Fire in the wheel

Fire in the wheel


二千マイル続く砂漠に男が立っていた。

持ち物は擦り切れており、過ぎた年月を物語っていた。

生地が痛んだテンガロンハットの隙間からさす顔色はもはや乾き切っていた。

男はただ視線の先にある物を見据えていた、斜陽の光に照らされた塔を。

塔は天を突き貫くほど高く見えたが、ここよりはるか彼方にあることは明らかだった。

だがこれまでの旅路よりは近いに違いなかった。

しばし逡巡すると、男は再び歩き始めた。


それから三日三晩歩いた後、男は打ち捨てられた街を見つけた。

どれも形をかろうじて残していたが、扉の類はとっくに無くなったせいで砂が入り放題だった。

このような場所にもかつて風などというものはあったのだ。

余り砂が入り込んでいない家を男は寝床にすることにした。

横たわってしばらくすると意識は微睡んでいった。

男が寝ている間、氷が彼の影を舐めた。

世界は流転し続けていた。


赤暗い日の光に照らされて男は目を覚ました。

使い潰しかけたブーツを頼りに立ち上がると、なるほど地面は火の海のよう。

乾涸びた空気は水をもとめ男の体を幾度も引っ掻いた。

けれど男はもうなにもその体に含んでいなかったので応えることが出来なかった。

砂に埋もれた足先が、昔を思い出させた。

彼が彼であった頃を。

男は塔を目指した。


千年後、何回りか大きくなった陽の下で男は荒地を歩いていた。

彼は三人、いや三体に取り囲まれた。

それらは火と砂と闇の子で、一部は男より細く、一部は男より太かった。

彼は腰に手を伸ばした。

すかさず三発。

瞬きする間もなかった。

方塞がりはなくなった。


それは遥か彼方では黒かったがここでは透明だった。

弾力を持ちながら硬く、熱を帯びながら冷を纏っていた。

中を見通し尽くせはしなかったが、検討はとっくについていた。

見上げても尽きぬ眺めは圧倒したが、足を止めはしなかった。

意を決し。

不揃いな得物を握り。

神聖な扉を男は容易く蹴破った。


「男か女か。人か物か。天の神か地の泡か。」

「器。橋を燃やす油壺。」

「橋が焼き払われるのは戦の時だ。」

「識鐧全」

「俺達はもぐらだ。光を求めて這い回る。」

「さればかくもことはなし。」

「ではぬかるな。いざまいらん。」


十分、あるいは十万年続いた戦いの後、男は最後の途にいた。

九と十九と九十九。

無限に等しい階段は、幻獣の夢を見せなかった。

何かの転がり落ちる音も彼の耳には届かなかった。

一歩ごとにのしかかる重荷と熱も彼を止められはしなかった。

そして遂に、男はたどり着き、身を乗り出して、高らかに角笛を吹き鳴らした。

「童子ローランド、暗黒の塔へと至る。」




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