BL可愛い地球人(18禁)
ななしエッチなシーン塗れなので気をつけて。大人の人だけ呼んでください。
人外(一応ドラゴンの獣人)×男の子
(人間を愛玩動物扱いしている・小スカ・女装)
目を覚めるとそこは知らない世界だった。
「………んあ?」
よく見るヘンテコな夢かなにかと目をゴシゴシと擦ったり、頬をつねるが起きる様子は微塵も感じられない。
どうやらこれは現実でリアルらしい。いつもの様に登校した筈なのに今自分がいるのは学校の教室ではなく、知らない部屋に居た。
(…なんだココ……?ベッド…もあるし、机…もある)
全面白い空間であり、一面の壁だけ品質が違うように見える。周りを見渡すだけでその部屋は完結しており、シンプルなベッドや机、椅子だけが端に並べられている。ぺたぺたと無遠慮に触ってみるが特に害はなさそうだ。
ふと、自分の格好を確認すれば制服ではなく、入院する時に着るような服に変わっていた。
(…なんか、ちんこ変だな……)
手足を動かしてみるが特にないな…と思えば、股間辺りに違和感がある。周りに人が居ないことを再確認してから、そっとズボンをずらし、中を確認するとそこには見たこともないような機械が陰茎きピッタリと纏うようにくっついていた。
「げ、なにこれっ!?と……とれない…」
そういえば尻にも違和感がある。恐る恐る臀部の方にも手を伸ばせば、小さな尻穴にも何かが嵌め込まれており、今更ながらの異物感を腹の中で感じた。
必死にカリカリと爪を立てて取ろうと試みるが、まるで外せる気配はない。
「……まあ、違和感だけだし放置しよ……」
少年は諦めが早く、柔軟しやすい性格であった。慣れれば違和感もなくなるだろ、と五分で取るのを辞めてゴロリとベッドへ横になる。もう一度寝れば元の場所に戻れるだろうかと、照明をしばらくぼーっと見ていると、ウィーー、と何かの機械音と共に一面だけ色が違っていた壁に変化が起きた。まるでガラスのように透明となり、外の風景が映し出されたのだ。
「なんだこれ……店…?」
見てみると、何かの店内のようだ。商品棚が並べられ、投影されたディスプレイに書かれている言語は日本語とも英語とも違う、青年には理解できない文字だった。
透明な壁に手を置きながらも隅々まで観察していると、風景の奥からぞろぞろと何かがコチラへと向かってくるのを視界にとらえた。
(あれは……、)
ソレは一件人間に見えた。しかし、彼らの頭には本来無いはずの大きな獣の耳を生やしていたり、尻尾のようなものをゆらりと揺らしながら歩いている。
コスプレ集団、と思いたかったがそれはありえない、と確信する自分がいた。
少年が唖然と眺めている間にもそれはどんどんと近づいており、気付けば目と鼻の距離にまで迫ってきていた。
(えっ、ちょ……で、でか!!)
透明な壁の向こうで彼等が立つと自分との体格差がよくわかる。男女どちらも背丈だけでも2mは軽くあり、彼らの手は自分の頭と同等のサイズ。子供らしき人ですら自分よりも高く、不思議な形状のぬいぐるみを抱えながら少年を指さす。
「コイツら……、僕を、みてる…?」
向こう側では彼等は少年のことを指さしながら見ては笑ったり、何かを話す。まるで自分が動物園の動物になった気分だ。
(品定めされてるみたいで、気分悪い…)
ぎゅ、と自分の腕を抱きしめると向こう側の彼等は何故か笑顔になって盛り上がる様子を見せた。ますます不気味だと、少年は腕をさすりながらその空間を耐え続けた。
なるべく視線を意識しないよう、ベッドに腰かけて今置かれている自分の状況を整理する。
(ここに来る前は…期末テストが終わって友達とカラオケオールしたんだよなあ)
数人の友達と熱心に歌いつづけ、帰る頃には全員声も出せない程に声が枯れていたのを覚えている。その後、そのまま学校にウトウトしながら登校し──その後の記憶はここからになっている。
(どこで記憶ないのが全然覚えてないや。……で今ここの空間は、動物園みたい感じ……いや、ペットショップかな…?)
