Halloween
注意
・ハロウィンネタです
・2年後時空・クロスギルド合流ifが採用されています
・恋愛要素は特にない
・クロスギルドの一部のキャラ出てません(書き手の解像度や解釈的都合ですがそのうちちゃんと出たバージョン書きたい)
・おまけ有(恋愛要素含む・ちょっといかがわしい・本編のif)
・仮装っていいよね
・その他もろもろ
注意を読んだうえで大丈夫でしたらどうぞよしなに。
───もう明日にはハロウィンだ。
普段のイベントごとはあんまり興味がないけれど、この日は仮装をした人たちが見られて新しい絵のアイデアが浮かびやすいからという理由でわたしも参加することが多い。
「ねー見て、仮装したの。」
「...去年のような仮装だったら全身に布を巻いてそのまま部屋に突っ込むからな。」
こちらを見ないMr.3の言葉に頬を膨らませる。
去年は一応黒猫の仮装だったけど、ちょっと露出度が高かったせいでいつもの服に着替えるまで外に出してもらえなかった。
「今回は全然肌出てないわよ!」
見て、ともう一度促すと彼がこちらを向く。
「...吸血鬼の仮装か。悪くない。」
ワイシャツとジャボに黒のマントと長ズボン。
セールで安く売られていた首元の紅いブローチがアクセントだ。
さすがに文句は言えまいとじっと見れば
「...似合っているな。」
と返ってきた。
「でしょ?」
牙がないのはちょっと吸血鬼らしくないかもしれないけれど、仮想自体は自分でも割と気に入っている。
ハロウィン当日。
今年は仮装したクロスギルドの人たちとの宴がメインイベントだ。
「あまり私の傍を離れるなよ、ミス・ゴールデンウィーク。いつもそうだがこういうイベントのときは特に羽目を外す奴が多い。」
「ボスのところに行けば少しはマシかしら?あの人はあんまりこういうの好きじゃなさそうだし。」
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吸血鬼に仮装した彼と二人で歩く。
これだけ人がいるから有名なモチーフは被らないはずもなく、ちょこちょこわたしたちと同じような仮装の人を見掛ける。
勘違いされて撃たれないように海兵のコスプレ以外ならなんでも良いって言っていたし、盛り上がっているのも楽しそう。
「おや、アンタたちかい。」
「アルビダさんこんばんは!トリックオアトリート!」
「よし、持ってきな。」
ぽいと投げ渡されたお菓子は可愛らしく包まれたキャンディー。
籠でキャッチすれば器用だねと酒瓶を傾けながらナース姿のアルビダさんが笑った。
「君の籠の中にある菓子は渡す用だ、今貰ったものは混ざらないようこちらに入れておきたまえ。」
「うん、分かったわ。」
Mr.3が持ってくれている空の籠にころんとキャンディーがひとつ。
「で、アタシも合言葉を言えばくれるのかい?」
「もちろん!」
「じゃ、トリックオアトリート。」
「アルビダさんには...ラズベリー味のキャンディーなんてどうかしら。」
「あら良いじゃない。いただくわ。」
じゃあね、とアルビダさんが歩いていく。
「適当に配って回るか。」
「そうね。配らず持ったままだと倍くらいになりそうだし...」
「いっそのことそこらに居る奴らに押し付けていくのも悪くないガネ。」
「そんな通り魔的な...ま、そんなことしなくても無くなるでしょ。」
───予想通り、ボスのところに行くまでの間に配る用のお菓子はほとんど無くなっていた。
「ボス、失礼します。」
「あ?...テメェらか。」
「ミス・ゴールデンウィークがボスにも菓子をと言って聞かなくて。」
「それ自体は事実だけどそこまで言ってないわ。そうだ、Mr.1もいかが?」
「え、おれか...?」
困ったように彼がボスの方にちらりと視線を向けるけど、ボスは反応しない。
そのうちに小さく頭を掻いた彼がわたしの方にその大きい手を差し出してきた。
「トリックオアトリート、でいいか?」
「ええ!あなたにはこのクッキー。甘さ控えめで食べやすいと思うわ。」
Mr.1はラッピングされたそれを受け取ってくれた。
「さ、ボスもハロウィンの合言葉を言ってちょうだい?」
「...テメェが言え、ミス・ゴールデンウィーク。」
「え」
思わぬ言葉に固まっていると、薄く煙を吐いたボスが呟く。
「二度は無いぞ」
それを聞いてつっかえながらも言葉を返す。
「と、トリックオアトリート。」
ボスの手がさらりと砂になったと思ったら、元の手に戻って少し遠くの引き出しを開ける。
そしてわたしの手元に高級そうな箱が飛んできた。
「わ、っと!ありがとうボス!」
お代と言わんばかりにボスの為に用意していた、彼の好きなお酒に合いそうなチョコレートが引っ掴まれてボスの方へ向かっていく。
「用は終わりか。」
「終わったわ。受け取ってくれてありがとう、ボス。」
「...フン」
終わったなら帰れと言わんばかりにMr.3とふたり追い出されてしまった。
宴にちょっとだけ参加してから自室に戻る道中、そういえばとまだ彼に合言葉を言ってもらっていないことを思い出した。
「忘れてた。あなたも合言葉、言ってちょうだい?」
「私は別に───」
「言って。」
「...トリックオアトリート」
籠からMr.3に用意していたお菓子を取り出した。
「紅茶に合うしっとりクッキーよ。Mr.1とは違う種類で作ってみたの。」
「そうか、ありがとう。」
ぽん、と頭を撫でられる。
「ティータイムのときにでも食べてちょうだい。じゃあ、また明日。」
自室の扉を開き、彼に手を振ってから入る。
ぱたんと閉じた扉に鍵を掛け、着替えを済ませて早々にベッドへ。
「…結構楽しかったな…」
まるで夢みたい、と呟いて目を閉じた。
おまけ ハロウィン・ナイト(恋愛要素・いかがわしい描写を含みます)(本編のif)
「...で、君から呼び出すなんて珍しいな。」
さっき部屋の前で別れたばかりなのにと言われる。
「悪戯ならお断りだが───」
そう半ば呆れたように言う彼の眼の前で仮装を脱ぎ捨てた。
「なッ!?」
流石にびっくりしたらしいMr.3をぐいっとベッドに引き倒す。
下に着ていたのは───普段なら絶対に着ないような露出度の高い仮装。
まあ物語に出てくるサキュバスとかのイメージが近いかしら。
今日この日のためだけに選んだものだ。
Mr.3のお腹の上に乗って彼に言った。
「わたし、まだあなたに言ってなかったでしょ?...Trick yet treat...お菓子は良いからいたずらさせて?」
「いたずら、か。可愛らしい君はどんないたずらをしてくれるんだ?」
あくまで冷静な表情をする彼の相貌を崩してやりたい。
ムッとした表情を作りながらMr.3に『いたずら』をすることにした。
───わたしたちのハロウィンの夜はまだ終わらない。