B小町、紅白歌合戦出場決定!
4ヶ月前、この一報を社長が受け取り、電話口で喜びのあまり大声で叫んでいたのが遠い昔に感じる。
ミヤコさんと社長は感極まり抱き合い、事務所にいた僕を含めて事務所スタッフ、待機していたタレント、事務所に遊びに来て構われていたアクアとルビー
そしてB小町のみんな、一丸となって大喜びだった。筋肉あふれる弊社所属振付師の彼とはハイタッチし合ったぐらいには僕も浮かれていた。
そこからは紅白で歌う選曲の打ち合わせ、舞台演出についての話し合いにアイのマネージャーとして同席しながら、日々の業務と何時ものマネージャー業をする毎日。
帰社してからは社長やミヤコさん達も全員のスケジュール調整をして練習時間を捻出するべく、顔を突き合わせてああだこうだ話し合いから言い合いになる夫婦を宥めて仲介することしばしば…
流石に疲労している僕を見兼ねた子ども達や自分も疲れているであろうに、アイも家事を手伝ってくれたりと協力してくれたことも大きく、何とか頑張って来た。
また、アイはアイで心境の変化から
B小町のみんなと昔みたいに夢を追いかけていた頃に戻りたい、と願うようになった様子だった。
直前まで悩んで、僕や子ども達に辛い表情しながらも勇気を出して不仲になってしまった子達に話しかけていた。
話しかけられた側も邪険にすると言うより心底驚いていた。元々大半の子達は嫌いで不仲になっていった訳ではなかった、という点もある。その様子を見ながら
僕からもアイと比較的仲の良い後期参入の2人にお願いして場を取り持ってもらったり、グループ全員から可愛がられているアクアとルビーが間に入ったり…と
周囲の協力と彼女自身の努力によりB小町はアイを引き立てるだけのチームから当初の個々の力で結束して挑むチームワークが以前より復活した形となった。
「何で昔みたいに、て思ったか、てこと?うーん、なんかね、私達自身仲が上手くいかなくても目標だったドームライブ成し遂げたじゃない?大きな目標が終わって
『アイドル』として終わり見えて来たし…
そんな矢先に紅白じゃない?まだ終われない!このまま終わると心残りが出来る!!、て思っちゃったから…」
みんな、少しは同じこと思ってくれていたから良かったよ。
アイはホッとした、柔らかい笑み浮かべて後々そう語った。
そしてそんな彼女達の頑張りを見ながら僕達事務所スタッフも一丸となって調整、衣装、選曲、振付のアレンジの選定と決定に尽力した。
時には
「ヒカルくん!!服飾屋さんから衣装の納期間に合わないって!」
「絹旗さん!趣味、コスプレで衣装作り慣れてますよね?え?夏と冬の祭典用のしか作った事が無い?上出来です!!ミヤコさん、ウチのスタッフで間に合わせましょう!」
「材料はこちらから押さえるわ!絹旗さん、お願いね」
業務外のことに巻き込まれてピンチヒッターで特別な役職に命じられる事務員(特別手当てが出るので了承済)が現れたり
「喧嘩しないの!何があったの?」
「ええ⁈カナンさんと芽衣さんが互いにワンテンポ遅いって言い合いを⁉︎」
時にはミヤコさんと、たまに僕1人で喧嘩の仲裁に入りもした。
「あそこで頭悩ましているミヤコ副社長には悪いですけど、以前はアイさんを立てるためのパフォーマンスだったから調和が取れていたのが今は個を出すから乱れている、てなんか良いですよね」
「そうだね…僕もそう思う」
「ただ問題は…」
「ああ…」
「「時間が……」」
時間が迫る中、絆を取り戻しつつあるからこそのぶつかり合いが発生したり
(ダンス、振付の簡素化を提案したが、メンバー全員から拒否された。結果としては意地で完成度を上げて来た)、
「ヒカルさん、僕この紅白終わったら折を見て、振付師の仕事を辞めて筋トレ系youtuberになろうと思います。」
「え、えええ⁈」
衝撃的な進路の告白されたり、色々…本当に色々あった。
そして、遂にこの日を迎えたのだ。