AVネタからは確かに離れている。

 AVネタからは確かに離れている。


 夢を見た。

 目の前の彼は、何だか泣き出しそうな顔で私を見つめる。

「自分は、ずっと、あなたのことが」

 どうして、私がもうじき別の人の元に嫁ぐことが決まった今になって言うんですか。もっと早くに言ってくれたのならば。だって。

「私も、貴方が……」

 その言葉は彼の唇の中に飲み込まれる。そして彼の香りに包まれ、彼の手が私の身体をまさぐって。

 やがて彼が私の中に侵入してきて。生まれて初めて受け入れた彼自身は、痛みと幸福感を私に与える。

 しばらく私が落ち着くのを待っていた彼が、やがて動き始める。私の身体が痛みだけでない快感を感じ始めたところで、徐々に彼の動きが早まる。終わりが近いのだと感じてわたしは彼の身体に自分の足を絡ませ、離れようとした彼を引き寄せる。せめて夢でくらい、最後まで彼を受け入れさせて欲しかった。

「それは、駄目で……あ、っ」

 一瞬彼が抵抗するのを感じたが、すぐに温かな感触が胎内に広がる。彼が身体を震わせるのを感じて、私は笑みを浮かべた。

 夢の中でくらい、この幸せを噛み締めさせて欲しい。別に夫となる人がひどい男だという訳ではなかったけれど、彼に対して抱いていたような熱を抱けるかどうかは自信がなかった。

 私はずっと、貴方が好きだったんです。その言葉は、彼の耳には届いていたのだろうか。


 

 目が覚めた瞬間に私は頭を抱える。どうして、今になってこんな夢を見せるのか。今まで意識はしていなかったけれど、自覚してしまえばあれが自分の本心だったのだと言わざるを得ない。

 しかも、あんな、初めてを彼に捧げる夢なんて。そう思って身体を起こしたところで、いまだ彼を受け入れた瞬間のような違和感が抜けないことに気付く。

 見回した自分の部屋は、いつもと変わらないはずだ。当然、彼が隣で眠っている訳ではない。なのに妙な胸騒ぎが消えない。あのリアルな感覚が頭から離れない。


 本当に、あれは夢?


 


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