Code:Umeboshi

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「夢見はどうでした?」


 朝いちばんに船長トラファルガー・ローにそう聞くのが、ペンギンの日課だ。穏かなモーニングコーヒーの香ばしいにおいにつられ、ローが顔を向ける。

 彼の目の下に居座るクマを確認し、ペンギンは「あ、ヤバいかな?」と内心冷や汗をかいた。


 案の定、ローは眉間に深い谷を刻み、少しかすれた声で唸るように言う。


「うるせェ」


 瞬間、不機嫌な顔のままにローは姿を消した。シャンブルズによる脱走である。

 しかし現在、艦は潜水中。幸か不幸か出られやしない。ならば真っ先に向かうのは……。

 ペンギンは急いで懐から艦内放送に繋がる電伝虫を取り出し、叫ぶように言った。


「ジャンバール、武器庫を確認してくれ! キャプテンが例のアレだ、特に爆発物の持ち出しが無いように!」

『……こちらジャンバール、了解した。念のため、ウニも一緒だ』

「ああ、頼んだ」


 仕事のできる期待の新人がすぐさま答え、ペンギンはフゥと一息ついて冷たい額をぬぐった。


 トラファルガー・ローという男は、カリスマ性に溢れ、行動力も決断力もあり、医学にまで精通している自慢の船長だ。

 しかしそんなパーフェクトなローでさえ、自分自身で抗えない「やっかいな性質」を持っている。


 子供のころのトラウマじみた苦い記憶と、夢見の悪さ。彼は常に心身ともに健康で頑丈ではあるが、数か月に一度、子供のころに受けた酷い迫害の記憶を呼び起こす悪い夢を見る。それがよほど強いストレスなのだろう、その日は子供のような振る舞いを見せるのだ。

 30億の首が「子供返り」と、言葉だけ聞けば笑い転げてしまうほどに可愛らしい。しかしそこは30億クオリティ。目を離した隙に爆発物を体に巻いて世界を壊しにHere we go! してしまうような尖ったハートの博覧会になるため、船員らは毎回彼を抑えるのに必死だ。

 

 幸いペンギンはローの幼馴染のひとり。対処は実に手慣れたものである。とりあえず一番危ない武器庫さえ押さえておけば大事無いだろう。そう思って船長用にもってきたコーヒーをのんきにすすりながらテキパキと続けて指示を出した。


「クリオネはすぐにおにぎりを準備してくれ。米はこの前買った一番いい銘柄、具は昨日の鮭をほぐしたやつで頼む」

『アイアイ』

「シャチは麦わらの船医からもらった論文を準備。増えたカルテも読みたがるかな」

『りょーかい』

「イッカクは海ソラグッズを」

『OK、準備しとく』

「べポ、お前は毛皮着ておけ」

『アイアイ……って、これ地毛だよ!?』


 前回は海王類の解剖、前々回はポーカーで船員の小遣いを全部巻き上げる(正気に戻ったら返してくれたが)という暴挙。いい大人たちが実に2連敗中なのだ。

 さて、今回はどんな餌でクソガキを釣ってやろうかと頭を巡らすその最中。


 ポーラータングが激しく揺れ、左右に傾く。

 とたんにがなる電伝虫。


『操舵室より、こちらハクガン! 助けてくれ……! ギャー!』

「おい! どうしたハクガン!」

『操舵室が、キャプテンに占領された~~~!……ブツ、ツー、ツー、ツー』


 あ、あ~~~。3連敗決定~~~。

 ペンギンはぬるくなったコーヒーをグイと飲みほし、ゆっくりと帽子をかぶり直して死んだ目を隠した。

 そして無言でもう一つの電伝虫の赤いボタンを押す。

 発令されたのは。


Code:Umeboshi(状況は激ヤバ★みんな死なないように頑張ろう!)



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