I my mine

I my mine

中1キャメルと小2クロコダイル

※現パロ要素とモリアペローナ兄妹要素




「おや」

部活も終わった放課後、いつもの店で新作のフローズンドリンクを買おうと駅前に着くとそこにとっくに帰ったはずのモリアがいた。

彼で遊ぼうと近づくと手を繋ぐ小さなお姫様が視界に入ったのだ。

「やあモリア、誘拐かな?」

「ちげぇわボケが! 妹だよ」

恐らくまだ幼稚園に通ってるだろう幼さ、ふわふわのマフラーにゴスロリの真っ赤なフリル服は隣に真っ黒でデカい男もいることでより目立っていた。

「ペローナ、キャメルだ。普段は近づかない様にしろ」

「こんばんわ」

舌足らずな挨拶をしてモリアの足に引っ付く姿はなんだか森のクマさんの歌を思い出させた。うーん似てない兄妹。

「こんばんはペローナちゃん。誘拐じゃないならなに? 駆け落ち?」

「⋯⋯親と仕事帰りに合流して飯食いに行くから待ってんだよ」

モリアは周囲をチラリと確認すると急かすように話しかける。

「ところでお前今暇だよな」

「ううん」

「暇だろ分かってんだよやめろ無駄なやり取りは。ちょっとトイレ行きたいからペローナ見ててくれ」

「ミックスフルーツ⋯⋯」

「あー分かった奢る奢る! 戻る途中で買ってきてやるよ」

「クロの分」

「ホットチョコな」

「それ一番安いよね?」

「マジでお前マジで」

「わあ数量限定だから急がないと。私ちょっとこれで」

「二個な! 二個だけな!」 



走っていくモリアに手を振る。

今日はついてるなあとウキウキしながらペローナちゃんを見るとぬいぐるみを両手で抱えて此方をじっと観察するように見ていた。

「どうしたの」

「くっきー」

「おや目敏い」

鞄の前ポケットに入れていたのはもう一人の友人が海外旅行土産に貰っていたので分けて貰った物だ。三つ食べて残りの二つは残してある。

「くっきー!」

「駄目、これはクロの」

ふいとカバンを後ろ手に持ち直した途端しまった、となる。いつもの友人のノリで対応してしまった。案の定ペローナちゃんのまん丸の眼が泣く前兆を見せ始め私は慌ててモリアのリュックを漁る。彼は私がどこかに暇潰しに彷徨こうとすると毎回お菓子を渡して足止めしてくるのでこのリュックにもそのまま入ってるはずだ。

「はい! これ食べて」

目の前に差し出された包装されたフィナンシェ二つを暫く見つめ受けとってくれてホッとした瞬間そのまま地面に座り込もうとして反射的に抱き抱えてしまった。こんなキレイな服を汚すなんてとんでもない。

幸い小さくて軽いし大人しい子なので負担はない、片手で十分だ。小さな口が動く様を見てぼんやりする。

クロはもう嫌がって暴れるからなあ悲しいなあ中学行ったら全然一緒に帰れないしもっと早くクロ産んでくれたら良かったのに双子でも良いなそしたらずっと同じだしまあクロも友達沢山出来たみたいだしそこは安心できるけども⋯⋯あれこのフィナンシェ私が好きなケーキ屋さんのやつだ何で? 何で私にはくれなかったの? 戻ってきたら貰おう。

「もう一個は食べないの?」

「にいちゃ」

「あげるんだ」

「ん」

偉いね。と頭を撫でようとして──突然背中に強い衝撃を受けて振り返る。

「クロ!」

話しかけようとして首をかしげる。私の足元にランドセルとばらまかれた中身そして目の前のクロはなんだか怒っているようだった。

「どうしたの、何か有った?」

なにかされたの? と鞄の中身に使えそうな物はないかと思考を巡らそうと、

「なんでお菓子あげてんだよ!」

⋯⋯しようとして叫ばれた言葉に停止された。なんて?

「えっ」

「俺以外になんであげてんの!」

「えっだってこれ」

「返せよ!」

突然出てきた正体不明の子供に迫られてペローナちゃんはぐっと唇を震わせる。ヤバいこのままだと私の腕の中で泣いてしまうそれは勘弁願いたい。

「あのねクロ」

「いや!!」

クロより数段高い声に思わず片手で耳を塞ぐ。


「わたしのにいちゃ!!!」


そう、モリアにあげるやつね。

周囲は突然の大声合戦に露骨に避け始めた。だがそんなの気にならない位目の前のクロの表情は愕然としていて。

あっという間に泣き顔になってしまった。

「おれの! おれのアニキ!」

「だめー!!」

「はなせよ!!」

「いやー!!」

最早双方全文字に濁点がついてるだろう絶叫に為す術もない怒ろうにも原因がさっぱりだしペローナちゃんはお菓子ごと私の襟元をぎゅうぎゅう掴むしクロは上着を懸命に引っ張ってきて動けないし妖精がいたら大根持って踊ってるだろう有り様だ。

このまま失聴したらどうしようと考えるくらいしかやることが無くなってしまった。



「トラブルの天才かよ」

呆れた顔で修羅場に戻ってきたモリアに私は初めて人に助けを求めるという行為をする羽目になったのだった。



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