I am not Ironman(崎守)
昔からロボットが好きだった。鋭角的でかっこいいフォルムであったり、丸っこい可愛らしいフォルムであったり、それに搭乗する様々な人物たちの感情の交錯が面白かった。
昔からヒーローが好きだった。誰かを助けて、守って、敵をやっつけるヒーロー。いつかこんな風になりたいと思った。特に、海外のヒーロー映画に出てくるロボットを身に纏う鉄人のヒーローが好きだった。
だからヒーローに憧れた。憧れてしまった。自分もヒーローになれると勘違いしてしまった。
中学生でA級隊員に選ばれた女の子がいた。
エースの名に相応しい実力の元甲子園球児の男性がいた。
全くやる気がなさそうなのに、なんでもできるような女の子がいた。
誰もが皆、自分より上の存在だった。勝てるものなど一つも無かった。ああいう人がきっと主人公で、ヒーローなのだろう。
右手に持っているものが途端に重く感じた。剣にも盾にもなる引き金。お前にヒーローになる資格はないと物語っているようだった。
そうだ。あんなに優秀な人たちがいるのなら俺は必要ないじゃないか。1人減るくらい、なんの問題もない。
そう思って、その優秀な人たちが競い合っているであろうモニターを見上げる。みじめになるだけだが、決別にはちょうどいいと思ったのだ。
─────まるで嵐のような人がいた。皆が使うような刀ではなく、薙刀のような武器を振るい、瞬く間に対戦相手を斬り捨てていた。その剣筋の軌跡と、靡く髪がひどく目に焼き付いた。
とても綺麗で、かっこよかった。
憧憬は消えない。あの人の姿をもっとそばで見てみたい。そうなってからの行動は早かった。なりふり構わず上を目指し、対戦相手のログを穴があくほど見返す。相手の動きを読んで、叩く。負けない。負けられない。あの人に追いつくまでは。