Bock【Kapitel 1】
⛰️⛵️村民下に参ります
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・自己解釈⛰️⛵️
・⛰️はしゃべりません
・⛵️がピリピリしています
・ほんの少しだけ💎がいます
最初は、あなたのことが嫌いでした。
初めてウシュバテソーロという存在を知ったのはレースの中継、検査入院7日目のことです。液晶画面に映し出されたのは、顔どころか、体中隙間なくうんざりを貼り付けて立つ様。
「……なんですか、これ」
思わず絶句しました。麻酔が抜けるより酷い眩暈がしました。眼球の奥底がカッと熱くなって、それが引火するように胃の腑が燃え立って。
今すぐにでも、レース上へ向かって、その腑抜けた横っ面を張り倒したくなりました。
だって、画面向こうの彼は、嫌味の塊でしかありませんでした。
きちんと仕上げられた体も。今立っているパドックという場も。これから走るであろうレースも。手に入るかもしれない、ダービーへの切符も。贅沢なほどその腕に抱いていながら、相応な意気込みの片鱗も見えない態度も。
この男は、自分の置かれた価値を自覚しているのだろうか。自覚していてなお、これだと言うのなら。
坊主憎けりゃの言葉通り、何もかもが、思うように走れない僕への当てこすりにしか思えませんでした。
「ちょっとアズール、あんた、血……」
「え?あ……」
我を忘れるあまり、お見舞いに来ていたダイヤ先輩にも、噛み締めすぎて切れていた唇にも、気づかなかった。消毒液くさいシーツを見ると、破れる寸前の爪痕がくっきりと刻まれていました。
あれほどはっきり怒りの輪郭を感じたのは、後にも先にもこれっきりです。
今思うと、我ながら呆れる身勝手さですね。理不尽にも程があります。やる気の有無で出られるのなら、僕だってクラシックを走れていたでしょうに。
でもね、そんな当たり前も忘れるくらい、羨ましかったんです。