ならばあの獣耳を生やした人々にいつか飼われる日が来るんだろうか。ペットになり、あの中にいる誰かにご主人様♡なんて言って愛玩動物みたいに媚びる自分を想像し、ううむと唇を尖らせる。
(僕面倒くさがりだからなあ……言うこととか聞けなくて、反感喰らいそう〜…)
少々ズレた緊張感のないことで悩んでいるうちにも時間は過ぎていく。気がつくと壁の向こう側にいた彼等は先程よりも疎らになっており、視線の量も少なくなっていた。
それと共に腹から、ぐう、と音が鳴り出す。
「…お腹減ったかも」
そういえば、朝食を食べてないことを思い出していると、何も無い壁の一部がガシャガシャと音を立て、何かがせり上がってきた。
「うわ!なにこれ、近未来〜!!」
そこには皿に乗った料理が置かれており、出来立てなのか湯気が立っており、美味しそうな匂いを漂わせる。
「おおっ……いい匂い……!」
思わずゴクリと喉を鳴らし、目の前に置かれた食事に手を伸ばしそうになるがふと毒が入っている可能性が脳裏に浮かぶ。
「………大丈夫でしょ、うん」
が、空腹には勝てず、結局手を伸ばして、皿を掴むとふたたび音を立てて、何の変哲もない壁に元通りになった。
ぺたぺたとその部分を触ってみるが出っばりもなければ、継ぎ目すらも見つからない。
とりあえず食べよう、とフォークを手に取り、ジューシーなお肉を刺して口へと運ぶ。
「……うまいッ!!!」
思わず声を上げて感動で胸を満たす。今まで食べたどの食べ物よりもこのステーキは美味しく、誰かの視線など気にせずに夢中で食べる。肉汁が口元に零れるのをそのままにはふはふと咀噛する。
あっという間に平らげると、空っぽの皿を名残惜しそうに眺めているとまた壁が動き出した。中には何も無いのでここに置けという事かと思い、皿とフォークを載せればガシャンガシャンと壁の中へ消えていった。
(便利だなあ…)
しみじみと感心しながらベッドへゴロリと転がる。食べれば眠くなるのは人間の性。まだ寝たくないのに瞼はだんだんと重くなり、意識は微睡んでいく。
彼が次に目を覚ました時にはあの透明な壁はほかの面と同じよう色を取り戻しており、店内は見えることなく、狭い空間に自分が取り残されている状態だった。
「…やば………ちょっとだらけすぎた?」
けどここに来る前はオールしていたのだから眠いのも仕方ないのだと、ヨダレを拭きつつ言い訳をしながらも部屋になにか他に変化はないと軽くて彷徨いてみる。
真っ白な空間であることには変わりない、だが机の上に物が増えていた。紙に色んなクレオン、それとボールだ。
「……僕ってボールで遊ぶと思われてる?」
犬じゃないんだから、と手のひらサイズのボールを持ちつつもため息をつく。目を開ければ自分の家─なんて、儚い希望はやはり、捨てるべきだろうか。
「…………そういや、トイレは見当たらないな」
湿っぽい感情がカラダを満たそうとした時、ふと思う。自分の性器には訳の分からない機械が取り付いているし、部屋全体を見てもトイレはどこにも無い。 もし出しなくなったらどうしたらいいのか。
「……なんか考えてたらトイレ行きたくなってきた……」
むずり、と腹の下が疼き、思わず手で抑える。ここで漏らしたら、と不安を抱き、キョロキョロと辺りを見渡す。だが、先程の食事のような変化は起きず、ただ時間が過ぎていくだけだ。じわじわと背中に冷や汗が伝っていく感覚がし、て、膀胱が限界だと言わんばかりに痛み始めた。
(やば、っこのままじゃ漏れる……!!)
