Fate
神永side in
「なんだよ…あれ…!?」
校庭で起きている光景を見て自然と口から言葉がこぼれ落ちた。時代錯誤な格好をした2人の男が槍と斧を手に切った張ったの大立ち回りをしているのだ、しかもその後ろには夜の学校に似つかわないカソック服の神父がいると来たものだ。もう何が起きているのか分からない。
「ランサー!宝具の開帳を許可します」
その言葉を神父服の男が発した瞬間、槍を地面に突き立てた鎧姿の男を中心に血なまぐさい魔力が渦巻き始めた。
「なん、あれ…は?」
只々混乱するしかない、そして不運なことに…後ろに下がった際に誰かが捨てて言ったであろう空き缶を踏みつけてしまった。
「誰だ!?!」
突き立てた槍を抜き、こちらを睨みつける鎧男。
それに反応し校庭にいた全員の視線が自分に集まる。
「っ!?!」
ただ混乱していた。課題を取りに来ただけなのに人外の戦いを目撃して戦っていた奴らに見られる
(殺される殺される殺される!!!!)
あんな戦いをしている魔術師(おそらく)たちが目撃者を生かして返すはずがない。そのまま校庭から離れるように走り出した。
──────
(どうすりゃいいんだ!?家!?あそこにあんのはただの式神だけクッソ!どうすりゃ…)
運が良かった。目の前には誰かが乗り捨てて行った自転車が置いてある。
(どうにでもなれ!!!)
止まっているそれに跨り全力で漕ぐ、体力の限界なんか知らないようにひたすら漕いで逃げ続ける。
しかしその程度で逃げられるようなものでは無い。
「止 ま れ」
真後ろから声が聞こえたと思ったらタイヤのホイールの間に槍が差し込まれる
加速していた体は慣性の法則に従い宙へと舞う。
飛ばされながら見えたのは鎧姿の男と後ろからゆっくりと歩いてくる神父服の男性。
橋の上に放り出され無様に地面に叩きつけられる。
「ガッ!?」
槍を抜いた男がゆっくりとこちらに歩いて来る。
「マスターよ、この迷える子羊は如何に?」
神父服の男は自分の右手を見て残酷な決定を下す
「…一般人であれば記憶処理だけで良いんですがね。彼、7人目のようですし殺してしまいましょうか」
その言葉を聞きランサーと呼ばれていた男は
「おお!我らと刃を、意志をぶつけ合うはずであったのか、ならば残念だ。戦いもせず血を流し供物となるとは…哀れな」
そう言い放ちながら槍を自分に向ける
「せめて苦しまず一思いに送ってやろう」
その一言と共にランサーがゆっくりこちらに歩いてくる。そのまま近づかれれば槍で自分の体は貫かれ死ぬだろう。ゆっくり死が近づいてくる、ただ見えたのは走馬灯ではなく
光を発する自分の鞄であった。
神永side out
ハインリヒside in
(彼も運が悪いですね…聖杯戦争に巻き込まれていることも知らずに我々の戦いを見てしまうとは)
ゆっくり少年に近づくランサーを見ながらすぐに終わるだろう、そう気を抜いていたせいか異変に気付くのが遅れた。
視界の端に光を放つ物体を捉える
「っ!?ランサー、あの鞄を!!!」
その一言がランサーの動きを止めた。止めてしまった。
倒れていた少年が光る鞄に走り出す、その行動を止めようと走り出そうとした、だが距離が離れているため黒鍵を使うか一瞬逡巡してしまった。それが致命的であった。
少年が鞄に手を触れる。その裏には…輝く陣が刻まれていた。
ハインリヒside out
神永side in
一縷の望みにかけて鞄へと走り出す、何でもいいこの状況をどうにかできるのであれば神だろうと悪魔だろうと魂を売っぱらってもいい、ただ生き延びたい。その一心で走り出す。
「───ッガ、アアアア!」
自分の右手を鞄に触れる、そしてその鞄にはいつの間に刻まれたのか輝く陣が刻まれていた。
神永side out
side in
鞄から突風が吹き荒れる。
その光景は神永には分からないがハインリヒは一度見た事のあるものであった。
「──────英霊召喚」
その一言を呟き光が溢れる。
──────
その光景はまるで、御伽噺のようで、現実味のないものであった。
空に光を称える満月が欄干の上に立つ者を照らす。
その姿は、絵物語から出てきたような美しさであった。
「───察するに、貴殿が私の喚び人(マスター)か?」
──────
side out