BW入社if鰐ゾロ
生意気なペットが好きなクロコダイル
「おい、身なりの良い人間が此処いらでうろうろすんな」
「あァ?」
どう見たってカタギには見えない俺に親切にも声をかけてきたのは、刃物のように鋭い目つきをしたガキだった。こんなゴミ溜めには似つかわしくない真っ直ぐな瞳。しっかり食えていないのだろう。頼りない痩躯では扱うにも手間取りそうな真剣を三本腰に佩いていた。
(和道一文字……大業物か。スラム生まれのガキがおいそれと手にしていい代物じゃねェな。)
「おいガキ。その得物はどうした」
「ア?お前には関係ねェだろ」
全く可愛くないクソガキだ。だが、誰彼構わず尻尾を振る駄犬よりはこれくらい活きのいい野良犬の方がいい。それに薄汚れた身体もきっちり磨いてやればそれなりに見られるようになるだろう。顔立ちがハッキリしているから上手く育てれば良い男になる。
そう確信したクロコダイルは初めての勧誘を目の前の子犬に捧げる事にした。運命論は好かないが、己の直感を信じられなければ海賊なんぞ辞めた方がいい。
「おいクソガキ。今からてめェは俺のモノだ」
「は?何抜かしてんだ」
「みすみすチャンスを逃すような真似は止せ。話を聞いてからでも悪くはねェだろう」
「チッ……なら飯奢れ」
「先ずは風呂と服だ。そんなナリで俺の横を歩かせるワケにはいかねェ」
「なんだよ、面倒な奴だな……」
良い拾い物をしたことで機嫌良く今後の算段をするクロコダイル。彼は未だ知らない。目を離した隙に忽然と姿を消した少年をあちこち探し回る羽目になることを。そしてその苦労が今後一生付き纏うものであるということを───