Gのイニシャルズ

Gのイニシャルズ


Gのマスター・イニシャルズ 『D2Gゴッドファーザー』のD2フィールド、「Dの炎闘アリーナ・カモーネ」。その内部は異常なまでの気温を持つ灼熱地獄であった。


更に、ありえないことにその熱はストームボーダーの装甲すら透過し、その熱で内部の人間たちを容赦なく焦がしていた。

「おい!これどうにかできないのか?このままだと礼装込みでも藤丸がもたないぞ!!」

「こちらでも解析は進めていますが・・・この高温がこの固有結界(仮)の性質だとすると、今すぐに対策を立てることは困難かと。ここは一度――おや?」

ブリッジにペンギン(リヴァイアサン)のパーカーを来た、スタァが現れる。

「あら?随分といい表情(かお)ね。カルデアのマスターさん?」

カルデアのマスターは苦悶の表情を少しだけ緩めて、

「キミの力が必要なんだ!力を貸して!!」

「そうか!ラムダリリスの第二宝具なら!」

「開口一番がそれ?まぁいいわ。本当に緊急事態のようだからわざわざ出向いてあげたのだし。一つ貸しよ?マスター。後でたっぷりと請求するから。覚悟しててちょうだい」

「ラムダにならいくらだって支払うよ」

「っ そっそう。いい心がけね」

(なぁダ・ヴィンチ。これ今話しかけていいのか?)

(うーん。ここで機嫌を損ねられてもあれだし、もうちょっと待ってみようか)

「まぁ今はこのくらいにしておいて。このままだとアナタが焼け死ぬし、そろそろ始めるわよ。特等席で見物なさい?」

 

スタァがリンク(ステージ)に上がる。

 

「さっき、いくらでも払うと言ったでしょう?手始めに令呪三画、いただこうかしら」

 

「令呪三画をもって命ずる!ラムダ!この船を守ってくれ!!」

 

「――アナタの声、聞き届けたわ。さあプログラムの開演よ!これこそが嫉妬に染まりし海の歌。『大海嘯七罪悲歌』(リヴァイアサン・メルトパージ)!!」

 

ラムダリリスの第二宝具。本来なら、天と地を海で満たし、大津波を引き起こすもの。だが、今回の開放はマスターを守るために。

スタァが作り出した海は、ストームボーダーの船体を覆い、「アリーナ・カモーネ」の灼熱を完全に遮断する———!

 

「よし!これなら」

「そっちはどう?ドギラゴン!」

灼熱から開放されたカルデアのマスターが、前線でGのイニシャルズと戦っているドギラゴン剣に問いかける

「流石に暑いが俺たちは大丈夫だ!だが、ラフルル・ラブは一回下げた方がいいかもしれない。ハムカツ団やモルトと違って火の力を持ってないからな。疲労は大きい」

「わかった!ラフルル・ラブは一旦戻ってきて。お願い、メリュジーヌ」

「瞬きの間に終わらせてくるね。マスター」

音卿の聖霊龍を後方に配置し、境界の竜を最前線に派遣する。

その場の連携でやり過ごしていたこちらの陣形が、カルデアのマスターが復帰したことにより急速に纏まってゆく。

ドギラゴンは笑う、

「よし!これならファイナル革命を使わなくても、なんとかなりそうだ!」

ファイナル革命、それを世界を滅ぼしかねない力。

生前の時点でも気軽に行使できるものではなかったが、サーヴァントとなったことにより更にクールタイムまで設けられた。出し惜しみをする気はないが、使わずに済むのならばその方がいいのは間違いない。

だが、あるいはマスター・イニシャルズとしてのプライドを、傷つけられたからか、ゴッドファーザーが動きだす。

「デンジャラスイッチ・オン」

ゴッドファーザーの声が響き渡り――戦況は一変した。

 

「っ!くっ――――」

「ラムダーーーー!!!」

ストームボーダーは前線から離れた地点を飛行している。当然、敵の遠距離攻撃も常にレーザーで確認しているが、一切反応はない。

にもかかわらず、ラムダリリスに、確かに攻撃が届いていた。

 