その場で蹲り、ぎゅううっと必死に腹に力を込めて、耐え忍ぼうにも尿意はどんどんと強まっていく。流石の自分も知らない場所、それもトイレでもなんでもない所で漏らすなんて、と焦燥に駆られ、歯を食いしばる。
「やばい……ほんとに……ッ!」
もう出そう、と目を瞑り、性器の先っぽから出る───と思った時、亀頭に張り付いていた機械が蠢めいた。
「ひぃっ!!な、なっ…!?」
キィーーン、と小さな機械音と共に先にある小さな入口になにかが入り込むような感覚がする。鈴口から細い細い、触手のようなそれが奥に突き進み、溢れんばかりの尿をジュウウッ、と吸い上げた。
「ぁ゛、あぁ…うそ、っお、おしっこ、吸い取って……!」
あまりの快感にへにゃりと床に突っ伏し、腰だけが高く上に突き出す間にも陰茎全体を纏わる機械が容赦なく尿道に侵入を続け、ほじくるように尿を搾り取る。
「っ、な、なにこれぇ……っ!」
気持ち悪いはずなのに、どうしてなのか甘い痺れが背筋を駆け巡るとともに尻穴にも入った機械を締め付けるようにきゅうっ、と収縮する。
ちょろ、ちょろろと溢れる液を余すことなく全てを吸われ、排尿を終えた時には部屋の真ん中で、床にだらしなく転がっていた。
はあ、はあ、と息を荒らげ、顔に熱がこもるのを感じながらもだるい体に鞭をうち、そっとズボンの中をのぞき込む。
やはり、陰茎に機械は張り付いただが、汚れも染みもひとつも無い。
(……これ、おしっこを吸い取る機械…だったのかよ)
なら、後ろにもある機械も同じ機能なんだろう。ここに来て初めて、これは嫌だという思いを強く抱いた少年だった。
嫌だ嫌だと思っていても、トイレに行きたいと身体が許さず、壁が透明になった時間帯でも容赦なく何回か吸い上げられてしまった。 それも、あの不思議な彼等がいる前で。
少年は確かに柔軟な思考があれど、羞恥心だって存在する。何度も強制的に行われた結果、出す際はベッドに転がり、布団の中に潜り込んでするようにした。
こうすれば、恥ずかしさはあれど自分の排尿している顔を見られることは無いのだから。
(……うう、ホント…やだ)
ぶるりと全身を震わせながらも、全てを出し切り真っ赤になったであろう頬を手で冷やす。この謎の部屋に来てから、どれくらいの日数が経ったのだろうか。
相変わらずの真っ白な空間で、時々壁の一面が透明になっては彼等が自分を観察している。
(……このトイレだけは嫌だけど、それ以外はただつまんないんだよなあー)
一眠りする度に何かしら物が増えているようだが、長続きすることは無く、部屋の隅に置きっぱなしだ。唯一使っていると言えば眠る時に使う丸いぬいぐるみぐらいか。
布団から体を出し、ボサボサになった髪を手ぐしで整えながら透明な壁を一瞥する。
「あ、またアイツいる」
ここずっと彼等が自分を観察するように自分もまた、あちらのことを観察し続けていた。その行動によって、毎日自分を見ている人がいたことを知った。
一件普通の人間のような見た目だが、肌にはビッシリと鱗が覆われ、大きな角を二本生やしており、時々開く口元からは鋭い牙が覗く。青みのある銀髪に整った顔立ちは美しくも恐ろしさが滲んでいる。
(……しっかしデッカイなあ)
元々彼等は自分よりもデカいが、その人は彼等よりも頭一つ分程大きく見える。そんな彼──勝手にアオさんに名付けた─は、透明な壁になる度に奥の方からまっすぐとこちらに来ては透明な壁で無くなるまでじっと見つめてくるのだ。
最初は不気味に思ったが、この訳のわからなぃ状況において馴染みがある物が一つでもいるとホッとする。
試しに近付いてみると、アオはピクリと肩を揺らしたが両眼は自分を捉え続けている。
「こんちわー」
声は聞こえてないだろうが一応挨拶しながらも、とんとん、と薄いガラスを叩いてみると目を見開いて驚いた顔をした。初めて見る表情の変化になんだか面白い。
アオは周囲を見渡した後、ぺったりと少年が壁に手を置いているところに己の手を壁越しから重ねるようにして当てた。
「ハイタッチみたーい」
思わずくすりと笑うと、彼の頬に熱がこもりキョロキョロと忙しなく目を動かしている。どうやら照れているらしい。
可愛いところもあるんだなあと呑気に感想を抱いていると、アオはまたじっとこちらを凝視したかと思えば何か決意したように瞳を煌めかせ、珍しくどこかへと去っていった。
「……どうしたんだろ?」
首を傾げてそう思ったが少年は気にしても仕方ないと、音が鳴るボールを壁にむかって投げつける。シャン、シャン、と狭い部屋の中でボールが跳ねる度に音が響く。
この行為もいったい何度目なのか。暇だなあ、とボールをぐにぐにと掴んで形を変えていると、ふと壁の外側でアオがエプロンをつけた店員のような人と共に戻ってきた。
どうしたのかと眺めていれば、店員が透明な壁に触れるとなんと、自動ドアのように扉が開いたではないか。
「!」
「────?」
「──」
二人は何やら話をしながらも此方に近付いてくるので青年も自然と後ろへ下がると、背後にあったベッドに足を取られ、ドスンッ!と尻餅をつくように倒れ込んだ。
