retribution

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朝日が本格的に差し込み始めたホグワーツ城の正面広場ではヴォルデモートの軍勢とホグワーツ側に立つ人々の最後の戦いが続いている。ヴォルデモートに分霊箱はもはや無く、死喰い人達もそれに与する勢力も次々と討ち果たされていく。

「あ、あのブロンドのべっぴんさん危ないわ。ベラトのオバハンが狙ろとる」

「撃つから軌道修正よろしく……………今!!!」

「アヴェンジグイム(追え)!」

ホグワーツ城の天文台がある塔の最上部、マホウトコロの生徒たち数人が、弓や火縄銃で地上を援護している。隣の女子生徒が弓を放った瞬間に魔法をかけた男子生徒によって、矢は自由自在な軌道で飛んでいく。他にもフィルチの案内で見晴らしのいい高所に陣取った日本魔法省の職員やマホウトコロの教師などが城のあちこちから地上の敵勢力を矢弾や魔法で狙っていた。

「なんだ、どこから狙ってる!!!」

紙一重で矢を躱したベラトリックスが怒声を上げている隙に、ハンナ・アボットは戦塵の向こうに姿を消す。

「インペディメンタ!!」

ハーマイオニーがベラトリックスに妨害呪文を飛ばし、それを防いだ瞬間に背後からポーバトンの女子生徒が失神呪文で狙う。

「小賢しいね!!」

それも敏感に察知して払い除けたベラトリックスがポーバトンの女子生徒に「磔」を見舞うが、すぐに真上から飛んできた銃弾に右足の指の付け根を撃ち抜かれる。

「ッ!!誰だいさっきから鬱陶しい!!」

ポーバトンの女子生徒はイルヴァモーニーの制服を着た青年に助け起こされ、ケンタウルス達は駆け回りながら、グロウプと戦っている棍棒を持った巨人に矢を射掛けている。

「ステューピファイ!!」

ネビル・ロングボトムは杖を持っていない方の手にグリフィンドールの剣を握ったまま、ラバスタン・レストレンジと戦っていた。

失神呪文を防がれたネビルは、飛んできた呪詛を躱す。ネビルは目の前のその死喰い人が両親の仇の内の1人であることを理解していたが、それでも怒りに身を任せるべきではないと冷静に判断してもいた。

ラバスタンが放った緑の閃光を反射的にグリフィンドールの剣で防いだネビルは一瞬グリフィンドールの剣を破壊してしまったのではないかと思って青ざめるが、すぐに汚れすらついていない事に気づく。

「クルーシオ!!」

そこにラバスタンの磔の呪いがネビルを襲った。しかしネビルはハリーから聞いた「あの先生」が2年前の裁判で言ったという言葉を思い起こしていた。

(磔の呪いって、耐えられるならわざと食らって平気なふりしたほうが得なんだよ)

ネビルは聖マンゴの見慣れた病室を思い浮かべ、そこに横たわる父と母を思い浮かべ、写真の中から笑顔で微笑む父と母を思い浮かべながら、苦痛を表情にも出さずにラバスタンにまっすぐ杖を向ける。

「「ステューピファイ!!」」

磔の呪いの維持に全力を注いでいたラバスタンの心臓の真上に、2筋の失神呪文が直撃する。ネビルのすぐ後ろに来ていたオーガスタ・ロングボトムが、ラバスタンに杖を向けたまま真っ直ぐに己の孫の背中を見ていた。

「リナベイト!」

それを遥か向こうから目撃したベラトリックスが倒れた弟に意識蘇生呪文を飛ばす。

「コンフリンゴ!」

しかしすかさずネビルがラバスタンを爆破してトドメをさした。

透明マントを被ったハリーは見える限りの死喰い人に呪いを飛ばし、可能な限りの味方を盾の呪文で援護していた。

ハリーはアントニン・ドロホフとコーバン・ヤックスリーがフリットウィックに2人まとめて真正面から打ち負かされるのを見た。

オーガスタス・ルックウッドはルーナとゼノフィリウスの父娘に「失神」させられ、そのすぐ隣ではロドルファス・レストレンジがコリン・クリービーとミリセント・ブルストロードによってナメクジに「変身」させられた。そしてそれを即ダフネ・グリーングラスが踏んづけて潰す。

グロウプの強烈なアッパーを食らった特に大きな巨人をホグワーツ城の各所からの弓と火縄銃の一斉射が襲い、その魔法で軌道を制御されてグロウプを見事によけた数多の矢と銃弾に穿たれた巨人は、全身から激しく流血して倒れた。

緑色のパジャマ姿のまま戦っているホラス・スラグホーンに謎の薬品を浴びせられた死喰い人は、鮮やかな紫色の汁を割れた水風船のように顔の全ての穴から激しくぶちまけて動かなくなった。

パイアス・シックネスはフレッドとジョージによって大鍋に「変身」させられ、その横でソーフィン・ロウルはロン・ウィーズリーとコーマック・マクラーゲンによって失神させられ風船の如く膨らまされ、重力に見放されて空高く上がっていった。

ハーマイオニーとジニー、そしてパーバティとパドマのパチル姉妹は、4人がかりでベラトリックスと戦っていた。

「インペディメンタ!」

ジニーが放った妨害呪文はさらりと払い除けられ、パーバティを狙った呪詛をパドマが防ぐ。

(ステューピファイ!)

