資料:備考欄
備考(1):参考資料として回収した物品について
今回の依頼に於いて、受注・解決に尽力した冒険者が回収した物品について、以下の要素が確認された。
・絵巻物(上)
:二本の絵巻物のうち、描かれている内容が説話の前半部分に該当するもの。
極楽浄土が描かれており、絵に紛れるようにして魅了・催眠・陶酔といった効果を持つ呪術式が記されている。効果自体は微弱であり、また絵から目を離せばごく短時間で効果は失われる。
また、描かれた絵より少し離れた部分(巻物の芯側)に呪文の記された短冊状の紙が三枚貼り付けられている。呪文の内容は備考(2)を参照のこと。
・絵巻物(下)
:二本の絵巻物のうち、描かれている内容が説話の後半部分に該当するもの。
極楽浄土に魅入られた二人の男が身を亡ぼしていく様子が描かれている。
絵に紛れるようにして強力な効果を持つ呪術式が記されている。効果を受ける対象は極めて限定的であるが、一度受けた効果は失われないとみられる。具体的な効果の内容は備考(2)を参照のこと。
なお、当物品は依頼中の戦闘で著しく損傷したものの、現在は専門家の修復作業によって状態は回復している。
また、描かれた絵より更に奥、巻物の芯に近い部分に四角く切り取られた穴がある。断面の状態などから、この穴はかなり以前に何者かが切り抜いたものである可能性が高い。
・木箱
:上記の絵巻物二本が納められていた木箱。
材質は古く、また表面に記されている文字も風化によって掠れている。
この文字群は内容物たる絵巻物についてのものであり、呪術的効果は持たない。
また、今回の依頼に於いて討伐対象に指定されていた呪術師が所属していた宗教施設(*1)から以下の物品が回収された。
なお、当該施設は呪術師の出奔と前後して壊滅的被害に遭っており、関連性が疑われている。
・九相図
:三本の絵巻物からなる一連の芸術作品。
一本の巻物につき三つずつ絵が配置され、佳人の死体が腐敗し朽ちていく様が描写されている。絵はそれぞれ丸く縁どられた内側に描かれており、これらについて呪術的要素は確認されていない。
三本の巻物それぞれの芯に近い部分に、細長く切り取られた穴がある。穴の周囲に古い糊の痕跡が見られることから、一度何かを貼り付け、暫く年月が経過した後に切り取られたものと推察される。
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備考(2):絵巻物(上)に貼付された呪文と絵巻物(下)に記された呪術式について
調査の結果、参考資料(備考(1)に記載)として回収された絵巻物(上)に貼付された紙に記された呪文と、絵巻物(下)に記された呪術式に関連性が見られた。
これらに記された呪術式は一つの呪術式を分割して記したものである可能性が指摘されている。
具体的な内容としては、
・絵巻物(上)に貼付された呪文
:対象の肉体及び精神への呪術的アプローチ。肉体面では特定呪術(*2)(以降は単に呪術と表記)への素養の獲得、精神面では理性の弱化。これにより、対象を呪術師に仕立て上げる下準備を行う。
・絵巻物(下)に記された呪術式
:対象の肉体及び精神への呪術的アプローチ。肉体面では呪術の習得、精神面では呪術への隷属。絵巻物(上)に貼付された呪文による下準備を経ることでのみ効果を発揮すると考えられる。
効果を受けた対象は呪術を習得・行使することが可能となり、同時に呪術の行使を最優先目標として行動するようになる。また、呪術習得以後の時間経過、及び行使により、術者と呪術との同一化が進むと目される。討伐にあたった冒険者からは、術者の体表面に付いた傷を呪術の文様が記された符で撫でることで、傷が回復したように見えた、との証言が得られている。
*1:周辺住民の証言や残された図面などから、元々は母屋・離れ・宿舎等複数の木造建築が存在していたことが判明している。
なお、離れがあったエリアに堆積した木材や木片の一部からは、血痕や腐臭の染み付いたものが発見されている。また堆積した木材や木片の下からは多数の白骨化したヒトが見つかっており、現在身元の特定を急いでいる。
*2:ある呪術的文様に魔力(呪力等でも可)を充填することで、文様に触れた対象を腐敗させるもの。実際には文様は「通した魔力に触れたものを腐敗させる性質を付与する」魔法陣としての性質を持っており、この文様への接続、及び魔力充填を可能とすることが当該呪術の本質である。