「いった!」
「────!!」
おしりの痛みに手で押え、涙が出るがそれを見たアオが慌てて駆け寄ってひょいっと軽々しく抱きかかえられてしまった。これでは逃げることは不可能だ。
「う、うわっ………、」
(顔、ちか)
「─……────、────?」
大きな鋭い瞳で見つめられ、知らない言語で話しかけてくる。内容は分からないものの優しい声音でヒリヒリと痛む臀部を丁寧に優しく撫でられる。
その動作から心配しているでいいのだろうか。この部屋に来てから初めての優しさが擽ったく思い、恥ずかしそうに目を逸らす少年に苛立ちもせず、アオはニコニコとしていた。
「──、──、───」
「…────、──」
「─────」
どうしたものかと頭を悩ませていると何やら頭上で店員とアオは話し始め、移動し始めた。そう、部屋の外に出れたのだ。こうも呆気なく出ることになるとは…と思いながらも、あの白い空間より遥かに情報量の多い世界に少年の目がチカチカとする。
ちらりと先程居た空間の方へ見るとそこにはいくつものガラス壁があり、内側には少年と同じような格好で気だるげにいる人間達が居た。皆、覇気がない。
あまりにも異様で思わずごくりと唾を飲む。
(…人間、だ。僕と同じように…展示されてる)
ここはどこだか分からない。だがこんな扱いからして地球…少なくとも日本のはずがない。まさしく異世界だ。
謎の耳や尻尾を生やした彼等も、人間をペット扱いするのも、理解できない言語も。
ぎゅ、とバクバクとなる心臓を抑えるように胸を押さえているとアオと店員はテーブルに座り、会話を始めた。
テーブルにはプロジェクターのように投影された画面があり、細かな文字が並んでいる。
恐る恐る覗き込むが全く分からない。
「うーん………なんだろ……?」
日本のペットショップと同じものなら、基本的に買う前に契約内容やしつけのことを話すはず。つまりこれは自分に関する書類、なのかもしれない。
むむむ、と唸らす少年に後ろでアオはうっとりと彼を見つめ、たまらない!といった様子でぎゅうぎゅうと力を込める。
「──!!─!」
「く、くるしっ……なに、っなんでこの人こんな興奮してんの?!」
全くもって何が何だか分からない。ちんぷんかんぷんな少年に目の前で説明していた店員は呆れたような目で見つめていた。
これ以上邪魔をすれば怒られるかもしれない、と少年はアオの腕の中で静かに待っているとアオはいくつか書き込み、どこかスッキリした様子だ。
「───」
「────、───」
「──」
終わったのかと顔を上げれば、アオの手にはチョーカーが一つ握られていた。長さからして彼のものでは無い。
アオは自分と目を合わせるとチョーカーを指さし、そして少年の首をつんつんと指した。
(僕につけるよって…ことかな)
犬の首輪のようなものだろうか。 逆らってもどうにも出来ないだろうと判断し、おずおずと頷くとぱっと明るい笑顔でアオは何故かふんすふんすと鼻息を荒げながら手際よく首に装着させた。
カチン、とピッタリハマったソレは意外にも息苦しくなく、ただ肌に触れる感触だけが不思議だった。
ペットなのだから、ゲージにでも入れられてしまうのかと思っていたが、そんな扱いはなく、アオに抱えられたまま店員との会話を終えて外へと出てしまった。
「うわあ…」
自動ドアが開かれると同時にアオが大きな一歩を踏み出すと、目の前にはいくつもの高層ビル、人々、そして不思議な車達が映し出された。まるでアニメやゲームのような近未来的な世界がそこに広がっていたのだ。
「わ、わ、わ」
もっと見たいとキョロキョロと顔を動かすがアオはスタスタと歩いて、駐車場らしき場所へと行くと一つの乗り物に触れる。
「おおお!カッコイイ車〜!!」
その乗り物はフワフワと低空飛行をしており、白と青で丸みのあるデザインだ。アオが触れただけで勝手に扉が開き、中は意外にも広々としている。
アオはそっと少年を助手席に座らせると、そのフカフカとしたソファに華奢な身体が沈んでいく。
アオはその隣に乗り込むと車は宙に浮き、音もなく動き始めた。
「うわああ、浮いてる!」
「────、」
車特有のうるさい音はなく、前方から天井はガラス張りで太陽の日差しが差し込むが不思議なことに暑くも眩しくも感じることはない。
(東京みたいな都会とはまた違った風景だ……)
東京タワーよりも大きな建物が街の奥に見え、空にはちいさな飛行機らしき物体が飛び交う。
道にはチラホラとルンバのようなロボットが居て、落ちているゴミがあれば吸い取る動作をしている。弧を描いた建物の表面や空中には広告らしき動画が投影され、時折立体的になっては綺麗な女の人が微笑んでおり、もちろん、彼女の頭には角が生えていた。アオのに少し似ているな、とチラリと隣で運転している彼を見る。
鱗のある肌や大きな角は歪だが、それ以上の端正な顔立ちに思わず見惚れてしまう。彼は一体何者なんだろうか。
今まで見た人達は、犬や猫、狐などわかりやすい特徴があったがアオはどういう動物なのか検討もつかない。
(なんだろうなぁ…トカゲ…?蛇…?)
