【CP要素につき閲注】邂逅、嫉妬、情景

【CP要素につき閲注】邂逅、嫉妬、情景


※女性陣がナミとロビンのみの世界線になります(視点は二人ではありません)




曰く、残党を発見したという。自然系の能力者を逮捕するには通常の海兵や警察では実力が足りないと上層部は考え、私達にその任務を達成するようにと通達してきた。このようなことはごく稀にある。凶悪な犯罪者の中には、能力を以て被害を拡大させる者も少なくない。私達は、そのような輩を正義の名の下に鎮圧する。それが、諸刃の剣である「闇の正義」であったとしても。

といっても無事に済んだことを喜ぶべきか、それとも拍子抜けと言うのか、とにかく発見された「犯罪者」は捕まった。自首するように、抵抗せず海楼石の手錠を受け入れた。まるで自分の罪を追及されたことに安息すら覚えたような表情をしていた。思考にこびり付いて離れない。洗い流せない。

そう言えば、自分を「海のクズ」と称する変な男がいた。記憶の片隅に閉じ込めた、一時だけの邂逅。

さて、現在は尋問の最中である。担当は私とCPのエリートにして同僚、ロブ・ルッチ。



「元王下七武海、「ドンキホーテ海賊団」団員・・・・・・モネ」


彼女は顔を上げた。碧と白が調和した、この世の者とも思えない程の美麗。両腕両足があったはずの四肢にあったハーピーの翼と足が、一層の幻想と神秘性を湧き立たせている。


「パンクハザード研究ラボがトラファルガー・ローと麦わらの一味に急襲され破壊された後、新世界各地に潜伏と逃走を繰り返していた・・・」


ルッチは事前に渡された報告書を眺めるのに飽きたのか、バサリと机の上に無造作に置いた。モネは顔色一つ変えない。



「・・・貴様、今まで何をしていた?」

「私がやってきたことの清算を、ずっと」

「清算だと?」


そう聞き返したが、彼の表情には既に飽きの色が出ている。興味の在る無しが激しい男だ。私もまた、質問を重ねた。


「具体的には、何を?」


正直、既に調査済みではある。これは相手を試しているのだ。虚偽を伝えようものならば、より一層罪は重くなる。その意図に彼女は気づいているか否かは関係無い。


「覚醒剤中毒並びに違法化学物質薬品による悪影響を受けていた実験体・・・・・・子供達の治療を、行っていたの。スモーカー中将の部隊と共に」

「各地を転々としていたのは?」

「中将達には現地での業務が多く、必要なものは私が調達する必要があったから。ちゃんと監視もいたわ」


どうやら、能力である雪を人間の手足にすることで違和感なく風景に溶け込んでいたのだろう。それにしてもあの子供達の治療と世話とは、流石はスモーカー中将と言ったところか。


「一体何故?貴様、本来投獄されている身だろう」


ドフラミンゴ逮捕後、その関連者、残党は一掃された。最大の顧客であった百獣海賊団も壊滅した。新世界に蔓延っていた闇市場の根絶も順調だ。彼女はその筆頭格、捕まったと考えて当然、もしくは、殺されたか。


「とある人に、助けて貰って。恩を返すために。中将達が私を匿ってくれていたのも、彼が手配してくれたの」



「彼」。


思い出す。あの一夜を。あの日々を。久しく受けていなかった、あの淡く弾けてしまいそうな愛を。特に追及こそしていなかったが、誰なのかはすぐに分かってしまった。きっとあの水都の日々と同じように、素っ気なく、されど包み込むような暖かい優しさ。モネも、それを受け取ったのだろうというのも分かって「しまった」。


チクリ、と胸の内で何かが刺さる。



尋問も終わり、ルッチは足早に去ってしまった。最後に何か要求はあるか、と聞くと「中将達に責任はないから、どうか罰則は与えないで欲しい」とのことだ。良くも悪くも、この件を政府は隠蔽する方針を定めていたことと、中将達の日々の功績を鑑み不問となった。彼女は脱走した捕虜という扱いになったことを伝えると、安心したようだ。

少し経ち、私はいてもたっても居られなくなり、沈黙した彼女に話しかけた。


「・・・彼は、ルフィは、元気にしてた?」


あってはならない、仮面の内の姿を露わにして。刹那、彼女が少し笑みを浮かべたのが分かった。


「えぇ。あのような人には始めてあったわ」

「そう・・・変な男でしょう?」

「そうね・・・・・・私なんかを生かすと言い出した時は心底驚いたわ」


あの日と同じ。私だけじゃ、なかった。私だけじゃ。


「彼は、」

「?」

「彼は、何て?」


「そうね、ルフィは・・・」



『お前は敵だ。だが、殺す程のことじゃねぇ』

『良いの?私は必ず貴方に食らいつくわよ』

『・・・できんのか?その罪の重さを自覚したまま』

『・・・・・・』

『その穢れを背負ってでも生きろ。おれは、お前を殺せねェ』



同じだ。一字一句こそ違うが、あの日、あの崩れゆく司法の塔の中で私に放たれた言葉と。そして、彼が殺そうとしなかった理由を。

どうしようもなく、私は最後に尋ねた。心が揺らいでしまう前に。


「モネ、貴女は、ルフィをどう思ったのかしら」

「そうね・・・・・・忘れられない人、だと思うの」


嗚呼、今日は眠れないかもしれない。あの日置いてきた情景が、罪が、醜い嫉妬と共に雪崩れ込んでくるだろうから。


「そう・・・・・・邪魔したわ。次の指示まで静かに待機していなさい」


果たして、私は無事に退室できただろうか。このどうしようもなく叫びたい気持ちを、悟られずに済んだだろうか。知るよしはない。




【作者後書き?】

未だにルフィのことを忘れられないカリファの話です。モネが言われた言葉、そしてルフィが殺さなかった理由に、自分の存在がいたことが分かってしまった。彼のことを忘れられない。というお話です。ちなみにモネさんはこの世界線だと一味と遭遇した時間が短いため、一夜限りどころはほぼ交流することなく別れたので恋慕の情とかはないです。でもあんな印象に残るのは流石ルフィ。











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