ドギラゴン剣は毒づきながらも、敵の力を冷静に分析する

「ちっデンジャラスイッチを起動されたか。その能力は——」

「『どこにいても攻撃が当たる』ってとこか」

モルトが後を引き継いだ。

 

「ラムダ!大丈夫!?」

「っ!ええ、なにも問題ありません。アナタこそ指揮に集中していなくていいの?そんなに私のことを見つめていると、私の虜になって、戻れなくなってしまうかもしれないわよ?――ああそれとも、それがお望みなのかしら?それなら——」

「もうすでになってるから大丈夫。それより」

「はぁ、本当におバカなマスターさん。私はスタァよ?観客の期待を裏切るわけがないでしょう?」

「・・・わかった」

「ああそれと、キス・アンド・クライの用意をしておいて」

「もちろん!両手いっぱいの紫のアマリリスも用意して待ってるね!」

 

アリーナ・カモーネのデンジャラスイッチが起動したことにより、あらゆる回避は意味を失った。であれば取る戦術はただ一つ。

「速攻でかたをつけよう!ドギラゴン!メリュジーヌ!」

ドギラゴン剣が首肯する。

「ああ、俺も同感だ!ハムカツ!お前たちは後ろからだ!!モルト!決めるぞ!ここで使う!」

「了解だ。アイラ!左を頼む!」

超獣とサーヴァントたちが一気にゴッドファーザーとの距離を詰め、周囲を囲む。

そして——

「さぁファイナるぜ!真名展開——ファイナル革命発動!『龍剣 星王紅鬼勝』(集え、最強の切札達よ)!!!」

ドギラゴン剣が修行の果てに身に付けた、世界を滅ぼしかねない力。その力が今、開放される——————!

彼が今回呼び寄せる超獣は——

「火と」

「水で」

「温泉」

「「「ニャー」」」


 

今回の開放にて呼び出されたクリーチャーは『熱湯グレンニャー』。

ネコのような、ナマモノのような外見をしているが、彼ら?もまた、ドギラゴン剣と共に戦い続ける戦士である。

彼らは三位一体となってゴッドファーザーへと飛びかかる———!

「わいらもいくで!」

ハムカツたちも負けてはいない

「おう!いくぜ!」

「拙者もいくでござる!」

反対側からはモルトとアイラが、

「行くぞ!アイラ!」

「うん!行こうモルト!」

二つの翼のような軌跡でゴッドファーザーを斬りえぐり

 

「真名──偽装展開、清廉たる湖面、月光を返す!──沈め!『今は知らず、無垢なる湖光』(イノセンス・アロンダイト)!!」

メリュジーヌが正面からゴッドファーザーを斬って捨てる———!

 

そして――

「止めだ!やれ!ドギラゴン!」

「任せろ!これが――俺達の革命だあああああーーーーーーーーーーーー!!!」

口に加えた伝説の剣(つるぎ)でゴッドファーザーの命を断ち切った。

 

同時に、主を失ったD2フィールドもその役目をおえ、霧散した。

「やった!!」

「敵超獣の存在、完全に消滅。復活の兆候もありません」

「ふぅ、今回もなんとかなったな」

「藤丸くんは一旦休——ああそういえば」

「はい。ちょっと花束を贈ってきます」

 

一気に弛緩した空気が流れだす、強敵を打ち破り、他のマスター・イニシャルズは原則、自身のD2フィールドをでないことを知っている以上、仕方のないことではあった。

 

だが、戦場では何が起こるかわからない。それを、カルデアとクリーチャー達は身をもって知ることとなる。——大きな代償を支払って。


~最強の侵略者~

 

突如、警報が鳴り響く。だがそれよりも早く、大地から轟音が轟いた。

 