ううーんと腕を組む少年を他所にアオはある建物へ入っていく。
どうやらマンションらしい。入口近くで降りると車だけが勝手に動き、ひとりでに地下へと行ってしまった。恐らく駐車場に行ったのだろう。完全な自動運転システムに少年は感心するばかりだ。
「すごぉ…」
「───」
少年が車が去った方角を凝視するのを、アオはヨシヨシと彼の頭を撫でながらもロビーに入ると幾つかあるエレベーターと思われる扉へ乗り込んだ。
アオがディスプレイにタッチすると、数十秒後にピン!と音が鳴ると共に扉が開いた。既にそこは玄関となっており広々とした部屋が奥に広がっている。
(あれ…、もう着いた!?どういうシステムなんだ……)
「──、─────」
ガチャン、と閉まるとアオはようやく少年を下へと降ろし、小さな彼の手を分厚く大きい手で包み込みながら何かを言って、微笑む。そして歩き始めたので少年は慌てて後を追うようについて行く。握りしめられた手の温もりは人間と同じような温かさがあった。
「───、──」
(部屋を案内してくれてるのかな……)
トイレや浴室、寝室など様々な場所を来ては何かを喋っている様子だが少年には何を言ってるか分からない。どこの部屋も清潔で整頓されており、床には柔らかなカーペットが敷いてありふかふかとして気持ちがいい。
「僕、ここで暮らすんだなあ…」
一通り案内を終えるとアオは少年をソファに座らせて、キッチンへと行ってしまった。ご飯を作ってくれるらしい。
いくつもの不思議な形をしたソファやぬいぐるみが置かれたそこに身を寄せて、そのひとつを抱きしめてみる。
(これ、あっこにあったぬいぐるみに似てる……わざわざ買ってきてくれたのかな?)
可愛くとは言えないがどこか愛嬌のあるぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめると、触り心地がよく思わず頬擦りをする。
「あの人……いい人そうでよかった」
見た目は怖いけれど、自分に触れる時の手つきや表情はとても優しく、まるで壊れ物を扱うような手付きだった。尻もちをついた時も、言葉は分からないが心配したような声音をしていた気がする。
(……、大丈夫……)
だから大丈夫、自分は生きていける。そう己に言い聞かせて、もう一度強く抱き締めた。
「───、」
「あ」
頭上から声が聞こえ、顔を上げると目の前にはアオが立っており、その両手には料理が乗ったお皿が二つあった。
テーブルに置かれたソレは、ジュワジュワと脂が滴る肉と鮮やかな緑の葉が挟まれたサンドイッチだ。いい匂いを漂わせており、少年のお腹がぐぅと音を立てる。
「食べていい、の?」
指をさす、という行為が通じたことを思い出し、サンドイッチと自分を交互に指さすとアオはこくこくと嬉しそうに頷いた。食べていいらしい。
少年が躊躇してる間にもアオは片手で持ち、大きな口をかぶりついたことでもう三分の一が無くなっていた。
(口でっか!…僕も、食べてみよ)
ドキドキと鼓動を鳴らしながら、少年はパクリとひとくち口に含む。
「…うま!!」
肉厚なパンに挟まれたシャキシャキレタスと、ジューシーな肉汁が溢れ出し、噛めば噛むほど旨味が出てくる。ジャンクフードとは違う、野菜本来の美味しさが凝縮されたそれに、少年は目を輝かせてハムハムと頬をパンパンにして咀しゃくしていく。
「───、───」
「ん、う、うまいです!これ!うまい!」
アオの優しい視線に少年は身振り手振りでこのサンドイッチが美味しいことを一生懸命に伝える。そんな少年の口元はソースが付いている。気付いたアオは笑みを深め、大きな口元からチロリと長い舌が覗せたと思いきや、少年の唇周辺をねっとりと舐めた。
「んむっっ!?」
