさァん!ロビンちゅわん!朝ごはん出来ましたよぉ!」

サンジがキッチンから出てきていつも通り愛を叫ぶ。あら、ありがと。なんて言いながらロビンは芝生の上を歩く。

「ナミすゎんも!…ナミさん?」

いつもならナミは起きているはずだ。サンジは辺りを見渡す。ナミはサニー号の柵から身を乗り出し、何かを見つめていた。

「なに…あれ……」

朝ごはんだというのにルフィの雄叫びが無いことに気付き、サンジも芝生に降り立つ。

「おーいルフィ、飯だ、ぞ……」

ナミとサンジは同じものを見ていた。いつものように船首にいたルフィも、声すら出せずに同じものを見ていた。


紫のゲートのようなものがサニー号の近くに浮いていた。気候は安定している海域だというのに、ゾッとするような冷気が漂い始めた。起きていた面子も異変を感じて甲板へ出てくる。

「嫌な予感がしやがる」

いつもは昼頃まで起きない事もあるゾロですら、異様な雰囲気に目を覚ます。

「おい、あれ、サイか?」

フランキーが呟く。開きかけのゲートの隙間には、サイによく似た、しかし少し痩せている老いた男が見えた。顔はよく見えない。それどころか、シルエットだけしか解らない。

「おい、お前ー」


瞬間、ゲートが勢いよく全開になった。闇の引力のようなものに、一味はサニー号ごと引き摺りこまれる。海も荒れる。風が吹き荒ぶ。まさに晴天の霹靂だった。

「キャアァァー!?」

冷たい空間に近付いていく。一切の明るさを感じられない場所に有無を言わさず連れて行かれる。

「お前ェら!しがみつけェーー!!」

サニー号は空中のゲートの奥へ、悲鳴と叫びと呻き声と共に消えていった。ゲートはサニー号を吸い込んだ後、バタン!と音を立てて閉じた。風も止み、海も穏やかになり、またどこからか海鳥の鳴き声が聞こえた。


後に残ったのはただ雄大な海だけだった。


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