Firstcontact

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神永side in

学校に課題を忘れるなんて何時ぶりだ?そんなことを考えながら夜の街を歩いていく

家屋からは家族の笑い声やテレビの音声が漏れ聞こえてくる

「幸せそうでなによりですねっと」

そんなどうでもいいことを口に出しながら夜道を歩く。

…自分の親が亡くなったのは5年前だ、と言ってもなんも変なことは無い唯の交通事故に巻き込まれて亡くなったらしい。刻印もあったらしいが歴史の長い家系でもないため効果は望むべくもなかった。

残された刻印は後見人であった叔父経由で俺に移植された、心臓の上に刻まれた小さな刻印。それだけが俺を魔術師として繋げている…。

いや、余計なことを考えすぎたか。さっさと学校から課題を回収しよう、そう考えると金属同士がぶつかり合うような音が学校に近づくにつれ聞こえてくる。

…嫌な予感がする、が足を止めることが出来ない

音に引かれるように校門を潜り校庭を見やる、そこには

────まるで、物語のような戦いが繰り広げられていた

神永side out


穂乃果side in

校庭にて──────

「さて、私たちを誘い出したのは一体どこのどいつかしら?」

体育館から校庭へ出て中央に立つふたつの影に問いかける。この距離からでもわかる、あの影のうち一つはサーヴァントのものであると


「ははははは!我がマスターよ、やはり汝の見立て通りあったか!地の理を掠め取らんとする奸賊が居るではないか!」

サーヴァントと思しき男が吼える、その姿は棘の意匠が目立つ鎧、そして片手には槍を携えている。


「えぇ、そして奸賊であれば我らのやる事は決まっていますねランサー」

その少し後ろにはカソック服に身を包んだ長髪の男性が片手におそらく聖書であろう本を携え佇んでいた。


「ッ!?聖堂教会──!」

穂乃果は動揺を隠せなかった、何せ目の前にいるのは聖堂教会、魔術師にとっては犬猿の仲どころでは無い相手である。

そして目の前の男はおそらく

「…代行者を差し向けるだなんて教義的にサーヴァントは認められないものじゃないの?」


「何、我々代行者は異端の技を持って異端を狩る。ならば英霊召喚を行っても可笑しくないでしょう?」

なんでもない様に自身が代行者であることを明かす男、その言葉を聞いてより穂乃果の体は強ばる。


代行者───聖堂教会における戦闘要員であり教義に存在しない「異端」を排除するための人員。そして高い実力を持つものも多く存在する。このような荒事に参戦しているのは確実に実力者なのだろう


「それで、一体どうするのかしら?ランサーとそのマスター。もし見逃してくれるなら戦闘をしなくて済むのだけど」


「いやいや、流石に逃がしませんよ。ここで逃がしては後々厄介なことになりかねません」

提案を一蹴した男は後ろに下がりながら自身のサーヴァントに声をかける


「ランサー、2人を貫いちゃって下さい」


「よかろう、私の槍をもってその罪を貫いてしんぜよう」ランサーはその槍を構え2人を見据える


「マスター、どうする?」

斧を実体化させ肩に載せながらバーサーカーは自分のマスターへと指示を仰ぐ、その眼は何かを訴えているようで

「…わかったわ、貴方の力を見せてちょうだい!」

その言葉を聞いたバーサーカーは歯を見せる獰猛な笑みを浮かべ力強く応えた


「応っ!!!!!」


──────


そこからは人の目で追える戦いではなかった。

ランサーの振るう槍を斧で、足で、果ては腕で槍の柄の部分を弾く技量を見せるバーサーカー

バーサーカーの人外の力で振るわれる斧を致命傷にならぬよう受けては返すランサー

その戦いぶりはまさに絵物語から英雄が飛びててきたが如し。しかし徐々に天秤は傾いていく。

互いに決定打はない、ただそれでもランサーがバーサーカーに押されていく。


「お、おお、おおお!!!」


斧を受けるランサーが徐々に後退していく、理由はシンプルに膂力の差だ。バーサーカー持つスキル、怪力は自身の筋力を一時的に増幅させる、そしてバーサーカーの筋力はA+。単純な筋力の差がこの結果を作り出していた。


「おら!おら!おら!こんなもんかランサー!!!」

バーサーカーは自身に魔力と電気を迸らせながら剛力を振るう、ただそれだけの事が脅威となってランサーに襲いかかる。


「ははははは!なんと言う怪力、なんと言う膂力!我が目は曇っていたか!その怪力、北欧のヴァイキングにも匹敵、あるいは凌駕するだろう!!」


──────

「うそ、コレが、英霊の戦い…」

自身の目に"強化"をかけることでなんとかその戦いを見ることが出来た。自身の呼び出した英霊と相手の呼び出した英霊、互いに切り札である"宝具"を使用していないとはいえ人では到底行えない戦いを行っている。

コレが聖杯戦争、その実感を今肌で感じていた。


「ふむ、だいぶ不利ですね…」

代行者─名をハインリヒ─が状況を観察しながら冷静に戦況を分析した。自分が召喚したランサーのステータスとバーサーカーのステータスを見比べため息をついた。


LANCER

str B

agi E

mgi A

luk D

con A

np C


Berserker

str A+

agi B

mgi B

luk C

con B+

np C


(おそらくあのバーサーカーは日本の英霊なのでしょう。本来ならば東洋の英霊を呼び出すことは不可能のはずですが…大方この聖杯戦争の開催者が何か細工を仕組んだのでしょうね)

相手のバーサーカーの高水準とも言えるステータス、そして押されている自身のランサー。この状況では撤退も難しいならばやることはただ1つ


「ランサー!宝具の開帳を許可します」

こんな序盤も序盤で切るつもりはなかった切り札、"宝具"を持って決着をつけるつもりであった…


穂乃果side out


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