少年が驚いている間にも、チロチロと丁寧に唇のソースを舐められ、やっとのことで離れた時には少年の顔はアオの唾液でベタベタになっていた。
「────」
「…?……?」
なぜ舐められたのかにわからず、少年は困惑に塗れた表情で呆然としていた。
食事を終えるとアオは早速少年にぴったりとくっつき、肩を抱き寄せながら頭に口付けしたり、むちゅうと頬へ唇を押し付けては舐めることを繰り返す。
(これは…っ、あ、愛でてくれてるってことでいいのかな)
ここまで直接的な愛情表現は日本に居たときにもされたことがなく、少年は戸惑いながらも受け入れていた。アオの胸板は厚く、服越しでも分かるぐらい筋肉質だ。服の下から除く逞しい腕には鱗がある為、当たる度にボコボコとした感触がする。
「────、───、───」
そんな温もりに段々眠気が来そうな時、不意にアオは少年の顔を持ち、上に向けさせることで目と目が合う。そして、何か同じ単語を繰り返し始めた。
(…?、なんだろう)
何やら、アオは自身を指さしながらその単語を紡ぎ、訴えるような瞳がこちらを見つめている。
(上手く聞き取れないけど……、なにか意味がある?)
アオが言いたい、ひとつの単語。
思考し、うまく確証は得られないが恐らくこれではないか、と思い、少年は拙いながらもその単語を声にした。
「──、──ス、─ィス、」
「…ヴ、ぉ、…んん、…ティ、ス?、ティス?」
「!」
アオは驚いたように目を丸くさせた後、嬉しそうに破顔した。どうやら正解だったようだ。
ティス、と呼ぶ度にニマァ、と牙をギラつかせ、腰にある太い尻尾がブンブンと揺れる姿はまるで犬のようでなんだか可愛く見えてきた。
「ティス、」
「─────!」
アオ、もといティスは全身で喜びを表現して数分、頬を赤くさせながらも今度は少年を指さして、ひとつの単語を繰り返した。
(うーん、これは…僕の名前を言ってるのかな)
「───ロ、クロ──ロ、」
耳を澄ませ、発音を聞き取る。「クロ」、彼はそう言っているらしい。先程と同じようにその単語を口にすると、また同じように喜んでいる。
(クロって……安直だなあ)
あちらが黒をクロと言う意味なのかは不明だが、日本でもペットでよくつけそうな名前に少年──クロは苦笑いを浮かべながらも、悪くはないと思っていた。
ティスは機嫌が良さそうに肩を揺らしながらも、リビングにある大きなテレビをつけ、共に内容が分からない番組を見ているとふと、腹がムズムズとした。
(…そういえば、ここに来てからトイレしてないかも…)
あの施設で付けられた機械はそのままだが、今の状況では絶対に1人になれる気がしない。
どうしよう、と下腹部を抑えながらも俯くと、隣にいたティスは瞬時に気付き彼を持ち上げた。
「わっ!なに!?どこいくの!?」
慌てふためく中、連れてこられたのはリビングの家具にあった、空間だ。そこは、透明なガラスの壁でできており、中には日本に居た頃によく見かけた───洋式トイレだ。しかも、男性用トイレにしかない小便器も少し形は違うがちゃんとある。
「───」
「え、あ、ちょっ……」
戸惑うクロを他所にティスはそのガラス空間に連れていき、便器の前に立たされると容赦なく、ズボンを引きずり降ろされた。ひぃ、と情けない悲鳴をあげるクロの股間にティスの一際大きい手が触れ、へにゃりと下を向く性器を掴まれ、カチン、と性器に付けられた機械を外される。
無防備で、平均よりも小さなソレがティスに凝視され、羞恥に顔を赤らめながら、クロは必死に懇願した。
「ま、まって!こんなところでっ、」
「───、──」
その願いも虚しく、しゅこしゅこと前後に指を動かされながらも下腹部に軽く押されたことで膀胱の尿意が限界に達した。
「やっ、だめ、っ、ぁ、ああっ……!」