遥か彼方から地の鳴き叫ぶ声(おと)がする。最強の侵略者の襲来を告げる音が。

「レッドゾーンか!!」

かつてドギラゴン、ミラダンテ、デス・ザ・ロストの革命0の力をもってようやく打倒した禁断の使徒。不死(ゾンビ)となって蘇り、禁断の力を分け与えられた者。

『禁断の轟速 レッドゾーンX』

 

いくどとなくレッドゾーンと戦いつづけたドギラゴン剣は即座に判断する。

カルデアは疲労困憊、モルトもギンガが不在であり、それ以外の者では力不足であった。

――すなわち、現状、アレと戦闘を成立させられるのは、自分のみである。

「みんな、今すぐに撤退しろ。説明している時間はない!俺は後で合流する!早く!」

「つ!了解しました。キャプテン全員を収容したのち最大船側で離脱を」

 

レッドゾーンの姿が視界に映る。禁断に侵された禍々しい姿が。



 

音速、否、轟速で迫るレッドゾーンXの回し蹴りを、ドギラゴン剣は超速の剣で迎え撃つ———!

 

ずがん、と周囲に重い金属のぶつかり合う音が響き渡り、散った火花が辺りを焦がす。

「ちっ」

「ぐうっ・・・この野郎ーーー!」

 

ドギラゴン剣はレッドゾーンXの蹴りを横に受け流すと、その勢いでレッドゾーンXの首を切り落とそうと剣を跳ね上げる———!

「ここで終わりだーーー!」

まさしく、神速の一閃で振るわれた、その剣。だが、それは

「ふん。落ちたな、ドギラゴン」

レッドゾーンXの手に収まる、禁断の槍によって防がれていた。

「ちっ、お前。前はそんなもん持って・・・」

「速度の落ちたお前に用はない。失せろ!ドギラゴン!!」

そう吐き捨てたレッドゾーンXは、ドギラゴン剣に音速で無数の拳を浴びせる——!


「っ!!」

ドギラゴン剣は心眼(真)を駆使し全力で回避に専念する。

だが、雨のような拳のラッシュにキリはない。そして——

「ぐあああああああああああ!」

ついに、レッドゾーンXの放った拳がドギラゴン剣に突き刺さる

ドギラゴン剣の体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。

「レッドゾーン・・・お前は・・・」

「あばよ、ドギラゴン」

レッドゾーンXがドギラゴン剣に禁断の槍を投擲する。突き刺さった者を石に変える、ドキンダムXが持つ槍を。

最早ドギラゴン剣に、槍を回避する力も、迎撃する力も、残されておらず、――なれど、その槍は防がれていた。

——英雄達の銘が刻まれた伝説の剣によって。

 

「なに!?」

自らの意志で今代の英雄を守護すべく動いた剣は、禁断の力から英雄を守り切り、二つに砕け散った。

 

すると、ドギラゴン剣は霊基の大半を喪失した影響で、ぬいぐるみのようなサイズにまで縮んでしまった。

 

「・・・この世界の英雄達の遺志か。だが、お前はどのみち周回遅れだ」

 

レッドゾーンXがドギラゴン剣を、踏みつぶさんと足を上げ、ドギラゴン剣に落とす、その寸前

 

『誰も知らぬ、無垢なる鼓動』(ホロウハート・アルビオン)!!!』

 

地平線、天と地を分かつ境界(ソラ)から、最強種の対界宝具がレッドゾーンXへと放たれる——————!!!

 

レッドゾーンXは放たれた槍を音速で回避するも、地に突き刺さったソレは地表を焼き、塵をめくりあげレッドゾーンXの視覚を完全に奪っていた。

 

「無事か!?ドギラゴン!?」

「っ モルトか?」

「ああ。もう全員離脱に成功した。ハムカツ達もちゃんと無事だ。お前のおかげでな」

「そうか・・・。今のあいつには・・・俺は———」

「わかってる。ファイナル革命をさっき使ったんだからしょうがないさ。いったん引くぞ」

モルトがミニドギラゴンを抱え上げる。

「・・・すまねぇ」

「気にすんな。そもそもお前がいなきゃ、俺たちみんなやられてたんだから」

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