そこに駆けつけて来たルーナが背後から無言で放った失神呪文を鋭敏に察知して防いだベラトリックスが口の端を歪めて嗤う。

「けっこうやるじゃないか、お嬢ちゃん達!」

ハーマイオニーが飛ばした呪詛を躱したベラトリックスがパドマに「全身金縛り」をかけ、そのまま即杖の先から縄を飛ばしてハーマイオニーを縛り上げる。

続いて「フリペンド!」と鋭く叫んだベラトリックスに大事な愛娘が弾き飛ばされるのを遠目に見たゼノフィリウス・ラブグッドは悲鳴を上げ、折れた足で立ち上がろうとしてアーニー・マクミランに止められた。

パーバティとジニーが同時に失神呪文を放つが、また気軽に払い除けられる。

「アバダ―」

地面に転がったパドマ・パチルは、自分に死の呪いが放たれる刹那、ベラトリックスに背後から杖を向けている色褪せた制服を着たスリザリンの女生徒の姿を見た。

自力でなんとか拘束を解いて立ち上がろうとしていたハーマイオニーは、かつてダンブルドアがその「先輩」の事を「わしのほうが強いと思うが、一切手段を選ばず本気で戦ったら勝てるイメージは湧かんのう」と言っていたその理由を次の瞬間察した。

「クルーシオ!!」

死の呪いを放とうとしていたベラトリックスのみならず、その向こうでポーバトンの女子生徒と戦っていた死喰い人マルシベールも、その周囲で別々の相手と戦っていた数人の死喰い人も一斉に倒れて地面をのたうち回る。

「レヴィオーソ!」

必死の形相で抵抗してみせたベラトリックス以外の、「磔」を浴びていた死喰い人が纏めて空中に放り上げられる。そして。

「アバダ・ケダブラ!!」

その女生徒の杖先から放たれた緑の閃光は宙を舞うマルシベールに命中し、そのまま樹木の如く幾筋にも枝分かれして稲妻のように死喰い人達を貫いて広がり跳ね回り、10人弱を一度に鏖殺せしめた。

杖を持っていないほうの手でパドマ・パチルの全身金縛りを解除したその女生徒は、驚愕の色が顔に現れているベラトリックスに杖を向ける。

「クルーシオ!!」

ベラトリックスは防ぐ間も無く再び「磔」に襲われた。

「アバダ―」

そこに死の呪いを飛ばそうとしたエイブリーは反対側の手にも杖を握った女生徒に「武装解除」され、横からアバーフォース・ダンブルドアの呪詛をくらって破裂してバラバラになった。

「アバダ・ケダブラ!!」

ベラトリックスは倒れたまま死の呪いを放つが女生徒はそれを気軽に躱し、遥か後方の巨人に命中した。

「「「「ステューピファイ!!」」」」

ハーマイオニーとジニーとパチル姉妹が一斉に失神呪文を唱えてベラトリックスを狙うが、ベラトリックスは盾の呪文でそれを防ぐ。

「「アバダ・ケダブラ!!」」

女生徒とベラトリックスは同時に唱え、緑の閃光は空中で衝突する。すぐにベラトリックスが押し始めるが、女生徒は死の呪いの押し合いをしながら反対側の手に持っていた杖を仕舞ってポケットに手を突っ込む。

飛んできた3玉の「噛み噛み白菜」がベラトリックスに迫るが、死の呪いの押し合いを止めて大きく飛び退いたベラトリックスは即その白菜を「消失」させた。

「ペトリフィカストタルス!!」

ジニー・ウィーズリーにベラトリックスの「全身金縛り」が命中し、女生徒がベラトリックスに呪詛を放とうとした瞬間。

「私の娘に何をする!!この女狐め!!」

とんでもない声量の怒号が響いた。

「退きな!!」

今の今まで自分が戦っていた死喰い人を踏んづけながら杖をしごき、その女生徒を押しのけたモリー・ウィーズリーはベラトリックスの前に進み出る。

「私の娘にも、娘の友達にも、指一本触れさせてたまるもんですか」

「あんたが私とやるってのかい??本気かい?そっちの妖怪じゃなくてかい?」

よりにもよってベラトリックスに妖怪呼ばわりされたその女生徒の傍の空中が炎上し、現れた不死鳥は歌いながら戦場を飛び回り始める。

ヴォルデモートの軍勢とそれに抗する人々との決戦は、最終盤に差し掛かっていた。


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