ショロロロロロ……と、我慢出来ず、先っぽから液体が溢れていき、便器の中へと落ちていく。排尿している感覚にゾクッと背筋に快楽に似たものが走り、身体が震える。
(ひ、人前で……おしっこ……しちゃった……)
あの機械に吸い取られる時とはまた違った、羞恥心に涙が滲みながらも、全てを出し切ると解放感から深い息が漏れる。
「────」
「…ん」
優しい笑顔でティスはもう片方の手でクロの頭を撫でる。多分、上手くできてえらいな、みたいなことを言っているのだろう。彼等からすればペットがキチンと排泄できるかどうか確認するのは基本的な物事のひとつに過ぎないのかもしれない。
丁寧にペーパーで拭われて、ズボンもティスの手で履かされると、また抱きかかえながら元いた場所まで戻る。
それから、また、テレビを見ていれば、疲れが溜まっていたのか、眠気が襲ってきてクロは睡魔に抗えず瞼を閉じてしまった。
[ティス視点]
「寝顔も愛らしいなぁ、俺の愛しい子は」
ベッドまで自分の愛する子を運び、彼の顔を覗き込むとすぴすぴと可愛い鼻息を立てている姿が映り込み、角を生やした男──“ヴォルティス”は口角が上がる。
クロと出会ったのは、つい最近の事だ。仕事で疲れていた時にたまたま寄った愛玩動物ショップで、彼をみかけた時、胸を貫かれたような衝動を受けた。
元々地球人は愛らしい生物であることは周知であったが、中でも彼は特に素晴らしかった。
幼さが残る顔立ちに、柔らかそうな肌、そして、綺麗な黒を纏った髪と瞳。
欲しい、と強く思った。この子を連れて傍に置きたいと。
だが出会った当初はまだ、決心出来ずにただガラス越しで彼を観察し続けては、家に地球人用の玩具や服ばかりを買い込んでいた。
地球人は他の愛玩動物よりも知能があるとされており、それゆえか弱い存在でもあった。ストレスに弱く、自ら自害してしまうことが多いために、慎重にならざる得ない。
あと一歩、踏み出す勇気があればと彼を見続けて数日、目と目が合った。それだけでも歓喜極まるものだと言うのにあろう事か、彼はこちらへと近づき、ガラスに充てていた手と重ね合わせてにっこりと微笑んだのだ。
その瞬間、俺はもう我慢できなかった。
急いでこのショップのオーナーに話をつけ、彼が欲しくなったと伝えれば、オーナーは驚いたものの、金を見ればすぐに了承してくれた。
ガラス越しではなく、彼と直接触れ合ったとき、あまりのか弱さと愛おしさに死ぬまで守り通そうと誓った。
尻餅をついてしまった彼を抱きながらも契約を終えて、自分のモノである、と言う証を持つ首輪を付けた時、今まで感じたことのないほどの幸福に満たされた。
家に戻った時は警戒していた様子だったが、ショップに置いていた物と同じぬいぐるみや、地球人が食べられるよう柔らかい肉と小さなサイズのサンドイッチにした事で、少しは心を許してくれて安心した。
その上で、自分の名前や彼自身につけた名前すらも声に出してくれたのだから、嬉しくて仕方がなかった。
(オシッコをするときにみせた顔も最高だった……)
初めてのトイレで失敗してもすぐ分かるようにと、リビングに配置し、透明な壁も作ることで排泄する様子も観察できるようにしておいたのだ。
人前でするのが恥ずかしいのか、顔を赤らめ、泣きそうになりながらも必死に排泄する姿は、今思い出しても良いものだ。
「俺の可愛い可愛い、“クロウネロ”………、明日は何しようか…」
疲れて眠ってしまった彼の髪を撫でながらもこれから待ち受ける出来事に思いを馳せる。
この為に、1ヶ月は休みを取ったのだ。一緒にゴロゴロと家で過ごすか、それとも外に出かけてショッピングを楽しもうか。
ウキウキとしながらも、クロウネロへ牙が当たらないように、むちゅむちゅと柔らかな白頬に口で吸い、舌でぺろぺろと舐める。
「早く明日になんねぇかなぁ」
*