【CP注意】「ナミ!ゾロと結婚してくれ!」
ルフィが海賊王になってしばらく経った。
それでも私たちはルフィの船を降りることなく、自由気ままに旅を続けている。
グランドラインの別の航路に行ってみたい、だとか、アラバスタから新たに行けるようになった温泉に行ってみたい、だとか、やれることはまだまだたくさんあった。そのためには、この船には航海士としての私が必要だ。
そんなある日・・・
ルフィ「ナミ!ゾロと結婚してくれ!」
ナミ「はぁ?」
ルフィが信じられないようなことを言ってきた。
私は耳を疑って、正しく言い直すように促したのに、ルフィはその場で頭を下げるばかりだった。
ルフィ「頼む!!!」
ルフィは甲板に座り込み、深々と頭を下げている。
海賊王たるもの、軽々しくそんなことをするべきじゃない。大体、どうしてそんなことになるのかわからなかった。
ナミ「頼まれたって嫌よ、そんなの」
百歩譲って「おれと結婚してくれ!」なら理解できる。
ルフィだったら、ある日突然プロポーズをすることだってあるかもしれない。私が受け入れるかどうかは置いておいて。
でも、他人と結婚してくれなんて言うのはどう考えたっておかしい。
ルフィ「そんなこと言うなよ!お前、別にゾロのこと嫌いじゃねェだろ!」
ナミ「嫌いじゃなければ結婚できるわけじゃないでしょ!?」
そりゃあ、ゾロのことが嫌いなわけじゃない。
言い合いになることは多いけど、船での付き合いはルフィ同様に一番長いし、助けたことも助けられたこともたくさんある。
仲間として大切・・・ではあるけど、結婚の対象になんて見たことはない。
ルフィ「じゃあ好きになれよ!」
ナミ「アホかァ!!!」
そんなに簡単に好きになる相手を決められるなら、この世に悲恋なんてものはなくなってしまう。
悲恋がなくなることに不都合はないけど、そうはならないからこの世はままならないのだ。
ナミ「・・・大体、なんで急にそんな話になるのよ!!!」
問題はそこだ。
ルフィが意味もなく、結婚なんて話をし始めるわけがない。
ルフィか、ゾロか、そのどっちかに何かがあったに違いない。誰かに変なことを吹き込まれたのかもしれないし、それならその誰かを殴り飛ばしてやらなければ気が済まなかった。
ルフィ「だってェ!!!あいつ!!!“世界中の剣豪と勝負してみてェ”って言って、一人で出航しようとしてんだ!!!」
ナミ「は?」
ルフィ「あいつが一人で海に出たらもう二度と会えねえかもしれねェ!!!それは嫌だ!!!一緒に行ってくれよ!!!頼む!!!」
ナミ「・・・・・・」
そういうことか、と頭を抱えた。
ゾロは、自分の師であるミホークを超え、世界一の大剣豪という立場になった。
夢を叶えたゾロがどうするのか、私だけではなく、クルーのみんなは少なからず不安に思っていたが、ゾロは相変わらずこの船に乗って鍛錬を続けていた。
世界一になっても傲ることなく普段通り、鍛錬を欠かさないところはゾロらしいと思っていたのに・・・
そうくるか。
ナミ「はあ・・・、あんたもあいつも、バカは一生治らないのかしら・・・」
ルフィ「あいつ、犬に乗ってても迷子になるんだ。一人で航海なんてさせたら一生帰ってこねェだろ」
ナミ「否定できないわね・・・」
元々、賞金稼ぎだったときも東の海で漂流に漂流を重ねてルフィに出会うことになったと言っていた。
東の海で実家に帰れなくなるほどの方向音痴がこのグランドラインで漂流を始めたらどうなってしまうのか私にも予想がつかない。
ナミ「・・・まあいいわ、そう言う理由ならついてってあげる。ここにサインすればいいの?」
ルフィ「ああ!」
私はずきずき痛む頭を押さえながら、ルフィが差し出してきた書類にサインをした。判の代わりに拇印を捺して、これで問題ないはずだ。
・・・でも、なにかが引っかかる。
ナミ(あれ?別に着いてくだけなら結婚する必要ってあったのかしら・・・)
ルフィ「ありがとうナミ!ゾロのこと頼んだぞ!」
ナミ「あっ、ちょっと待っ・・・行っちゃった・・・。まあいいか・・・」
私の疑問を置き去りにして、ルフィは書類を持って去って行った。
そもそも私とゾロの故郷は別々だし、あの書類はどこに提出するつもりなんだろう・・・。
こうして、私は世界一の大剣豪と書類上、結婚したらしい。