B級映画

B級映画


「あれ?写り混んじゃってるな」

俺が初監督となる自主制作ホラー映画の編集をしていた時だった。重要なシーンで白い着物を着た女の子が写ってしまっていたのだ。

とはいえ仕方ないことだ。撮影場所を借りられる資金など存在せず、泣く泣く公園で撮ったものだったからだ。

勿論取り直す事など不可能。役者を雇い直すのにいったいどれだけ金がかかる事やら。


「でもこれはこれで悪くない……むしろ雰囲気が出て良いかもしれない」

そう、ただの公園に着物を着た女の子が佇んでいるという光景はどこか異質で、むしろホラー映画としては正解なのかもしれない。

思わぬ演出に、構成を変えてみようか、BGMはどうしようか、等と編集作業を再開するのだが、


「またか…」

その後も度々映像の中に女の子は現れた。

主人公達が祠を壊すシーンでも、封じられた怪物に襲われるシーンでもお構い無しだ。

異質なそれはやはり何故か雰囲気に合う。そこを削ってしまうのは勿体ないだろう、とその時は思っていた。


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「こんな子いましたっけ……?」

出来上がった作品をDVDに落として、スタッフと共に試聴しているとカメラマンがそう呟いた。

その言葉を皮切りに、私も見ていない、監督が後付けで入れたんじゃないか、こんな子がいたら直ぐに気付く、と次々に疑問の声が飛び出してきた。


サッ…と血の気が引いていくのを感じた。騒がしくなっていくスタッフ達を落ち着けて一人一人話を聞いていくが、やはり誰も見ていないのだと言う。

もしかして本物が写ってしまったんじゃないだろうか……?


急いで近くのお寺の住職に連絡して幽霊の入ったDVDをDVDプレイヤーごとお寺に持ち込む。

突然の来訪にも関わらず住職は笑顔で対応してくれた。俺とDVD、スタッフ達をお祓いしてくれたのだ。


これで一安心といった所で住職が折角なので映画を見てみたいとの事で、スタッフ達を先に帰らせて映画を見る事になったのだが……


「いない…嘘だろ……」

写っていた筈の幽霊が消えていたのだ、全編通して綺麗さっぱり消えていた。

住職は「心霊現象ですから、そんな事もあるでしょう」と笑っていたが、あの幽霊は本物だったという恐怖心としっかり祓われたんだなという安心感で何も言えなかった。


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その後直ぐに映画は販売され、少ないながらもなんとか元がとれるくらいには売れた。

しかもファンレターを送ってくれる人まで現れたのだ!

ウキウキ気分で手紙を読む

『初監督ながらも技巧派な作風で一気にファンになりました!特にあの女の子が───────

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