Happy Bubble

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「はい!では皆この辺りで、いったん休憩!3時間後、ここに集合ね!」


 シャボンディ諸島。

 なんでも今は創造主の末裔たる天竜人がおり、海軍はその安全の確保のための巡回をしていた。

 もっとも彼らには護衛も付いており、何より彼らに手を出そうという者など極少数の組織のみで半ば休暇のような仕事である。

 それも一段落し、集団の中のトップである准将のウタが休息の号令をかけた。


「ほらルフィ!回るお店のプランはしっかり組んできたんだから!急いで!」

「ウタ、ちょっと待ってくれ」

「―?」


 ウキウキで今日のデートプランを立て、それを少しでも多く実行しようとしていたウタの誘いに、ルフィが待ったをかけた。

 そのまま部下たちの元へと向かいウタに聞こえないようにルフィは何やらコソコソ話を始める。


「なァ、本当にこれで大丈夫なのか?」

「バッチリです!セリフは覚えてきたんですよね?」

「おう」

「なら自信を持ってください。失敗なんてありませんよ」


 その内緒話が気になり、ウタはこっそりと集団に近付く。しかしルフィが近付いたウタにすぐに気が付く。


「ウ、ウタ!?なんでもねェ!なんでもねェぞ!!よし行こう!!」

「―?ねェ君、今ルフィと何の話を…」

「いえ、特に何もありません!お気をつけて!」

「???」


 疑問には思いつつもウタは、前の方にどんどん進むルフィを追いかけた。

 しばらくすると人気のない場所でルフィが止まる。


「ルフィ、プランと全然違うところ来てるんだけど?もしかして迷った?」

「…ウタ。左手、出してくれ」

「やっぱり迷ってたんじゃない!ほら手繋いであげるから戻ろう」


 そう言うと、ウタはルフィが差し出している右手に自分の左手を乗せる。

 その乗せられた手の薬指に、ルフィはあらかじめ用意していたものをはめる。


「…え?なに…これ…指輪……?」

「ウタ!おれと結婚してくれ!」


 突然のプロポーズにウタの頭が真っ白になった。思考がぐちゃぐちゃになる。言葉もまともに口から出てこなくなり、目頭が熱くなってくる。


「だって…え?まだ交際も…あれ?…ヒグ」

「えェ!?おい泣くなよウタ!!あいつらやっぱり騙しやがったなァ!!悪ィ悲しませるつもりじゃなかったんだ!!」

「違!悲し…ない……嬉…ちょっと…待って……」


 ルフィは、泣き続けるウタにあたふたとどうすることも出来ず、ひたすらに時間だけが経過していった。しばらくしてようやく落ち着きを取り戻したウタがぽつりぽつりとつぶやく。


「指輪…ぶかぶか……」

「ごめん」

「ムード…無い…」

「ごめん」

「順序がおかしい…」

「ごめん」

「…指輪……結婚式までにサイズぴったりの買ってくれたら許す」

「え?それって…?」


 最後のウタに言われた言葉にルフィが呆けた顔をする。それを見たウタはクスリと笑い…


「結婚してあげるわ!」

「ぃやったァ~!!ウタありがとォ~~~!!」


 喜びのあまり抱きつくルフィ。ウタはそれをしっかりと抱きとめた。


「全く、いつまでも子供なんだから…」


 そのまま抱き合う二人。ずっとこのままでいたいと考えていたウタだったが、合流までのタイムリミットがある事を思い出す。もともと立てていたプランの大幅な変更もしなくてはならなくなった。


「ほらルフィ!急ぐよ!服屋は中止!!ドレスを見に行きましょう!!」

「えェ!?早くないか!?」

「早くない!!ほら急いで急いで!!」


 強引にルフィの腕を引っ張るウタ。それから二人は集合時間のギリギリまで、ドレスショップやアクセサリー屋などを回るのだった。


~~~~~~


「そろそろ集合の時間だな。行くぞウタ」

「うん!…あれ?さっきのお店に忘れ物しちゃったかも…。ちょっと取りに入ってくるね」

「一人で大丈夫か?」

「大丈夫だよ!すぐ戻るから先に合流してて!」


 そう言い、ウタは踵を返して先ほどの店へと向かう。

 少し歩くとウタは、ふと左手を空にかざす。そこにある薬指にはめたぶかぶかの指輪をしばらくぼーっと眺める。

 自分はこんなに幸せでいいんだろうか、そう思いながらウタは、にやける顔を抑えられずいた。


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「かわいい子見つけたえ~っ!!」

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